【AO入試の基礎10】なぜAO入試で自己分析が必要なのか

 AO入試や推薦入試を受ける予定の子どもの保護者の質問に、教員経験をもち、総合キャリア支援団体「MyCareerCenter」を運営する岡村洋平氏が答える連載「AO入試の基礎」。第10弾では、自己分析について話を聞いた。

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 AO入試や推薦入試を受ける予定の子どもの保護者の質問に、教員経験をもち、総合キャリア支援団体「MyCareerCenter」を運営する岡村洋平氏が答える連載「AO入試の基礎」。第10弾では、自己分析について話を聞いた。

◆自己分析は、AO入試対策の「最初に」「必ず」やること

 今回からは、AO入試の具体的な対策について取り上げていきたいと思います。はじめは、志願書類や面接など、すべての試験対策の前提になってくる「自己分析」から。

 AO入試で重要なのが大学で学ぶ明確な目的意識であることはすでに何度も述べています。ただ、「なぜ大学で学ぶのか」や「学んだことを将来どのように生かすのか」を考えようとしても、ほとんどの高校生はすぐには答えられないことでしょう。というよりも、実際の入試では、受験を決めた時点ですぐに頭に浮かんできたような内容ではなく、入試まである程度の時間をかけて深く考え、自信を持って答えるような内容でなければ合格することは難しいでしょう。そこで必要なのが「自己分析」を行うことなのです。AO入試の受験を決めたら、何よりもまず、これを行うことから始めるのがよいでしょう。

 「自己分析」とは、大学生が行う就職活動では一般的になっていますし、もしかすると、高校生でもキャリア教育の授業などで同じようなことを行っているかもしれません。自分が学びたいことや将来のイメージについて、自分はなぜそのように思うのか、突き詰めて考えることがこれに当たります。

 「志望校も学部も決めている場合、そんなことよりも早く入試対策の方が合格への近道なのではないか」と思われるかもしれませんが、そうではありません。提出する志願書類にせよ、面接にせよ、重要なのは、書くことや話すことに対して自分自身が心から納得してできていること。この納得感がないと、どうしても表面的な回答に終始してしまい、自信を持って入試に臨むことができません。それに、考えを書いたり話したりする前提として、考えがきちんとまとまっていないと、そのたびに「これではちょっと違うかも」「そもそもなぜだったのだろうか」とつまづいてしまい、そのたびになんとかして「それらしい理由」を考えることになるのですが、結局はしっくりこなかったり、矛盾が生じてしまってまた一から考え直すことになったりします。

 そのために、急がば回れではないですが、AO入試の受験では、自己分析を最初に時間をかけて行って、「考えをきちんとまとめる」ことを最初からやっておくことが必要なのです。あとはそれに合った条件の大学を探したり、「どのように書くか」「どのように話すか」だけを考えればよいことになります。とはいえ、受験が迫っていればいるほど、自己分析をじっくりやるには心の余裕がなくなったりもします。その意味でも、このプロセスはなるべく早く、前回取り上げたように、できれば高2のうちに取り組んでおきたいところです。

◆志望校ありき、志望学部ありきで考えず、「そもそも」から考える

 自己分析を行うときに重要なことは、志望校ありき、志望学部ありきで考えないこと。自己分析を行う目的を、特定の志望校ありきで考えてしまうと、どうしても、「合格するためにどうするか、どのように書く(話す)べきか」ということにとらわれてしまい、本来必要な「本当はどのように考えているのか」ということが見失われてしまうからです。そのため、志望校も志望する学部も、一旦は脇に置いて、「そもそも」のところから始める必要があります。その意味で、AO入試を受けるのであれば、それをいい機会と捉え「入れる・入れそうな大学」ではなく、「入りたい大学」がどこなのかを考えましょう。

 ちなみに自己分析のやり方については、大学生向けだと、書店には数多くの本が並んでいます。とりわけ詳しく書かれているものとして『絶対内定~自己分析とキャリアデザインと描き方』(杉村太郎、熊谷智寛著・ダイヤモンド社)という本があります。この本はあくまで大学生向けに書かれたものなので、高校生が読むには少ししっくりこない部分があるかもしれません。ただ、保護者であれば、今後のお子さまへのアドバイスのために、読んでおくとよいかもしれません。

 この本の中でも、自己分析は就職活動で最も大切で、一番最初にやるべきことに位置付けられています。そのメリットとして挙げられているのは、「『今』やるべきことが分かる」「『落ちる理由』『通る理由』が分かる」「選考開始までの『スケジュールの立て方』が分かる」「エントリーシートに何を書けばいいか混乱しない」「面接官の『本当に聞きたいこと』に、答えることができる」「必要以上に落ち込まずに就職活動ができる」「自分を知り、世界を知り、心から納得のいく就職先を知る」こと。これらのことは、AO入試でもほぼ同じだと思います。ですので、AO入試をきっかけに自己分析に取り組めば取り組むほど、多くの人が大学生になって就職活動を迎えるタイミングで行うことを、高校生のときに行っていることになり、それを行っていない人と比べると大学生活の過ごし方が変わってきます。

 次回からは自己分析の具体的なやり方について説明していきます。

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 連載「AO入試の基礎」は、AO入試や推薦入試を、学生やその保護者が受験をする際の「前向きな選択肢のひとつ」にするべく掲載されるシリーズ。次回もAO入試お役立ち情報を掲載する。

《岡村洋平》

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