THE×ベネッセ、世界大学ランキングと大学改革を解説…日本版発表予定日も公開

 ベネッセホールディングスは10月19日、イギリスの教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」のトップの来日に伴い、世界大学ランキングと大学改革に関する説明会を開催した。発表予定の日本版THE世界大学ランキング発表日程や詳細も明かした。

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TES Global社マネージング・ディレクターTrevor Barratt(トレバー・バラット)氏
  • TES Global社マネージング・ディレクターTrevor Barratt(トレバー・バラット)氏
  • 左からベネッセコーポレーション学校カンパニーグローバル事業部長の藤井雅徳氏、同社学校カンパニーカンパニー長の山崎昌樹氏、Times Higher Education誌編集長のPhil Baty(フィル・ベイティ)氏、TES Global社マネージング・ディレクターTrevor Barratt(トレバー・バラット)氏
  • TES Global社マネージング・ディレクターTrevor Barratt(トレバー・バラット)氏
  • Times Higher Education誌編集長のPhil Baty(フィル・ベイティ)氏
  • ベネッセコーポレーション学校カンパニーカンパニー長の山崎昌樹氏
  • ベネッセコーポレーション学校カンパニーグローバル事業部長の藤井雅徳氏
  • THE世界大学ランキングの評価方法
  • THE世界大学ランキングにおけるアジア内の大学ランキング。東大は4位だ
 ベネッセホールディングスは10月19日、イギリスの教育専門誌「Times Higher Education(タイムズ・ハイヤー・エデュケーション、THE)」のトップの来日に伴い、世界の高等教育機関の潮流から見る日本の大学の現状と課題をテーマに、世界大学ランキングと大学改革に関する説明会を開催した。

 TES Global社は、世界大学ランキングで著名な教育機関紙「Times Higher Education」を運営。ベネッセグループは、同社の国内総合パートナーとして、日本の大学のグローバル化支援を推進している。

 今回来日したのは、TES Global社マネージング・ディレクターTrevor Barratt(トレバー・バラット)氏とTimes Higher Education誌編集長のPhil Baty(フィル・ベイティ)氏。ベネッセコーポレーションからは、学校カンパニーカンパニー長の山崎昌樹氏と、同社学校カンパニーグローバル事業部長の藤井雅徳氏が同席し、世界の大学改革や今年度末に発表予定の「THE世界大学ランキング日本版(仮称)」について解説した。

◆「THE世界大学ランキング」とは…2016年の結果を振り返る

 TES Global社による「THE世界大学ランキング」は、13年の歴史を持つ。90か国以上の大学から、教育力、研究力、研究の影響力(論文の引用数)、国際性、産業界からの収入などの項目についてデータを収集し、総合力を評価したうえで、世界の大学のランキングを発表している。「THE世界大学ランキング」の評価は、世界200の国と地域で閲覧されており、グローバル化が進む世界で、各国の学生が国外の大学進学を検討するうえでの参考にされたり、企業が投資先大学を決定する際に活用されたりしている。

 また、大学自身が、自身の世界的な立ち位置をはかり、改革のガイドラインとすることで、高等教育機関としてより貢献できる存在となることが期待される。

 9月21日に発表された「The Times Higher Education World University Rankings2016-2017(THE世界大学ランキング2016)」では、イギリスのオックスフォード大学が前年1位のアメリカ・カリフォルニア工科大学を押さえて1位となり、「THE世界大学ランキング」史上初めてアメリカ以外の大学がトップに立った。オックスフォード大学の躍進は、産学連携の強化が研究からの収入につながったこと、学生に対する教師の数を増員したことなど、同大学の改革努力が反映された結果だといえる。

◆「THE世界大学ランキング2016」に見られる日本の大学の傾向

 対象となる世界約1万8,000大学のうち、「THE世界大学ランキング2016」にランクインしたのは980大学。公表数は前年の800大学から拡大されている。

 国別のランクイン数は、アメリカが148校でトップ、イギリスが91校で2位、日本が69校で3位。前年の発表でランクインした日本の大学は41校だった。ランクインした日本の大学数が増えた要因としては、ランキングとして公表される全体数が前年度800校から980校へ拡大されたことに加え、スーパーグローバル大学および地方の国公立大学からのエントリーが増えたことがあげられるという。

 日本の大学の中でトップの東京大学は、世界ランキングでは39位。アジアの大学における東京大学の位置づけは、シンガポール国立大学、北京大学、清華大学に次ぐ4位。日本の大学は長年アジア諸国の中での競争力を誇っていたが、今回トップ200にランクインされているアジアの大学数を国別(地域別)で見ると、香港が5校、中国が4校、韓国が4校、そして日本とシンガポールが各2校であり、アジアの中での日本の大学の存在感が弱まっていることは否定できない。

◆日本の大学の課題

 日本の大学の課題としては、「世界の視点に立った大学経営の戦略を持つこと」「世界への情報発信を行い、経営陣や研究者レベルを含むネットワーキングを構築すること」、そして「グローバル社会で評価されるために、大学全体(教職員・学生)の英語力を向上させること」などがあげられる。

 日本の大学は、技術力などの強みを有しているにもかかわらず、企業との連携が十分でないほか、言語の壁によって、研究内容が世界に認知されていないのが現状である。また、日本の大学の特質でもある保守性が改革の足かせとなっていることも否めないが、これは大学関係者も認識するところでもあり、改善の兆しが見られるという。

◆評価基準や公開日は? 「THE世界大学ランキング日本版(仮称)」について

 1月末に策定中であることが明かされた「THE世界大学ランキング日本版(仮称)」の詳細も気になるところだ。発表当時には、国内で一般的な「偏差値」や「就職率」の扱いや、日本に沿ったどのような指標になるかが注目された。

 「THE世界大学ランキング」が研究力にフォーカスしているのに対し、日本版は教育力にフォーカスした評価となる。既存の日本の大学ランキングは、入学時の学生の学力をベースに作成されているが、「THE世界大学ランキング日本版(仮称)」は、入学後4年間の教育によって、どのような人材が育っているのか、卒業生は収入につながる職業に従事できているのか、といったことを指標とする。各種データは、各大学から収集するとともに、ベネッセコーポレーションが保有しているものを活用。さらには、高校教育や企業人事部による評価なども取り入れるという。

 TES Global社は、Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)との提携により、9月に初めて「THE世界大学ランキング・アメリカ版」を発表した。この経験に基づき、2017年3月30日には「THE世界大学ランキング日本版(仮称)」を公表する予定。
《なまず美紀》

なまず美紀

兵庫県芦屋市出身。関西経済連合会・国際部に5年間勤務。その後、東京、ワシントンD.C.、北京、ニューヨークを転居しながら、インタビュア&ライターとして活動。経営者を中心に600名以上をインタビューし、企業サイトや各種メディアでメッセージを伝えてきた。キャッチコピーは「人は言葉に恋♡をする」。

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