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ベネッセが調査する幼児の20年、園に知的教育望む声…友だちとの遊びが減少

教育・受験 保護者

白梅学園大学教授 無藤隆氏
  • 白梅学園大学教授 無藤隆氏
  • 20年間の流れと社会の出来事
  • ベネッセ教育総合研究所 所長 谷山和成氏
  • ベネッセ教育総合研究所 次世代育成研究室 室長 高岡純子氏
  • ベネッセ教育総合研究所 次世代育成研究室 主任研究員 真田美恵子氏
  • 平日、幼稚園・保育園以外で一緒に遊ぶ人(経年比較)
  • 平日、幼稚園・保育園以外で一緒に遊ぶ人「友だち」(経年比較 年齢区分別 就園状況別)
  • 平日、幼稚園・保育園以外で一緒に遊ぶ人「母親」(経年比較 年齢区分別 就園状況別)
 ベネッセ教育総合研究所は11月25日、乳幼児をもつ保護者を対象に調査した「第5回 幼児の生活アンケート」の結果を発表した。1995年から2015年までの20年間では、幼稚園・保育園以外で友だちと遊ぶ未就学児が半減しており、友だちよりも母親と過ごす時間が増えていることがわかった。また、幼稚園や保育園に知的教育を求める保護者も増加している。

 「幼児の生活アンケート」は、乳幼児の生活のようすや保護者の子育てに関する意識と実態を調査するため、ベネッセ教育総合研究所が1995年から5年おきに実施している調査。第5回の調査時期は2015年2~3月で、0歳6か月から6歳の未就学児童をもつ保護者4,034名の回答を得た。調査項目は、子どもの基本的な生活時間や習い事、遊び、母親の教育観・子育て観、子育てで力を入れていることなど。ベネッセ教育総合研究所次世代育成研究室の高岡純子室長によると、「20年間の幼児の親子の変化を捉える調査はほかに類を見ず貴重な資料」。

◆園以外で友だちと遊ぶ幼児が半減、母親と一緒の時間が増加

 調査の結果、20年間でもっとも変化が大きかったのは幼児の成育環境についてだった。平日に幼稚園や保育園以外で遊ぶことの多い相手を聞くと、「友だち」と回答した者は56.1%から27.3%に減少。一方、「母親」と遊ぶことが多いと回答した者は55.1%から86.0%に増加した。

 ベネッセ総合研究所次世代研究室の真田美恵子主任研究員は、この結果は、20年間で保育園児が増加したことで平日の降園後に遊べる幼児が減ったことが一因にあると仮説立てている。保育園児は降園時間が遅く、平日の降園後に友だちと遊べる時間が少ない。また、少子化により地域で遊べる子どもが減少したことも指摘。公園の減少や遊ぶ場に関する回答は20年間で変化がないことから、地域の公園に出かけても同年代の友だちが少ない状況があると予想している。

 さらに、友だちと遊ぶ幼児の減少には母親の意識変化も係わっている可能性を示唆した。母親に「子育てで力を入れていること」を尋ねると、「友達と一緒に遊ぶこと」に「とても」力を入れている保護者の比率は2010年の25.4%から2015年は19.6%に減少。幼児が友だちと遊ぶことに対する意識の変化があると見ている。

◆高・短大から四大卒へ変化してきた母親…共働き家庭や養育環境が多様化

 真田氏によると、20年間では保護者の属性にも変化があった。子どもの就園状況の経年変化を見ると、1995年に10.5%だった保育園児は2015年調査時には29.4%に増加しており、フルタイムやパートを含む母親の就業状況も比例するように26.3%から40.9%へ大幅に増加している。

 真田氏はこの結果を「20年前は高校、または短大を卒業後、専業主婦となり、子どもは5・6歳になったら幼稚園へ通うのが主流だったが、現在は働く母親も増え、保育園に通う幼児が増加するなど、家庭が多様化している」と分析。母親の四年制大学卒業率も15.2%から33.7%へ増加しており、高学歴の母親が増えることで子どもの養育行動や進学に変化が現れてきたとしている。

◆友だち付き合いから「知的教育」を重要視、園への要望が変化

 調査結果のうち、友だちと遊ぶ幼児が減少したことのほか、幼児が幼稚園や保育園で過ごす時間が長くなり、園に求める要望が変化していることがあげられる。白梅学園大学の無藤隆教授によると、日本の幼稚園や保育園の教育は従来「社会性」や「思いやり」「協調性」を重視してきた傾向にあり、保護者が園に望む要望ともマッチしていた。

 しかし、今回の調査では「子育てで力を入れていること」で「友だちと一緒に遊ぶこと」を回答した者は2005年の25.6%から2015年は19.6%に減少しており、幼稚園や保育園への要望も「集団生活のルールを教えてほしい」「子どもに友だち付き合いが上手になるような働きかけをしてほしい」とする回答は幼稚園・保育園児の母親のいずれとも減少傾向にある。一方、「知的教育を増やしてほしい」とする要望は増加傾向にあり、幼児が幼稚園や保育園で過ごす時間が長くなるとともに園に対する要望や期待が増していることがわかった。

 また、子育てやしつけの情報源を聞くと、「園の先生」と答えた保護者は幼稚園児・保育園児の全体で5番目に多い41.3%を占めた。もっとも多かった回答は「母親の友人・知人」が72.0%、ついで「母方の祖父母」が43.1%だった。園児別に見ると、「園の先生」と答えたのは幼稚園児の保護者では2番目に多い43.4%、保育園児の保護者ではもっとも多い70.6%を占めた。園やその先生が求められている役割が大きいことがわかる。なお、人以外の情報元を聞くと、20代の母親はインターネットやブログによる情報収集を行っている割合がもっとも高く、WebサイトやSNSでしつけや教育に関する情報を得ていることがわかった。

◆親や友だち以外とも多様に係わる機会を増やすことが大切

 無藤教授によると、幼稚園や保育園が行う未就学児への知的教育は中国や韓国を始めとするアジアではよく見られたことで、就学前は人付き合いを育むような社会との係わり方の育成に力を入れてきたのは日本ならではのこと。ベネッセ教育総合研究所や無藤教授らは、幼児らが友だちと遊ぶ機会が減っていることや共働き家庭が増えていることが子どもの将来にどのような変化をおよぼすのかは今後の調査結果によるとしながらも、幼児が多様な人と係わりながら豊かな社会性を身につけたり、他者と協働しながら価値を創造する力を育てるにはどうしたらよいか考えていくことが「大人の課題」とした。

 無藤教授は、保護者らにアドバイスをするならば、「子どもの人間関係に広がりを持たせるため、園や学校では体験できない地域の多様な人々と触れ合う、いわば大人の生活を垣間見る機会創出を意識することが必要かもしれない」と述べている。

 ベネッセ教育総合研究所は、1980年以降累計400本以上の調査を発表しており、調査レポートはすべて無料でWebサイト上に公開している。ベネッセ総合研究所の谷山和成所長は、「研究者や企業、保護者やメディアの方に調査結果を活用していただきたい」と情報利用を呼びかけた。「第5回 幼児の生活アンケート」も今後、ベネッセ教育総合研究所Webサイトに公開される予定。
《佐藤亜希》

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