今問う「英語教育」の在り方、なぜ・何に必要か…日本学術会議が提言

 日本学術会議は、初等中等教育における英語教育の必要性を問う提言をまとめ、公表した。実用重視に転換された現在の英語教育に疑問を投げかけ、英語が非母語である事実を踏まえた教育方針、日本語による授業との適正なバランスなどを提言している。

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 日本学術会議は、初等中等教育における英語教育の必要性を問う提言をまとめ、公表した。実用重視に転換された現在の英語教育に疑問を投げかけ、英語が非母語である事実を踏まえた教育方針、日本語による授業との適正なバランスなどを提言している。

 公表されたのは、「ことばに対する能動的態度を育てる取り組み―初等中等教育における英語教育の発展のために―」と題した提言。日本学術会議「言語・文学委員会」の作業部会「文化の邂逅と言語分科会」が審議結果を取りまとめた。

◆なぜ英語が必要か? 日常的な利用は1%

 提言では、初等中等教育における英語教育が、読解重視から実用重視へ転換が図られ、コミュニケーションの道具として英語を教えることが中心となってきている現状を示したうえで、「『なぜ英語が必要か』についてさえ、確実な根拠が社会で広く共有されているとは言えない」と明記。「一貫した展望を持つ余裕のないまま、やや性急に変更されようとしているのではないか」と、疑問を呈している。

 世界における英語の使用者は、母語話者よりも非母語話者の方が多く、幅広い多様性があることから、その多様性を英語教育に反映させる取組みの重要性も指摘。日本国内での英語の需要は限られており、日本人で日常的に英語を使っている人は1%ほどとの調査結果も紹介し、「児童・生徒が英語の実用性を実感できないのは自然であり、実用性は英語学習の動機とはなり難い」と述べている。

◆保護者の要望のみで進めるのは「危険」 これからの英語教育へ提言

 高校の外国語科(英語)の基本方針として導入された「英語による授業」についても、「目標言語である英語のインプットが日常の言語生活の中で非常に限られている」ことを理由としてあげ、「単に教室での英語使用の割合を増やすだけでは、実用的な英語能力の習得には至ることができない」と明言している。

 具体的には、「非母語としての英語という視点の共有」「英語で行うことを基本としない英語教育への変更」「文字の活用、書きことばの活用」という3点を提言。英語が非母語である事実を踏まえて現実的な教育方針を設定すること、日本語による授業との適正なバランス、言語教育に読み書きと会話をバランスよく位置づけることなどを求めている。

 このほか、ベネッセ教育総合研究所による調査結果をもとに英語教育に対する小学生保護者のニーズの高さも示しつつ、「保護者の要望があるからといって、すぐに実用志向の英語教育の割合を増やすことは危険である。教育方針の大きな転換は、公教育の中での英語教育の位置づけを十分検討したうえで、慎重に評価する必要がある」と述べている。
《奥山直美》

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