高等教育の無償化、単なる「赤字大学への支援」可能性を指摘…財務省

 財務省は10月31日、財政制度分科会資料を公開した。平成30年度(2018年度)予算要求から見た「高等教育の経済的負担軽減」や「幼児教育の無償化」などに関わる経済的な課題をあげている。

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文教および科学技術分野のおもな課題(平成30年度予算要求)
  • 文教および科学技術分野のおもな課題(平成30年度予算要求)
  • 検討の方向性:高等教育の経済的負担の軽減
  • 検討の方向性:幼児教育
  • 「在学者ひとりあたり」教育支出の対ひとりあたりGDP比(2014年)
  • 国民負担率と私費教育負担率(2014年)
 財務省は10月31日、財政制度分科会資料を公開した。平成30年度(2018年度)予算要求から見た「高等教育の経済的負担軽減」や「幼児教育の無償化」などに関わる経済的な課題をあげている。大学など、高等教育における負担軽減の対象は、全面的でなく低所得世帯の子どもに絞り込む案を明記している。

 第48回衆議院議員総選挙(衆院選)において、自民党は政権公約で子育て世代への支援や教育の無償化などを強調。しかし、財務相の諮問機関である財政制度等審議会は、10月31日に行われた分科会において、予算要求の観点から「文教・科学技術」が抱える課題を指摘している。

 たとえば、他OECD諸国と比べると、日本は教育に対する公的支出は対GDP比が低く、私費負担が大きいとされる公財政教育支出については、在学者ひとりあたりで見るとOECD諸国と比べ「遜色ない水準となっている」と明言。調査資料を用い、OECD諸国の教育支出平均は27%、そのうち公的教育支出が占める割合は23%であるところ、日本はそれぞれ37%、23%にあるとしている。よって、「公財政教育支出の対GDP比だけを見て、量的水準の拡大を目的化することは適切ではないのではないか」と疑問を呈している。

 高等教育の経済的負担の軽減については、「真に支援が必要な低所得世帯の子供に絞り込むべきではないか」と提言。そもそも、大学設置基準の前提では、学生に1日あたり約9時間の学修を前提としているが、実際の大学生は授業・授業関連の学習・卒論には約4.6時間しか費やしていないという調査結果から、財政制度等審議会は高等教育の質や在り方を検討課題にあげた。よって、高等教育の全面的な無償化は適切でなく、定員割れの大学や赤字経営の大学への「単なる経営支援」にならないような制度設計が必要であるとしている。

 幼児教育については、経済的負担軽減の観点から見ると、無償化を進める際には「保険料の引き上げを助長しない」ことが重要だと示した。

 財政制度分科会資料はすべてWebサイトで公開されている。「文教・科学技術」に関わる資料はPDF全86ページ。「文教・科学技術」のほか、「地方財政」「防衛」なども閲覧できる。
《佐藤亜希》

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