ゲーム感覚で読書量や成績向上、スポーツ上達などに効果…速読甲子園

 1日、早稲田大学 大隈記念堂大講堂にて、「速読甲子園2015」の表彰式が行われた。速読甲子園では、全国およそ1800の教室で行われている脳力トレーニング「みんなの速読」を受講する2万人が、日ごろの成果を競い合う。主催するのは日本速脳速読協議会(SRJ)。

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受賞者全員での記念撮影
  • 受賞者全員での記念撮影
  • SRJ 代表 堀川直人氏
  • 表彰のもよう
  • 表彰のもよう
  • インタビューに答える入賞者
  • 表彰式の合間に速読問題にチャレンジ
  • 脳力トレーニングではこのような図形の問題もだされる
  • 社会人では、仕事や車の運転で効果があったとのコメントも
 早稲田大学の大隈記念講堂 大講堂にて11月1日、「速読甲子園2015」の表彰式が行われた。速読甲子園では、全国およそ1,800の教室で行われている脳力トレーニング「みんなの速読」を受講する約2万4,000人が、日ごろの成果を競い合った。主催するのは日本速脳速読協会(SRJ)。

◆センテンスを視覚的に読む「視読」

 SRJが推進する「速読」は、本をパラパラめくったりキーワードだけを飛ばし読みする方法ではなく、センテンスを視覚的に読む「視読」をベースとしている。トレーニングも画面に流れる文字を読んでいく訓練を積み、読書スピードを上げていくものだ。そのため、読書をする楽しみ、文章を味わうという要素を損なわず、理解度も変わらないまま、読書量を増やせるのが特長だ。また、「速脳」という言葉が示すように、文章の速読だけでなく、記号や図形、色などのフラッシュカードを瞬時に把握するゲームのような「脳力トレーニング」も行われている。

 競技は個人戦と団体戦に分かれ、個人戦は長文・短文による速解力、全体把握力を競う。団体戦は教室ごとのエントリーとなり、ブロックの数を瞬時に数えたり、フラッシュ暗算などの脳力トレーニング問題を解いたりする。個人戦は小学1年生から高校3年生までの各学年ごとのカテゴリーに加え、社会人、インストラクター部門に分かれている。表彰対象は、個人戦の各部門の上位3名、団体戦総合の上位8位までの教室となっている。

 表彰式は、SRJ代表 堀川直人氏のあいさつから始まった。堀川代表は、表彰対象となる各部門上位入賞者に対し、全国およそ24,000人以上の受講生の中から選ばれたということはとてもすばらしいことだと前置きし、「今回表彰されるということに自信をもってほしい。その自信を元に、もっといろいろなことに挑戦してください。そして、みなさんの頑張りを支えてくれたご両親や先生方への感謝の気持ちも忘れないでください。」と入賞者の栄誉を讃えた。

 代表あいさつの後は、部門ごとの表彰となる。個人戦では学年ごとに上位3名が呼ばれ、壇上で堀川代表から賞状と記念品を受け取る。続いて社会人、インストラクターの表彰が同様に進む。最後に団体戦の入賞チームが壇上に上がる。壇上では、数名の受賞者に簡単なインタビューが行われたが、中には3年連続で1位(金賞)受賞という女子高生もいた。2連覇のあといったんは速読をやめたが、再開しての3連覇だという。ほかに、「国語の試験では、長文問題を早く終わらせることができ見直しの時間をとることができるようになった」といった声や、社会人の中には「車の運転が上達した」という声も聴かれた。

◆1~2年のトレーニングで全国レベルの能力を発揮

 表彰式終了後、速読をはじめたきっかけや効果などについて、小学校3年生の裕太さん(仮名)とお父さん、中学生2年生の隼人さん(仮名)とお母さんに話を聞くことができた。

 裕太さんは小2から、隼人さんは中1から、いずれも塾の先生の勧めでトレーニングを開始したという。塾では教科の学習と併せて、速読を受講している。必ずしも長期にわたってトレーニングをしていなくても、全国レベルの能力を発揮できるお子さんもいるようだ。

◆1日3~4冊の読書量…高学年向け本も

 速読を学ぶことで、どういった効果があるのだろうか。

 裕太さんのお父さんは「本をたくさん読むようになりました。学校でも図書室にこもって本を読んでいるそうです。」と語る。裕太さん本人によると速読を習ってから「5年生や6年生の本が読めるようになったことが嬉しい。」のだそうだ。また「1日3~4冊の本を読んでいる」とのことで、塾の先生は「きちんと理解して読んでいるので、本当にいろいろなことを知っている博識なお子さん」だと感心する。

◆動体視力が向上…サッカーの上達も

 サッカー部に所属する隼人さんのお母さんは「勉強、サッカーともに効果は出ていると思っています。来年は受験ですが、速読は続けるつもりです。」と言う。隼人さん本人は「国語テストの長文問題が早く終わり、見直しの時間がしっかりとれるようになりました。サッカーでもボールを蹴るときに、周りがよく見えるようになりました。」と話してくれた。

 保護者は、速読を通じてどんな成長に期待しているのか、今後にどう生かしてほしいと思っているのか。裕太さんについては「いろいろな本を読んでいるようですが、広い視野をもった人格形成につなげていってくれたらいいですね」。また隼人さんについては「勉強やサッカーに限らず、さまざまな分野で速読や脳力トレーニングの効果を生かしてくれたらよいと思っています」と、どちらも特定のスキルや能力の向上というより、総合的な力、広がりのある能力に期待しているようだ。

 ところで、トレーニングや勉強方法の秘訣はあるのだろうか。「速読は1回でじっくり読まないで、まず全体を見るようにするとよいです。」というのは裕太さん。文章を1文字ずつ読むのではなく、全体として見るようにするとよいとのことだが、速読トレーニングをしていない人にはピンとこないかもしれない。トレーニングで「視読」を習得すれば、これが可能になるのだろう。

 隼人さんは「トレーニングに集中することだと思います。また、自分の場合、仲の良い友達と一緒にやっているのですが、お互い競い合ったり一緒にトレーニングできるので楽しく続けられています。」と、集中力の大切さとトレーニング環境を説明してくれた。

 最後に、トレーニングで好きな問題・学校の科目と将来の夢について聞いた。裕太さんは、速読のトレーニングでは長文の問題が好きで、科目では理科が得意だという。将来の夢は農業をやりたいとのことだ。隼人さんは、記号の配置を覚える脳力トレーニングが得意で、好きな科目は社会。サッカー選手が将来の夢だという。

 表彰式でのコメントや、今回のインタビューからわかるように、速読で行っている能力開発は、何も特殊な技能や能力を鍛えるべく、厳しいトレーニングを続けているわけではない。多くの児童・生徒がゲーム感覚で楽しみながら取り組んでいるようだ。車の運転やサッカーなどスポーツへの効果もあることから、読書スピード、読解力以外に受験、スポーツ、生活にも応用できる脳の総合力をバランスよく鍛えることができそうだ。
《中尾真二》

中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。エレクトロニクス、コンピュータの専門知識を活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアで取材・執筆活動を展開。ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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