【共通テスト2024】難関大合格につながる学習目標設定のコツ…早稲田アカデミー加藤氏に聞く

 国公立大入試の第一関門となる大学入学共通テスト。近年の「難化」の声を受けて、戸惑う受験生も多いことだろう。そんな共通テストとの向き合い方について、多くの生徒を難関大合格に導いてきた早稲田アカデミー・大学受験部長の加藤寛士氏にアドバイスをもらった。

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「共通テストは難化している」は本当か?
  • 「共通テストは難化している」は本当か?
  • 志望校別・学年別学習計画(早稲田アカデミーより情報提供を受け、編集部にて作成)
  • 難関大志望者が目指すべき学習進度と学力目安(提供:早稲田アカデミー)
  • 早稲田アカデミー大学受験部長・加藤寛士氏
  • インタビューに応じてくれた早稲田アカデミー大学受験部長・加藤寛士氏

 センター試験が「大学入学共通テスト(以下、共通テスト)」に変わり、早や2年半。2023年1月には3回目の共通テストが終了し、その特徴がはっきりしてきたものの、「センター試験に比べて難化した」「得点しにくい問題形式」などの声も聞かれ、対策が難しくなっている。

 東京大学やその他国公立大学をはじめ、難関大への最初の関門ともいえる共通テストに、どのように向き合っていくべきなのか。東大への高い現役合格率を誇る早稲田アカデミーの「東大必勝コース」にて10年以上の指導歴をもつ大学受験部長・加藤寛士氏に、共通テストへの向き合い方や、夏休みの効率的な学習法について話を聞いた。

「難化」の理由は、独特な出題形式…共通テストにどう向き合うべきか

--難関大合格における共通テストの立ち位置についてお聞かせください。共通テストはセンター試験より難化しているという声もありますね。

 「センター試験よりも難しい」というより、得点しにくい試験になっています。センター試験と比較してみると、問われていることの本質は変わっていなくても、たとえば社会の出題で、2~3点の資料を照合しながら答えなければならなかったり、選択肢の中で正しいものが1つとは限らない問題があったりと、問題の形式が変わっただけでレベルが高くなったものがあります。

 なかでも数学は、ただ式が並んでいて1題ずつ解答させる問題ではなく、登場人物の会話から式を立てて解を導くなどのプロセスを必要とする出題が増えています。場面の状況を読み取るための時間が必要だったり、読み取りの段階でミスしたら正解にたどり着けなかったりと、解答におけるタイムマネジメント力や、情報分析力が求められます。

 問われている知識や学力の水準が上がったというよりも、処理テクニックやスピードがより必要とされるようになった印象です。そのため、一般的な大学の入試問題とは大きく異なっており、共通テスト独特の問題形式に慣れなければ解けないものになっている、と感じています。

インタビューに応じてくれた早稲田アカデミー大学受験部長・加藤寛士氏

 そのうえで、私たちが考える共通テストの立ち位置としては、3つあります。

 まず、東大をはじめとする国公立大の一次試験であるため、その合格のための第一関門であること。合格を勝ち取るための最初の関門であることは間違いありません。次に、併願する私大の合格を掴むための手段です。そして最後に、高校1・2年生にとって、現在の学力を測るための有効な定点観測ツールであることです。

 今回は、併願する私大を共通テスト利用入試で合格する方法と、学力の定点観測ツールとしての共通テストの使い方を紹介したいと思います。

併願私大の合格を掴むための共通テスト利用入試

 まずは、併願私大を共通テスト利用入試で合格しておくという活用法です。早稲田アカデミーで受験指導を行う際、安全策としての併願校をご提案します。その際、私たちの提案に対し、第一志望校とのレベル差から、生徒や保護者の方がなかなか受験に前向きになれないことがあります。そのときに生徒や保護者の方にお話しするのは「初めての大学受験で最初の合格を取れたときの安堵の大きさ」についてです。まずは1校でも併願校に合格をしておくことが、その後の受験において非常に重要です。そこで受験のハードルが比較的低い共通テスト利用の出願を活用するように伝えています。大学ごとの出願も不要ですし、個別の試験会場に受けに行く必要もなく、心理的・身体的なストレスも最小限に抑えられるため、便利な仕組みだと考えます。「出願しておいてよかった」という声も良く聞かれます。さらに、共通テストは出題形式が独特だからこそ、安定して得点が取りづらく、それゆえ、逆に得点が大きく上振れする可能性もあります。共通テスト利用入試に関しては、安全校だけでなく、チャレンジ校にも出願しておくと、思ったより得点できた場合に合格を勝ち取れる可能性もあるので、共通テスト利用型の入試を幅広く出願することを視野に入れるのもお勧めです。

高1・2から使える学力の 「定点観測ツール」としての共通テスト

 次に、高校1・2年生における学力の「定点観測ツール」としての活用法について。とりわけこの場合の活用のしやすさは、特に国語・理科・社会の3教科でいえます。この3教科は共通テスト独特の癖が比較的少なく、一般的な大学の入試問題に近いので、いわゆる入試問題を解く力である「入試力」を測りやすいという利点があります。共通テストの得点率が、入試力と相関しやすいのです。

 逆にいうと、英語と数学は、程度の差があるものの、一般的な大学の入試問題との形式の乖離が大きいといえます。特に共通テストの英語は、リーディングとリスニングの点数比率が1:1になっているなど、TEAPやGTECといった英語民間試験に近い出題傾向になっています。英語4技能を測る英語民間試験を活用する、近年の大学入試の流れを踏まえると、そうした時代の風潮と共通テストの英語の出題形式はシンクロしているといえるかもしれません。

難関大に対応する「入試力」が、共通テストの得点につながる

--早稲田アカデミーでは、共通テストで高得点を取るための対策はされているのでしょうか。

 直前期を除き、共通テストに特化した対策はしていません。難関大を志望する生徒であれば、そのための受験勉強を通して必然的に共通テストの目標点はクリアできると考えています。とりわけ高3の夏は、共通テストよりも各大学の入試問題における難問への対応力に主眼を置く方が良いと思います。

--先ほど、学力の定点観測ツールとしての共通テストの活用についてのお話がありましたが、難関大志望者は夏の段階でどの程度の得点が求められますか。

 国公立大二次試験や私大の入試で使う科目においては、高3の夏休みの時点で、8割前後を取れる完成度であってほしいと思います。東大などの最難関大を目指す受験生であれば、基幹科目と呼ばれる英語・数学・国語において、高2の夏休みで8割前後の水準を目指すことも難しくないと思います。共通テストにおいて求められている学力水準はそこまで高くはないので、到達しておいてほしい現実的な目標といえます。ただ、特殊な出題形式に慣れることも必要ですので、早稲田アカデミーで毎年6月と2月に実施している「共通テスト対策模試」などを活用して、場数を踏むのも1つの手ですね。

難関大志望者が目指すべき学習進度と学力目安(提供:早稲田アカデミー)

英数国を早めに完成、高3秋から理社を追い上げる

--難関大合格を目指して学習をしていれば、共通テストの目標も必然的にクリアできるということですね。早稲田アカデミーでは難関大合格に向けてどういった指導を行っているのでしょうか。

 早稲田アカデミーは、高校1年生向けに行う「東大現役合格セミナー」で、高校3年間の学習の進め方を示しています。その前提として「英数国3教科と理社2教科の学習を切り分けて考えないといけない」ということをお伝えしています。

 理科・社会に関しては、どんな進学校でも高校3年生の2学期あたりまでは未履修分野が残ります。つまり現役生が理社の全部の単元を習い終わって、過去問をやったり、入試実戦レベルの難しい問題に取り組んだりできるのは、高3の秋からとなります。つまり、最後の数か月で過去問などを通じて入試実戦力を高めねばなりません。そうなると、必然的に「先に英数国の3教科を完成させて、理社をあとから仕上げる」ということになります。

--全体の流れは把握できました。特段、夏休みの学習に関してはいかがでしょう。

 全体の流れを踏まえて、志望校別に夏休みの学習内容と到達目標をご紹介しましょう。東大をはじめとする難関国公立大、早慶上智大、GMARCH大の3つのパターンに分けてめやすを示したいと思います。下記の表は、それぞれ取り組む学習内容と時期をまとめたものです。

 大きく分けて、教科書・基礎問題集を活用した学習(1周目の学習)、教科書よりもややレベルの高い市販の問題集などを活用した2周目の学習、過去問を活用したより実戦的な学習の3段階で解説します。

志望校別・学年別学習計画(早稲田アカデミーより情報提供を受け、編集部にて作成)

高2で模試を先取り受験…早めに仕上げる東大志望組

--志望大学によって、夏休みに着手すべき学習レベルに差がありますね。まず東大などの最難関の国公立を目指す生徒に関して、解説いただけますか。

 東大などの最難関国公立志望者は、高1の夏休みに関しては、英数国の高校の内容を先行して学習し、ひと通りの知識が頭に入っている状態が望ましいでしょう。たとえば早稲田アカデミーのカリキュラムのうち、中高一貫校生用の進度が速いものでは高1の終わりの段階で数IIICの全範囲が終わっていますし、高校入試生であっても、英語や国語、文系の数IIBであれば高1で高校範囲を終えています。その状況であれば、高1の夏休みには、英数国はややレベルを上げた市販の問題集などの発展的な内容に取り組んでおくことが可能です。

 理科・社会について、高1の夏休みの段階では「教科書レベルの復習をする」ことを推奨しています。先ほども申し上げたように、理社は受験の比較的直前まで未履修分野が残りますので、先取りして仕上げる必要はありません。一方で、「未履修分野があるから最後にまとめてやる」という考えは非常に危険です。理社に関しては、長期休みごとに今まで習ったところを着実に固めることが大切になります。これを高1の夏休み、冬休み、春休みと蓄積することで、高2に進級した際にレベルアップした問題集に取り組めるようになるのです。長期休みごとの地道な復習が、高3になったときにじわじわと効果があらわれてきます

 そして、高2の夏~秋のポイントになるのが、本来、高3が受ける東大模試などを飛び級で受けてみること。得点や順位よりも「模試を通して第一志望校の入試問題に触れ、距離感を掴む」ことが大切です。早めに進めている英数国に関しては、得意科目であれば入試問題にも対応できるように難度の高い勉強を高2の1学期から始め、高2の夏~秋の模試に挑んでみてほしいと話しています。また、英数国における得意科目は過去問を1回は解いてみること。一度過去問に触れることで、どんなレベル感なのか、どのような時間配分で解けば良いのかを知ることが目的です。他の科目についても、基礎問題は卒業し、教科書よりももう1段階レベルを上げた市販問題集まで解いておきたいものです。高2の到達めやすは、東大模試の英数国320点満点中100点に設定しています。

 そして、東大レベルの最難関国公立大志望者の高3の夏。この時期から英数国に関しては、とにかく実戦演習を積んでいくべきです。早稲田アカデミーの授業内でも過去問演習に定期的に取り組んでいきます。タイムマネジメントなどにも注意しながら、しっかり本番を意識しながら解答を進められるように仕上げていく必要があります。

 理科・社会に関しては、夏休み以降、すべての分野の履修が終わってから過去問に取り組む流れです。ただ、二次試験で使わない理社については、そこまで高いレベルまで定着していなくても構いません。履修が完了した長期休みのタイミングで、教科書レベルの基礎問題を1周し、過去問を2年分解いて、7割ぐらい取れるようになれば十分だと考えています。

中高一貫校 中学1~3年生向け大学受験コース
高校1~3年生向け大学受験コース

後発で伸びる私大志望組、高2後半からの短期集中で

--早慶上智大やGMARCH大といった難関私大志望の生徒の学習計画についても教えてください。

 東大と私大を目指す生徒を比較すると、成長曲線に違いがあります。典型的な東大志望者は早期完成型。個人差はもちろんありますが、東大に合格していく生徒は学校行事や部活の忙しさに関わらず、勉強のペースを崩さない傾向が強いので学習計画や目標を設定しやすい。一方、部活や課外活動を精一杯頑張っていることも多い私大志望の生徒は、経験上、高2後半ぐらいから成績がぐんと伸びる生徒が多いように思います。いわゆる後発型です。

 そのため私大志望の生徒は、高1では基礎問題を中心に、学校と塾でやっていることをしっかり頑張り、部活を引退してから集中して応用問題や過去問を仕上げていく流れになることも多いでしょう。私大組は科目数が少ないので、このようなスケジュールでも対応はできますが、せっかく塾や予備校で受講している科目があるならば、高1の段階でも高レベルの問題集まで進めていてほしいですね。特に早慶上智大を目指すなら、少なくとも高2の夏には英数国の得意科目は基礎問題をクリアして、高いレベルの市販問題集に着手している必要があります。理社の科目数が少ないので、英語をはじめとする基幹科目の習熟度が高ければ、理社の学習に関しては少し遅めのスタートでも間に合うことが多いと感じています。

生徒とのコミュニケーションを通してカリキュラムをブラッシュアップしていると話す加藤氏

--ここまでお話を伺ってきて、早稲田アカデミーでは、塾生が通っている中学校・高校の授業進度を把握しながら、カリキュラムを構成されている印象です。情報連携されているのでしょうか。

 ありがたいことに、早稲田アカデミーは都内の進学校と呼ばれる学校に通う生徒に多数通っていただいています。早稲田アカデミーは、基本的な方針として、塾での学習と並行して学校での学習もしっかり頑張り、成績を上げることがその後の志望大学合格や将来の夢に直結すると考えています。したがって、成果を出すためにも、通っている学校の特徴やカリキュラムの進め方について生徒たちと日常的にコミュニケーションをとっています。そのような生徒との関わりによって得られた情報を、日々の授業やカリキュラムづくりにも生かしています。

自身にミッションを課し、模試を受験…成長を実感するための学習のコツ

--最後に受験生に対して応援メッセージをお願いします。

 これから秋にかけて模試を受ける機会が増えます。模試を受験する際は、自分なりのテーマやミッションを具体的に決めることが大事です。「この科目を頑張る」といった漠然とした目標ではなく、「この夏に頑張った○○の単元が出題されたら正答率○割を目指す」というように、単元レベルで目標を設定すること。そして、「頑張る」「結果を出す」と決めた単元については、模試で正解できていなかったらしっかりと反省をして復習するべきです。このようにミッションを設定し、それを達成するという模試のサイクルを夏から秋にかけて5~6回繰り返します。このような意識を持ちながら模試を受けると、確実に成績を伸ばすことができます。

 また、東大模試や早慶大模試のように、その大学の志望者だけに受験者が限定される模試は判定が明確に出ます。志望校別判定模試の場合は、上記のようなミッションの振り返りに加え、一般的に「合格圏内」とされるB判定まであと何点必要だったのか、達しなかった場合はどの科目の何が何点足りなかったのかを確認します。「この問題とこの問題ができれば受かっていた」という「たられば」の復習をすることで、記憶に強く残って、次は間違えにくくなります。模試という貴重なタイミングで、「取るべきなのに取れてないところを速やかに克服する」ことを強く意識するようにしましょう。

--ありがとうございました。


 東大や早慶上智大など難関大を目指す入試力を身に付けることで、共通テストにも通用する力を身に付けられると語る加藤氏。それは早稲田アカデミーがこだわりとして掲げている「大学合格の先まで活きる力」を獲得することに他ならないだろう。学年別・志望大学別に、何をすべきか、どこまで到達すべきかを明確に示した、具体的なアドバイスは2024年年明けに本番を迎える高3だけでなく、高1・2にとっても有意義なものだろう。加藤氏のアドバイスを参考に、ぜひこの夏の学習をより充実させてほしい。

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《羽田美里》

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

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