【大学と就職】大学別・学部系統別 2014年度 実就職率ランキング

 大学通信が各大学の発表をもとに、2014年春の企業別就職者数を発表している。全国717大学(医科・歯科の単科大等を除く)を対象とした就職状況の調査で、企業別に各大学の就職者数と占有率を算出し上位大学をランキングしている。

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三菱東京UFJ銀行への大学別就職者数
  • 三菱東京UFJ銀行への大学別就職者数
  • 三井住友銀行への大学別就職者数
  • みずほFGへの大学別就職者数
  • 業種別求人倍率の推移
 大学通信が各大学の発表をもとに、2014年春の企業別就職者数を発表している。全国717大学(医科・歯科の単科大等を除く)を対象とした就職状況の調査で、企業別に各大学の就職者数と占有率を算出し上位大学をランキングしている。今回はこのデータをもとに、各大学ごとの就職状況について振り返ってみる。

 なお、ここでいう「実就職率」とは、以下の式で表される。(実就職率(%) = 就職者数 ÷〔卒業(修了)者数 ― 大学院進学者数〕× 100)

◆卒業生1,000人以上の大学の実就職率、トップ10は理工系大学が独占

 卒業生1,000人以上の大学で上位に入ったのは、福井大、東京福祉大、九州工業大、金沢工業大、東京工業大など。トップ10のうち6校が工業大だった。

 上位10校に共通する点としては、理工系大学が多いということだ。6校の工業大学以外にも、トップの福井大、6位の名古屋大、8位の岐阜大も、理工系の定員が多い。平成27年度の募集定員では、福井大は工学部が全体の61.7%を占めており、名古屋大も38.4%、岐阜大も43.7%におよぶ。もともと工学部の募集は大学を問わずに多いが、工業大学・理工系に力を入れている大学が実就職率で際立った強さを見せたことは興味深い。

 その背景には、昨今の景況にあるだろう。ここ最近は、製造業や建築業の人材需要が高まっており、理工系学生を求める声が強い。

 リクルートワークス研究所が行った「第31回 ワークス大卒求人倍率調査(2015年卒)」によると、2015年卒の就職活動において、建設業の求人倍率は5.61倍、製造業も1.59倍と高い値を記録している。対して、サービス・情報業は0.54倍、金融業にいたっては0.22倍と極めて低い。

 例年高い求人倍率を記録する建設業、製造業だが、2015年卒はそれと比較しても高い値となった。建設業は前年度から約1.0倍プラスとなっている。

 もちろん、そうした景況の影響だけで就職率が高くなっているわけではない。たとえば、福井大は就活を終えた4年生が3年生を支援できるような仕組みを構築し、学生間の就活支援をうまく回している。また、学内での企業説明会の回数も年間で150回を超えるなど、学生の支援に積極的だ。こうした地道な試みが実を結んだ結果であろう。

◆トップ10以下も理工系が席巻、では有名大学の実就職率は?

 では、トップ10以下は上位はどうだろうか。ざっと見てみると、やはり理工系の大学の名前が目立つ。各地の工業大や電気通信大、東京理科大、東京電機大、東京農工大などだ。その合間に国立大や福祉系の大学が入りこんでいる様相である。

 それでは、いわゆる東大や京大といった有名国公立、早稲田や慶應、明治や立教といった有名私大の状況はどうなのだろうか。

 いわゆるMARCHと呼ばれる関東圏の有名私大5校と早稲田、慶應、上智の3校、計8校のうち、最上位は青山学院の61位(実就職率85.5%)、次いで上智の71位(84.7%)、立教の79位(83.7%)、慶應の91位(82.2%)、明治の99位(81.8%)となっている。それ以外の大学はトップ100圏外のため、データが確認できない。有名大学だからといって、必ずしも就職が安泰とはいかない現実が、このデータからも分かる。

 私大は学生数も多いため、キャリアセンターの支援が全学生に行き届かないなどの課題もある。ほかのキャンパスに行かなければキャリアセンターがないという大学も多く、全体的に実就職率が低くなったと思われる。

◆有名企業に強い大学は「就職者数」と「占有率」で見極める

 就活生のあいだでは、あの大学はどこどこの就職に強いといった噂話も多く飛び交う。学歴一つで有名企業に就職できるということはないが、学歴が採用に影響する例がないとは、残念ながら必ずしも言い切れない。

 本書では、実就職率とは別に、有名企業に強い大学はどこかも合わせて調査されている。たとえば、メガバンクを見てみよう。三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほFG)の3行の大学別就職者数トップ5は以下の通りだ。

三菱東京UFJ銀行
1. 慶應:117名
2. 早稲田:111名
3. 関西学院:80名
4. 立教:73名
5. 明治:64名

三井住友銀行
1. 早稲田:90名
2. 慶應:74名
3. 関西学院:70名
4. 同志社:52名
5. 関西大:51名

みずほFG
1. 慶應:143名
2. 早稲田:102名
3. 明治:69名
4. 中央:44名
5. 立教:43名

 ご覧の通り、実就職率では100位にもランクインしなかった早稲田が、ここでは圧倒的な強さを見せている。もちろん学生数も多いので、志望学生全体のうち内定した学生数で見ると、その割合は低いかもしれない。だが、入社人数が多いのは紛れもない事実だ。

 メガバンクは毎年、早稲田と慶應が強い。大学通信の情報調査・編集部ゼネラルマネージャーの安田賢治氏は「社内には早稲田・慶応のOB・OGが溢れている。採用担当者や面接官も、必然的に早稲田や慶應の出身者が多くを占めるだろう。そうなると人間心理として、自分の後輩たちに対する思い入れが強くなるのも(是非は別として)必然だろう。」と話している。

 またもう一つ興味深いのは、「大学全体の就職者数」に占める「企業別就職者数」の割合である。本書ではこれを「占有率」としているが、この値で見るとほかにもメガバンクに強い大学が見えてくる。たとえば、三菱東京UFJ銀行を例としてみよう。

 就職者数では慶應がトップだが、この占有率で見ると、上位10校は次のようになる(括弧内は就職者数)

1. 白百合女子:6.15%(23名)
2. 学習院女子:6.03%(21名)
3. 聖心女子:4.73%(20名)
4. 神戸女学院:4.20%(19名)
5. 清泉女子:4.17%(15名)
6. 東京女子大:3.77%(31名)
7. 学習院大:3.27%(46名)
8. フェリス女学院:3.20%(14名)
9. 一橋大:2.88%(23名)
10. 日本女子大:2.84%(35名)

 ご覧のように女子大が独占している。ここに並んだ大学は、先の実就職率ランキングでは多くがトップ100圏外だ。だが、このように特定企業に対して強みを持っている大学もある。就職という点から大学選びを考えた場合、この占有率をチェックしてみるのも重要だろう。

 最後に一つ付け加えさせていただく。

 ここまで「有名企業に強い大学」といった点から話を進めてきた。だが勘違いしないでいただきたいのは、これはあくまでも一つの指標に過ぎないということだ。「有名な企業だから」という理由だけでメガバンクやメーカーに就職するといった就職活動は、その就活生を不幸にしかねない。必ず就活生自身の意向が第一であることを忘れないでいただきたい。

<大学と就職連載>
 就職活動を行う学生を取り巻く状況は、当然のことながら、常に変化している。就活生のお子様を持つ保護者世代が学生だった頃と比べると、その変化は大きい。連載では、就活生と日々接しているキャリアスタッフが、大学や就職にまつわるデータを参考にしつつ、今の学生の就職事情について紹介していく。

<著者紹介>高嶌悠人(キャリアコンサルタント)
 慶應義塾大学法学部政治学科卒。株式会社電通を経て、教育系ベンチャー企業の株式会社ガクーに入社。そこでは新卒学生を対象とした就職活動支援スクールの運営に携わってきた。現在は独立し、高校や大学、塾、予備校などでキャリアをテーマとしたセミナーなどを開催したり、メディアにてキャリアに関するコラムなどを書いたりしながら情報発信している。著書に、「人気NO.1「内定塾」が教える エントリーシート 履歴書の書き方(高橋書店)」や、「これだけ覚える!一般常識&最新時事(高橋書店)」、「人気NO.1「内定塾」が教える!今までなかったエントリーシート 履歴書の文章講座」などがある。
《高嶌悠人》

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