子どもの貧困対策、放置した場合の経済的損失は2.9兆円…日本財団

 日本財団は12月3日、子どもの貧困の放置による経済的影響の推計を発表。経済的損失は約2.9兆円、財政的負担も約1.1兆円増となる可能性があるという。経済へも大きな影響をおよぼすことが明らかとなり、子どもの貧困対策を経済的対策として捉えることが重要だとした。

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 日本財団は12月3日、子どもの貧困の放置による経済的影響の推計を発表。経済的損失は約2.9兆円、財政的負担も約1.1兆円増となる可能性があるという。経済へも大きな影響をおよぼすことが明らかとなり、子どもの貧困対策を経済的対策として捉えることが重要だとした。

 日本財団によると、日本の子どもの貧困率は上昇傾向にあり、2012年にはおよそ6人に1人の子どもが貧困状態にあるという。貧困が次世代の貧困を生む「貧困の連鎖」の問題もあり、子どもの貧困対策は急務とされている。日本財団と三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは、深刻化する子どもの貧困を経済的視点から捉え、有効施策を立案するための基礎データ提供を目的として、2015年7月から11月まで研究を実施。

 研究では、子ども時代の経済格差が教育格差を生み、将来の所得格差につながるという推定のもと、現状を放置した場合の「現状シナリオ」と、教育格差を改善する対策を行った場合の「改善シナリオ」を比較した。改善シナリオでは、おもに未就学児への教育支援を内容とする対策を行うことで、進学率・中退率が変化し、連動して各年齢時点の就業構造が変化することを想定した。

 推計の結果、現在15歳の貧困世帯(生活保護世帯、児童養護施設、ひとり親家庭)の子ども約18万人が、64歳までに得る所得の合計は、現状シナリオでは約22.6兆円、改善シナリオで約25.5兆円。所得の差は、税・社会保障費用の個人負担額の差にも関係している。社会保険料と税の合計負担から社会保障給付を差し引いた「純負担額」は、現状シナリオで約5.7兆円だったのに対し、改善シナリオでは約6.8兆円となった。

 現状シナリオの場合には、将来的に所得合計の差額分である約2.9兆円(1学年あたり)の市場の縮小(経済的損失)につながり、ひいては政府の財政負担が約1.1兆円増加となることを意味している。内需に大きく依存している日本の経済構造では、人口減少時代に突入した今、子どもの貧困を放置することは所得・消費の低下を招き、国内市場の縮小が一層加速すると想定される。日本財団では、子どもの貧困対策を、慈善事業ではなく経済対策として捉え、教育・所得格差の解消に有効な投資対効果の高い施策の模索が求められるとした。

 なお、推計レポートの全文は、2015年12月をめどに、日本財団公式Webサイトにて公開される。また、今後は都道府県別の影響額の試算も予定しているという。
《黄金崎綾乃》

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