自然と電気のつながりを体感…御母衣ダム・発電所と大自然を舞台に親子で学ぶJ-POWER「エコ×エネ体験ツアー」

 J-POWER(電源開発)が主催する「エコ×エネ体験ツアー水力小学生親子編@御母衣」に小学6年生の息子と同行した。ダムや水力発電所の見学、ナイトハイク、実験など、自然と電気のつながりについて学べるプログラムが満載。ツアーに密着してわかった人気の理由とは。

教育イベント 小学生
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J-POWER「エコ×エネ体験ツアー」御母衣(みぼろ)小学生親子編~水の源流をたどって学ぶ「自然と電気」体験学習ツアー
  • J-POWER「エコ×エネ体験ツアー」御母衣(みぼろ)小学生親子編~水の源流をたどって学ぶ「自然と電気」体験学習ツアー
  • 集合場所の木曽川駅でスタッフがお出迎え
  • バスの車内では、自己紹介やゲーム、クイズなどで盛りあがった
  • バスの車内では、自己紹介やゲーム、クイズなどで盛りあがった
  • 御母衣ダム天端からの景色(湖側)
  • 御母衣ダム天端からの景色(下流側)
  • 放流に使うゲート
  • 御母衣ダムを見学しながら説明を聞く

 J-POWER(電源開発)が2007年から毎年開催している「エコ×エネ体験ツアー」は、小学4年生~6年生を対象とした夏休みの体験イベント。御母衣(みぼろ)ダム・発電所とその周辺の大自然を舞台に、親子で楽しみながらじっくりと自然と電気のつながりについて学ぶことができる1泊2日の人気のツアーだ。新型コロナウイルスの影響により2020年は中止。2021年からはオンラインで開催されていたが、2023年は4年ぶりに現地で開催された。

 御母衣ダムや発電所、合掌家屋の見学、科学実験などを体験でき、食事や宿泊を含む参加費が無料(集合・解散場所までの交通費を除く)という人気のツアー。再び現地での開催となった今回の当選倍率は10倍以上だったという。

教育系YouTuber葉一さん「今の時代だからこそ。より大切にしたいこと」

 毎年人気が高まる同ツアーは、電気をつくっている人たちから直接学べるため、子供が知識を深められる貴重な機会であり、親子で一緒に体験するプログラムであることも魅力だ。教育系YouTuberの葉一氏に、親子で体験することの大切さや日々の学習への生かし方について聞いた。

教育系YouTuber 葉一さん


「今の時代だからこそ。より大切にしたいこと」
 「百聞は一見に如かず」という言葉がありますが、特に子育てや教育においてはこの言葉の重要性を強く感じています。近年、ICT環境が整ったこともあり、“百聞”が簡単になりました。PCやスマホを操作すれば、いろいろな情報にアクセスして情報を得ることができますよね。それは魅力的な面も確かにあるのですが、それだけだと子供たちのもつ興味関心のアンテナに引っかかりにくいという面もあります。だからこそ、やはり“実際に体験してみる”という“一見”を大切にする必要があるのです。このツアーはまさしくそういった体験が詰まったものです。

 また、このツアーの魅力は「なぜ?」のストッパーを外すことにもあります。子供たちは日ごろから世の中のいろいろなものに「なぜ?」を感じています。ですが、それを聞く相手がいなかったり、大人に気を遣ったりしてしまい、その疑問を解決することなく過ぎ去ってしまう。でも、このツアーでは疑問を素直にぶつけることができる。ときには親子で「なんでだろうね、聞いてみようか」と会話になることもあるし、親が質問している姿を見せることだってできます。子供たちにとって「自分の疑問を大切にして良いんだ」という体験はその後の人生にプラスの力を与えてくれるものです。

 親の方が知識をもっていることが多いので、親は教える人で子供は教えられる人の構図になりやすい。でも、このツアーのように親子で初めての体験を共有できると関係性がフラットになります。親と子ではなく、人と人、ときに友達のような錯覚をするくらいの距離感になることだってあるはずです。子供たちにとって、その距離感は代え難い経験となります。そんな「一緒に初めての体験をする」という時間が、これからより大切になっていくように感じています。


 筆者は7月25から26日にかけて、「エコ×エネ体験ツアー水力小学生親子編@御母衣~水の源流をたどって学ぶ『自然と電気』体験学習ツアー」に親子で同行。エネルギーは森や水といった自然環境とも密接に関わっていること、普段何気なく使っている電気の大切さを実感する良い機会になった。初めて出会った全国の参加者とともに学び、新しい発見や感動を分かち合った、2日間の充実した時間をレポートする。

 今回参加したツアーのスケジュールは以下のとおり。

エコ×エネ体験ツアー水力小学生親子編@御母衣~水の源流をたどって学ぶ『自然と電気』体験学習ツアー」

1日目

JR木曽川駅集合→バス移動(自己紹介やクイズなど)→御母衣ダム天端(てんば)の見学→バス移動→昼食(合掌家屋「旧遠山家」にて)→バス移動→発電所の体験プログラム(御母衣発電所)~五感を使って発電所を体験~→バス移動→トヨタ白川郷自然学校チェックイン→夕食・休憩→施設内の合掌家屋で昔の暮らし解説/電気の話→ナイトウォーク→交流会→お風呂・就寝

2日目

源流の森ウォーク→朝食→トヨタ白川郷自然学校チェックアウト→水力発電に挑戦~自然の川でダムをつくろう~→着替え→まとめのワークショップ→ふりかえり~2日間の体験をふりかえる時間~→バス移動→荘川桜で記念撮影→バス移動→昼食(ドライブインみぼろ湖にて)→JR木曽川駅解散

 ツアー中は子供も大人もスタッフも全員、自身が名付けたキャンプネームが書かれた名札をかけ、活動中はキャンプネームで呼び合った。文中はキャンプネームのままで紹介する。

バスでの移動中は自己紹介やクイズでウォームアップ

緊張する参加者たちをスタッフが笑顔で出迎える

 集合場所はJR木曽川駅。駅の改札を出るとスタッフの皆さんが笑顔で迎えてくれた。今回参加した13組26名の親子が全員揃ったところで、バスが出発。最初の目的地である御母衣ダムに向かうバスの車内では、自己紹介やゲーム、クイズなどで盛りあがった。

バスの車内では、自己紹介やゲーム、クイズなどで盛りあがった

 途中、山奥の高速道路を走っていると「分水嶺(ぶんすいれい)」という聞き慣れない言葉が。分水嶺とは水の流れの向きの境目のことで、この辺りでは岐阜県のひるがの高原を境に北側の日本海に流れる庄川と、南側の太平洋に流れる長良川に分かれる。ダムを作るには落差が大きいほうが有利なため、比較的なだらかな南側の長良川よりも傾斜が急な(落差の大きい)北側の庄川にダムが多く作られたのだという。話を聞いているうちに、最初の目的地、御母衣ダムに到着した。

ツアーの始まりは雄大な御母衣ダムの景色から

 バスを降りると、ダムのてっぺん「天端」から自然の中にどっしりと構えた御母衣ダムが見渡せた。参加者からは「大きいねー」「どのくらい広いんだろう?」などの声が聞かれた。電源開発 御母衣電力所所長代理の頭本氏の説明によると、御母衣ダムは日本初の傾斜土質しゃ水壁型ロックフィルダム。粘土質の土の外側に硬くて風化しにくい花崗岩(かこうがん)を積み重ねて作られており、石の重さで水圧に耐えている。ダムというとコンクリートの壁がそびえ立つイメージだったが、大きな石を積み重ねたロックフィルダムはコンクリートのダムよりも10%ほど費用を抑えて建設できるという。

 豪雪地域である庄川上流域の雪解け水や雨水、山々が蓄えた湧水を受け止めている御母衣ダムの総貯水量は約3億7,000万トン。東京ドームやナゴヤドーム約300杯分の水を貯めることができる。御母衣発電所で発電に利用した水は、地下の放水管を通って9キロ下流に位置する鳩ケ谷貯水池に流れ込む。質問タイムでは、「大きなダムの中には生き物は住んでいますか?」「大きな石をたくさん積んでいますが、地震で崩れたりしませんか?」などの質問が寄せられた。

御母衣ダム天端からの景色(湖側)
御母衣ダム天端からの景色(下流側)

生活に欠かせない電気、水力発電の仕組みを体感

 続いて合掌家屋「旧遠山家」でお弁当を頂いた。食後は、大きな囲炉裏や養蚕を行っていた場所、家の外のようすなどを見学して昔の生活に思いをはせる親子や、御母衣電力所のスタッフのもとへ行きダムについて質問する親子の姿も見られた。

合掌住宅「旧 遠山家」で昼食
昼食後は合掌家屋の中を探検、ダムについて直接質問する姿も

 昼食後は御母衣発電所に移動し、グループに分かれて見学。私たちのグループは電源開発 御母衣電力所所長代理の門脇氏の案内のもと、まず車に乗り込み、長さ約1,200メートルの搬入路トンネルから発電機室へ向かった。搬入路トンネルとは、地下発電所の工事や大きな機械を運び入れるために作られたもの。現在は、発電所の定期点検や補修工事などで利用されている。水力発電は、高いところから低いところへ水を流すときに発生するエネルギーを利用した発電方法で「水の量×高さ」で発電量が決まるため、発電所は地面よりも低い地下にある

 発電機室に到着すると、大きな2台の発電機が大きな音を立てて動いていた。御母衣発電所は、ピーク調整電源といって電気の需要に応じて稼働させたり、止めたりしている発電所だという。以前は、工場などが稼働する昼間に水力発電を使っていたが、近年は天気の良い日の昼間の電気は太陽光発電で賄い、太陽が沈む夕方から夜にかけて水力発電を使うことが多くなっている。しかし、とても暑かったこの日は、御母衣発電所の発電機を昼間も稼働させないといけないくらい電力需要が高いと教えてもらった。

発電機室では大きな2台の発電機が稼働していた

 ここでは最大毎秒約130トンの水を利用して発電を行っている。これは、学校のプール(25m×12m×1.2m=360トン)が約3秒で満杯になる量と聞いて、一同びっくり。発電機室のさらに下にある水車が1分間に225回転して、2台の発電機で最大21万5千kW(キロワット)の電気をつくることができる。

 発電機室にはトヨタ白川郷自然学校の「ある」が待っていて、子供と大人に分かれてボールを回しながら1分間に何回転させられるかというゲームを行った。どちらも1分間に100回転にも届かず、水車の回る速さを感じた。また、エコ×エネ体験ツアーお馴染みの博士「ドクター」によるペットボトルを使った水力発電の実験では、ペットボトルに入れた水をホースに勢いよく流すと、ホースの先に取り付けられた発電機の水車が回転し、コイルの中の磁石が回転することで電磁誘導によって電気がつくられ、ライトが点灯した。水力発電の仕組みがよくわかり、また、ライトが点灯したときには全員が感動の声をあげた。

ドクターと一緒に水力発電の実験

 実験が終わると、さらに下のフロアへ移動して水車と発電機をつなぐ水車ピットが回るようすを見学した。万が一、周りの機械に触れて発電が止まってしまわないように2人1組ずつ案内してもらう。生活に欠かせない電気だからこそ、トラブルを起こさないように慎重に作業をしているという話が印象的だった。

水車ピットが回るようすをすぐそばで見学

 また、同じフロアでは以前使われていた運転制御室も見ることができた。J-POWERの「シゲさん」によると、約30年前までは1日24時間、3交代で水車や発電機などの運転制御をここで行っていたが、今は愛知県春日井市にある制御所から遠方制御を行っているとのこと。御母衣電力所では、事故・障害対応や補修点検を行っているという。

 見学しながら地下深くまで降りてきた一行は、インクラインと呼ばれる産業用・貨物用のケーブルカーに乗車。インクラインの長さは223m、22度の急勾配を約3分かけて登って行った。インクラインを降りた後は、発電した電気を屋外の変圧器に送る電線が入っている箱が並んだ迷路のような通路を抜けて地上へと戻ってきた。地上へ戻ってきた後は、ロックフィルダムの麓から見学。大きな岩がたくさん積まれたようすを下から見上げた景色は迫力があり、参加者からは「かっこいい!」という声があがっていた。

作業用ケーブルカー「インクライン」に乗って地上へ
電線が入っている箱が並んだ迷路のような通路を進む
下から見上げたロックフィルダムのようす

 続いて訪れたMIBOROダムサイドパーク内には、発電所内部やダムについてわかりやすく示したジオラマが展示されていた。門脇氏の解説を聞きながら、今見学してきたばかりの発電所やダムについて情報を整理しながら見ることができたので、より理解が深まったような気がした。

電気のない昔の暮らしを知ることで、何気なく使っている電気のありがたみを実感

 発電所見学後は、バスで移動しトヨタ白川郷自然学校(以下、自然学校)へ。高台にあるため、移動中に白川郷の合掌家屋が一望できた。チェックインの後は夕食。地域の素材を使ったフランス料理を堪能した。食事中はいろいろなテーブルから、「どこから来たの?」「夜のナイトハイク楽しみだね」など、楽しそうな会話が聞こえてきた。

夕食のようす。楽しそうな会話がたくさん聞こえてきた

 夕食後は自然学校内にある合掌家屋に集まり、「昔の暮らしの解説」と「電気の話」を聞いた。「昔の暮らしの解説」では、部屋の電気を消し、皆で囲炉裏を囲み、小さなろうそくの明かりのもとで、自然学校スタッフの「ある」が、2つの木材を手に取り、「囲炉裏で使われていた木材はどちらでしょう?」というクイズを出題。実際に2つの木材を手に取ってみると、片方は重く、もう片方は非常に軽い。重い木はミズナラで、軽い木はスギだったのだが、木の密度の違いによって重さが違うのだという。木の密度が高く燃焼スピードが遅いミズナラの木が、同じ時間燃やしても長く明かりが灯るため囲炉裏で使われていたことを教わり、昔の人の暮らしの知恵を学んだ

生活に欠かせない電気の特徴について、皆で一緒に考えた
昔の人が囲炉裏で使っていた木材はどっちだろう?

 合掌家屋を出ると辺りは薄暗くなっており、多くの参加者が楽しみにしていたナイトハイクの始まりだ。ナイトハイクでは自然学校近くの森の中の道を、電気なしで歩いていく

 電気がまったくない真っ暗な道を歩くのは、街中で暮らす参加者たちにはなかなかできない経験。月明かりがわずかに差し込む森の中を虫の声や木々が風に揺れる音に耳をすませながら歩いて行った。森を抜けて少し歩くと、ホタルの鑑賞スポットに到着。最初は目を凝らさないと見られなかったホタルだが、時間が経つにつれたくさんのホタルが出現。目の前を飛んだり、肩に止まったりするホタルに感動していた。ホタルがたくさん見られるようになったのは、ホタルが現れる時間帯になったからだけでなく、皆の目が暗闇に慣れてきたからだという説明があった。そう言えば、最初は足元に慎重になっていた足取りも暗闇の中で次第に慣れてきたような気がした。

 森の中を歩いて自然学校に戻る途中でろうそくを使った実験を行った。暗い中、片目を手で覆い、もう片方の目で数秒間ろうそくを見つめる。そして、ろうそくを消して真っ暗な中で手を離すと、手で覆ったほうの目だけが暗闇に慣れていたことがよくわかる。人間の体の順応力にびっくりした。

暗闇の中で片目だけろうそくを見つめてみると…

 自然学校に戻ると、交流会が行われた。グループごとにテーブルに分かれて、実験キットを使い、楽しみながら発電の仕組みについて学んだり、J-POWERオリジナルの「エコ×エネかるた」を楽しんだりしながら、あっという間に終了時間になってしまった。

交流会は実験やかるたで盛りあがった

 出発から盛りだくさんのプログラム。あっという間の1日だった。部屋に戻ってお風呂に入り、今日1日体験したことを思い出しながら、翌日に備えてぐっすりと眠った。

1日目終了後の感想

「ケイ」さん&「ともあり」さん親子
 娘が「エコ」や「サスティナブル」な取組みに興味をもっているので参加しました。普段から疑問に思っていることを「ドクター」や発電所の方に直接質問ができて、とても良い経験ができました。子供と一緒に見学できる施設はたくさんありますが、このツアーのような長時間の宿泊プログラムはなかなかないので、貴重な体験でした。娘と一緒に楽しみながら学ぶことができて良かったです。(ともありさん)

 お姉ちゃんがオンラインで参加したことがあるので、参加する前にも「水力発電で効率よく多くのエネルギーを作るためにはどんな方法があるのか」と話し合ったりしていました。ダムと発電所を実際に見て、気になっていたことを発電所の人に直接質問できて良かったです。夏休みの宿題では水車を作ろうと思っているので、今日見たり聞いたりしたことを生かしたいと思います。(ケイさん)


えいと」さん&「みそ」さん親子
 ツアーのことは以前から知っていたので、いつか参加したいと思っていました。コロナ禍で上の子の時は現地での参加が叶いませんでしたが、今回は下の子と参加できて良かったです。初めて見たロックフィルダムはとてもかっこよかったです。電気がある生活が当たり前だったので、電気についてあらためて考える良い機会でした。(みそさん)

 ツアーに来る前から楽しみで、ワクワク・ドキドキしていました。ダムはとても大きくてびっくりしました。一番楽しかったのはナイトハイクで、動物が出てきたり、ホタルに会えたりしたので嬉しかったです。暗闇で目が慣れることも体感できました。明日の朝ごはんと、ダムを作って水力発電をする実験も楽しみです。(えいとさん)


 川でずぶ濡れ!ダム作り体験、荘川桜に込められた思い…2日目のレポートに続く

ひととエネルギーと環境を“つなぐ”
J-POWERエコ×エネ体験プロジェクト

《外岡紘代》

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