「大いに悩み、考えて」孫正義育英財団特別対談、眠る異能の持ち主を激励

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孫正義育英財団設立記念 対談イベント「~未来を創る若者たちへ~」2017年2月10日
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 孫正義育英財団は2月10日、東京日本橋のロイヤルパークホテルにて、財団発足を記念した特別対談イベントを開催。理事の孫正義氏、副理事の山中伸弥氏と五神(ごのかみ)真氏、評議員の羽生善治氏が登壇し、高い志と“異能”を持つ若い世代に向け、未踏分野への挑戦を激励した。

◆天才・異才のタマゴら1,300人が集結

 孫正義育英財団は、原則25歳以下の児童・生徒、学生などの若者を対象に、才能を発揮できる場の提供や留学支援、返済不要の奨学金付与を実施する一般財団法人。代表理事はソフトバンクグループ代表の孫正義氏。

 発足に際し、孫正義育英財団は2月10日、東京都日本橋のロイヤルパークホテルにて特別イベントを開催。代表の孫正義氏のほか、副代表理事を務める京都大学iPS細胞研究所所長・教授の山中伸弥氏、理事の東京大学総長・五神真氏、評議員の日本将棋連盟棋士・羽生善治氏ら、各界を代表する著名人が集い、対談を実施。会場には、小学生や社会人を含む約1,300人が詰めかけた。

◆登るなら他人(ひと)と違う山を、同じ山を登るなら違う道を

 「シンギュラリティーという言葉を知っていますか。」

 孫氏は開幕に際し、来場者にそう、問いかけた。急速に進化するIT技術は現在、VRやIoT、そして、人口知能(AI)に湧いている。うねる時代の中、集まった若者たちの情報感度は高く、孫氏による冒頭の問いかけには半数以上が挙手した。

 日本がまだコンピューター開発の揺籃期にあったころ、孫氏は高校を中退し、16歳で渡米。敬愛する坂本龍馬になぞらえ、退路を断つかのようにアメリカへ留学した決断はまるで「脱藩」だったと語る。がむしゃらに勉強していた19歳のころ、孫氏は科学雑誌に掲載されていたマイクロコンピューターのチップの写真を目にする。人差し指の先に乗るほどの、わずかな大きさしかないその発明を目にした孫氏は、「人類が初めて、自らの脳の動きを超えるかもしれないものを作った」と、感動に手足がしびれたという。この衝撃こそ、高い志で挑戦し続ける、“孫正義”その人へ続く道の始まりだった。

 孫氏がマイクロコンピューターのチップとの出会いで人生が変わったように、山中氏、五神氏、羽生氏にも人生における特異点があったという。

 京都大学iPS細胞研究所で所長を務める山中伸弥氏は、町工場で生まれ育った少年が、研究者の道を志すようになったきっかけについて語った。大学院生になって初めて行った実験でのこと、山中氏の実験結果は当初の予想と正反対のものになった。山中氏は、この結果に落胆することなく、「予想外のことが起こる」という研究の面白さに気づいた。山中氏によると、通常、実験の成功率は1割以下。「(失敗したときに)エンカレジメントしてくれて、成功したときには一緒に喜んでくれる」教授の存在も大きいと語り、参加した若者らに、失敗を恐れず、挑戦し続けるようアドバイスした。

 光量子物理学者として現在も研究を続ける傍ら、東京大学総長を務める五神真氏は、学生時代に進路を決めるきっかけとなったエピソードを披露。五神氏は修士1年時、トランジスターや、レーザー(光)に関する講義を受け、1980年代は研究分野として未開拓だったレーザーに興味を抱いたという。五神氏は、「これは面白そうだ」「光を当てることによって物が温まるのではなく、物が冷える現象を使って“スゴイ”ことがしたい」と思い立つ。着想した時点ではまだ夢だったようなことも、研究を続けていく中で現実になってゆく学びの楽しさを知る五神氏は、自らが物理学者としての“山”を登り始めた当時を振り返り、若者らに「本当に新しいことは役に立つ」「世界にはワクワクすることがたくさんある」と力強いメッセージを送った。

 棋士の羽生善治氏が他人(ひと)と異なる道を歩き始めたと確信したのは、中学生のころだという。羽生氏がプロ入りしたのは、1985年15歳。夜遅くまでかかる対局・感想戦の終了時には、すでに終電時刻も過ぎており、始発を待って帰宅することもあったそうだ。都内へ通勤する人並みと逆行する自分に気づき、羽生氏はふと「学生なんだけど、社会人」「完全に道を踏み外した(笑)」「普通の人と違う山を登り始めてしまったんだなあ」と思ったという。進路選択を前に悩む同級生を見て、羽生氏は「うらやましかった」と語る。

◆ひらめきの生み方、山中氏に学ぶ4つの方法

 対談中、羽生氏は3人にひらめきや新しい発想の生み方について尋ねた。iPS細胞の研究でノーベル賞を受賞した山中氏は、五神氏も語ったとおり「本当に新しいことなら社会に必ず役に立つ」とし、とにかく新しいもの、技術を探すことが社会をより良くし、異能を生かすヒントになるとする。ただし、成熟した社会において「真新しいもの」を探すことは困難を極めるため、山中氏は新しいものの生み方として、4つの方法を提示した。

 1つめの方法は、「ひらめき型」。ゼロからまったく新しいものを創り出す方法だが、年齢に伴う発想力の低下や時代の進歩により、もっとも難しい発想法である。

 2つめの方法は、「融合型」。まったく異なる性質を持つ複数のものを融合し、新しいものができないか考える方法。

 3つめの方法は、「必要型」。実現すれば社会にとって必ず価値があり、人々が待ち望んでいるが、現実にするにはあまりにも難しく、まだ世に存在していないものを創り出す方法。大変根気のいる方法だが、ひらめき型と比較すれば、成就可能性が高い。山中氏のiPS細胞研究も、この必要型を追求したからこその発見だったという。

 4つめの方法は、「神頼み型」。かつて山中氏が研究で予想外の結果を得たように、まずは手足を動かし、「やってみる」ことで何かを待つ、きわめて積極的な待ちの姿勢で臨む方法。想像もしなかった結果が生まれ、思いもよらぬ発見につながる可能性がある。多くの研究者の研究は、この作業の繰り返しで新発見にたどり着いているという。

 これからの世界を創る若者に向け、4人のトップリーダーは対談中「悩んで」「考える」必要性や、人と異なる「才能」を賞賛し、社会のために役立てるよう何度も呼びかけた。孫氏は「大いに悩んで、努力して、考えて」ほしいとし、これからの時代を生きぬく武器として、英語と「パソコン語」、そして一刻も早く海外へ飛び出し、さまざまな人や経験との出会いを持つよう鼓舞した。

◆異能発掘に着手、第1期生は100名予定

 都内私立大学に通う地方出身の男子大学生は、同じゼミの仲間に誘われ、3人で応募したという。「地元では“ガリ勉”扱いされていた(笑)。でも、今の大学で変われた。起業を考えているので、そのヒントのため、3人で参加した」そうだ。

 代表の孫氏は、財団の発足について「日本は、出過ぎた杭を打つ風潮がある。そういった、才能を秘めた若者を発掘したい、応援したい」とコメント。孫正義育英財団奨学生への応募資格は原則、25歳以下で在学中の児童・生徒・学生だが、第1期生は要項にこだわらず、積極的に“異能”の発掘を進めていきたいとしている。応募受付は2月28日まで。

 全国でくすぶる異才の持ち主は、一体どれほど眠っているのだろうか。孫正義育英財団が今、彼らを揺り起こそうとしている。
《佐藤亜希》

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