東京【高校受験2024】Z会の教室に聞く冬の学習戦略「受験は自律・成長のチャンス」

 東京都の難関高校受験において高い合格実績を誇る「Z会の教室」。Z会進学教室代表兼御茶ノ水教室教室長を務める尾田哲也先生、英語科担当兼第4地区マネージャーの岡田久典先生に、2024年度都立高校入試の傾向や学習アドバイス、保護者の心構えなどについて聞いた。

教育・受験 中学生
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Z会エデュース Z会進学教室 代表/御茶ノ水教室長/第1地区担当マネージャー 尾田哲也氏(左)と、第4地区担当マネージャー 岡田久典氏(右)
  • Z会エデュース Z会進学教室 代表/御茶ノ水教室長/第1地区担当マネージャー 尾田哲也氏(左)と、第4地区担当マネージャー 岡田久典氏(右)
  • 東京都教育委員会発表資料をもとにリセマム編集部作成
  • 東京都教育委員会発表資料をもとにリセマム編集部作成
  • Z会エデュース Z会進学教室 代表/御茶ノ水教室長/第1地区担当マネージャー 尾田哲也氏(左)と、第4地区担当マネージャー 岡田久典氏(右)
  • 「自校作成問題を行う上位校に関しては男女合同定員の影響はほとんどない」と語る尾田氏
  • 「自校作成問題は、時間内で最大限のパフォーマンスを発揮できるようなマネジメント能力が問われる」と語る岡田氏
  • 「模試やテストを受けたら必ず見直しをすること」(尾田氏)
  • 「高校受験を通じて人間として成長する」(岡田氏)

 東京都の難関高校受験において高い合格実績を誇る「Z会進学教室」。Z会進学教室代表兼御茶ノ水教室教室長を務める尾田哲也氏、英語科担当兼第4地区マネージャーの岡田久典氏に、最新の東京都立高校入試の動向や冬休みから入試までの学習のポイント、保護者の心構えなどについて話を聞いた。

 難関校・上位校合格を狙う小学生~中学2年生にも参考にしてほしい。

1都3県で推薦入試を行う公立入試は東京都のみ

--都立高校入試の仕組みについて教えてください。

尾田氏:都立高校の入試は推薦入試と一般入試があり、推薦入試は例年1月26、27日に、一般入試は2月21日に行われます。首都圏の1都3県の中で学力検査を課さない推薦入試を行うのは東京都のみです。専門学科などについては募集定員の30%、普通科は20%を推薦入試、残りを一般入試で選考する学校がほとんどですが、新宿高校のように推薦は10%のみなど定員の割合が異なる学校もあります。

 なお、推薦で合格した時点で一般入試の受験資格を失うため、必然的に推薦入試では第1志望の学校を受けることになります。

--推薦入試の概要について教えてください。

尾田氏:専門学科などでは実技検査のある学校もありますが、普通科のほとんどは小論文か作文のいずれかと個人面接で選考します。新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から2021年以降は集団討論がなくなり、2024年度以降の実施については学校ごとの選択制になります。2024年度入試で、集団討論を実施する学校は、日比谷、西、竹早など13校のみです。

 配点比率については学校ごとに決められていますが、東京都では調査書(内申点)の配点を全体の50%以下にするという東京都教育委員会の取り決めがあります。たとえば日比谷の推薦入試は、調査書点450点、個人面接200点、小論文250点の合計900点満点というように、配点のうち調査書点の割合が50%という高校が多いです。一部、西や青山など、50%未満の学校もあります。

--推薦入試は例年どのくらいの倍率になるのでしょうか。

尾田氏:2023年入試までは男女別枠募集でしたが、推薦入試の倍率は男子で倍率3倍程度、女子が4倍程度になる学校が多く、かなり高倍率です。倍率が高いため、都立高校が第一志望でも推薦入試を受けない生徒もいます。

岡田氏:Z会進学教室に通っている生徒で推薦入試を受験するのはおよそ3人に1人くらいです。推薦入試を受けるとなると、小論文や集団討論など学校の傾向に合わせた対策に時間を割かなければいけません。また、受かればそこで受験終了なので良いのですが、合否がわかるまでなかなか一般入試の勉強に身が入らず、2月2日に不合格となって初めて気持ちを切り替える生徒も多く、その時間的なロスはどうしても発生してしまいます。調査書の得点が十分ではなく、面接などにおいて人前で話すのが得意ではない生徒には、推薦ではなく一般入試に向けて勉強することをアドバイスしています。

Z会エデュース Z会進学教室 代表/御茶ノ水教室長/第1地区担当マネージャー 尾田哲也氏(左)と、第4地区担当マネージャー 岡田久典氏(右)

--一般入試について教えてください。

尾田氏:一般入試については学校ごとの選考方法に違いはなく、学力検査が700点、調査書が300点となります。また、2023(令和5)年度入試から、新しく英語スピーキングテスト「ESAT-J」の点数が20点加わり総合得点は1020点満点となりました。

 調査書においては、音楽・美術・保健体育・技術家庭の技能4教科の得点を2倍し(オール5だと20点満点を2倍して40点満点)、それに英数国理社の5教科の得点(オール5だと25点満点)を加えて、65点満点にし、それを調査書の評定の比率に換算し300点満点にします。

 学力検査については、ほぼすべての学校で同じ問題(共通問題)を使用して入試が行われますが、一部の学校では英数国で「自校作成問題」を作成します。自校作成問題で入試を行う学校は、進学指導重点校の7校(日比谷・西・戸山・青山・国立・立川・八王子東)と進学重視型単位制の3校(新宿・国分寺・墨田川)で、理科・社会、英語のリスニングについては共通問題です。都立国際高校はリスニング含め英語のみ自校作成問題を使用します。

--2年目となる英語スピーキングテスト「ESAT-J」の難易度はいかがでしょうか。

岡田氏:スピーキングテストは4つのパートから成るのですが、4コマのイラストを見て30秒で考え、残り40秒で4コマすべてについて言及するなど、慣れが必要な出題が多くあります。短期間でスピーキング能力を向上させるのはなかなか難しく、瞬時に何か言う「対応力」は練習を積み重ねる必要があると思います。Z会進学教室では、中3の9月から都立高校受験に向けた「都立スピーキングテスト対策講座」を開講し、本番を想定した対応力を身に付けていきます。

「男女合同定員」の影響は

--2024年入試から普通科の男女別定員を廃止し、成績順で合格者を決める「男女合同定員」に完全移行となります。どういった影響があるのでしょうか。

尾田氏:制度見直しの移行期間である2023年度入試では、一般入試で男女別の募集人員の各8割に相当する人員を男女別で決定した後、2割に相当する人員を男女合同の成績順により合格を出しました。三田高校の例をあげると、男子124名の一般入試の定員のうち、24名を除いた100名、女子113名のうち22名を除いた91名を男女別で選考して、残りの計46名を男女合同で得点の高い方から合格を出したところ、女子の合格者のほうが多くなりました。総じて調査書の評価は女子のほうが高い傾向があるのですが、入試当日の数学、理科、社会の得点は男子のほうが高くなるという傾向もあり、自校作成問題で入試を行う上位校に関しては男女合同定員の影響はほとんどないと考えられます。

--推薦入試に影響はありますか。

尾田氏:前述のとおり、推薦入試に関しては調査書の配点が50%と割合が大きく、かつそこが男女差の大きい部分です。2024年度の推薦入試の女子の合格者が増えすぎるのを避けるために、調査書の配点比率を下げた学校もあります。女子の人気が高い三田高校は、調査書100点、面接250点、小論文250点の合計600点満点と、調査書は全体の6分の1しか見ないという方針を発表しています。駒場高校も小論文の配点を高くすることで調査書の配点を40%まで下げるというように、男女合同選抜制にともなう配点比率の変更が一部の学校では行われています

「自校作成問題を行う上位校に関しては男女合同定員の影響はほとんどない」と語る尾田氏

「自校作成問題」は時間内に効率よく解く力が試される

--難関校が実施する「自校作成問題」の特徴と出題傾向について教えてください。

岡田氏:学校ごとに作成した問題と言っても、たとえば日比谷は突出して問題が難しいかというとそうではなく、形式や構成はある程度決まっています。都立高の入試は学習指導要領の範囲内でしか出題できませんので、難関私立のような難解なものではありませんが、量をこなす必要があります。まず問題を見渡して、時間をかける問題とそうでない問題を判断し、確実に取れるところから取る、時間内で最大限のパフォーマンスを発揮できるような力が問われます。英語に関して言うなら、対話文と説明文の長文2題に使用されている単語数は合計2000単語を超えています。リスニングや英作文などの問題を解く時間を考えると、1分間に100単語以上の英文を、意味を理解しながら読むスピードが求められます。

 併せて教科横断型の知識や発想力、好奇心も必要になります。英語の長文であっても背景となる知識が備わっていないと解けませんし、最低限の興味がないと読み進めていく原動力が得られません。教科を超えた学問そのものに対する好奇心がないと対応できなくなってきていると思います。

「自校作成問題は、時間内で最大限のパフォーマンスを発揮できるようなマネジメント能力が問われる」と語る岡田氏

--Z会進学教室ではどのような指導を行っているのでしょうか。

岡田氏:中3の9月から週に1回、都立自校作成問題対策講座として「都立自校作成特訓(3SJ)」を開講しています。Z会オリジナルの問題を、時間を計って演習し解説を受け、答案を提出して添削されたものをもう一度解く、という繰り返しを入試直前までやることで、それまで学んできたものを都立入試の型に落とし込めるように練習を積んでいきます。最初はなかなか得点が取れませんが、9月からの半年間で、いかに要領よく解いていくか練習を積み重ね、本番で差がつく思考力・記述力を磨きます。

都立・私立それぞれの人気校の動向

--2024年度都立高校の募集人員*は、全日制課程167校1,039学級で4万635人と発表されました。人気校の動向について教えてください。*2023年10月26日東京都教育委員会発表「令和6年度東京都立高等学校等の第一学年生徒の募集人員等について」

尾田氏:2024年も進学指導重点校をはじめ上位の学校に人気が集中する状況だと思います。最近では2022年に立川が創造理数科を新設し、人気を集めました。江東区の科学技術高校も2024年度から科学技術科の一部を改編し創造理数科となります。

--私立高校はいかがでしょうか。

尾田氏:最近人気を集めているのが品川区にある朋優学院です。進学実績を伸ばしているほか、附属の中学校がないので高校から人間関係が築けることに魅力を感じる生徒も多いようです。共学化して校舎も新しくなった芝国際も人気です。入試日を12日に変更し入試科目を5教科と英数国の選択制にした巣鴨は、過去20年間で最高の受験者数を集めたので2024年度も注目です。

 早慶附属高校人気は相変わらずですが、特に早稲田大学 本庄高等学院は、2019年まで実施していた埼玉県本庄市での二次試験の面接がなくなったことで、都内の受験生のハードルが下がり、以前に比べて受験者数が増えています。

冬休みまでに単元学習を終わらせるのが理想

--秋から本番まで、どのようなことを意識して学習をするのが良いでしょうか。

岡田氏:成績や模試の結果で志望校を決めると思いますが、あまり判定にはこだわらないようにという話はします。あとは模試やテストを受けたら必ず見直しをすること。私が生徒に言うのは「90点の生徒よりも、30点だったけれどきちんと見直して、もう1回試験をしたら満点を取れるような生徒が最終的に合格していく」ということ。自分のミスあるいは間違った部分、弱いところをしっかりと分析して当日に備えることが大事だと伝えています。

尾田氏:冬休みまでに単元学習をひととおり終わらせておきましょう。中学校の授業の進度に合わせて勉強していると、進度が遅くなってしまいます。特に数学は中3の後半に大事な単元が盛りだくさんなので、意識して前倒しして学習し、冬休み以降は過去問に取り掛かれるように準備することをお勧めします。

「模試やテストを受けたら必ず見直しをすること」

--これから本番までの教科別アドバイスをお願いします。

数学

 基本的な解き方がきちんと身に付いているかどうかが大切です。自校作成問題の過去問に取り組むときは、制限時間内で何点取れ、時間を延長したらプラス何分で何点取れたか、2つの得点を算出しておき、徐々に時間を縮めて制限時間内に解けるようになることを目標にしてください。延長して解けた問題ということは、わかっていた問題ということなので、時間内にそちらを先にやっていくことで得点力につなげましょう。

英語

 単語や動詞の活用形など、きっちり身に付けなければいけないものをしっかりやること。数学と同じく時間内で解けた問題、時間をかければ解けた問題を意識してください。英語の場合、時間切れで長文1つ丸ごと解けなかったということにもなりかねないので、やはり時間を意識した訓練を早い段階から始めておくことが大切です。

国語

 語彙が足りない、意味を正確に把握していないと論説文などを読んでいてもそこで止まってしまうので、きちんと言葉の意味を調べること。選択問題に関しては、なぜこの選択肢は間違っているのかという理由が本文や選択肢の中に必ずあるので、そこを追及することで精度は上がります。記述問題については、必ず先生の添削を受けるようにしてください。

理科・社会

 語句の意味や年号といった基本的な部分を網羅することは必要ですが、細かい知識よりも、複数の資料をきちんと読み取れるかどうかが問われます。何を問われているのかをしっかりと把握してアウトプットする練習が必要です。

高校受験は子供の自律・成長のチャンス

--受験生の保護者へのアドバイスをお願いします。

岡田氏:入試会場に持っていかなければいけない力としてあげるなら「学力・体力・精神力」の3つです。学力はZ会進学教室のような塾で鍛えていくことはできますし、体力に関しては部活などでも鍛えられると思います。3つ目の精神力ですが、どんなにメンタルが強いお子さんも、入試が近づいてくると怖くなってきます。そこで「ダメじゃないの」と親御さんが言うのは不安に追い打ちをかけるようなもの。否定的な発言はせずに、模試や定期テストの失点などに関しては「本番じゃなくてよかったね」と奮起させてあげることが大事だと思います。

 Z会進学教室では、「高校受験を通じて人間として成長する」ということを指導理念に掲げています。高校入試というイベントを、お子さんの成長に向けて最大限活用してほしいと思います。

「高校受験を通じて人間として成長する」

尾田氏:「入試会場に親と一緒に来るお子さんは、圧倒的に合格率が下がります」ということを保護者会でお伝えしています。高校受験はお子さんの自主性を育てる格好の機会です。志望校をどう決めるか本人に考えさせる意見が合わなかったら親子で話し合うといった、子供の精神的な成長や将来への自律につなげるきっかけにしてください。

--小学校高学年~中学1年生のうちから高校受験に向けて備えておくと良いことなど、2025年度以降に高校受験を控える生徒・保護者へのアドバイスをお願いします。

岡田氏:英語に関していうと、中3時点で伸びるのは、幼少期から英会話スクールに通ったり、早期英語教育を受けてきた生徒ではなく、授業をしっかり聞き、学習してきた生徒です。なぜかというと、“小学生で英検何級もっています”という状態で中学に入学してくると、中学校の授業が簡単に思えてそこにあぐらをかいてしまう。読めるけど書けないレベルの単語が出てくる段階になって、ようやく頑張り始めたころには、追い抜かれているのです。早期から英語を学習しているお子さんは、くれぐれも英語を学ぶことに対する謙虚さを忘れないようにしてほしいと思います。

尾田氏:都内は中学受験が盛んなので、まわりは中学受験をするために塾に通っているのにわが子は大丈夫かと心配になることもあると思いますが、私立に通ったほうが必ずしも学力が伸びるというわけではありません。ただ、公立中学校の勉強だけでトップ校に挑めるかというとやはりなかなか難しいので、塾や通信教育で対策をして、中学校の勉強よりも少し難しい内容に挑むことを意識していただけたらと思います。

 勉強は成績を追いかけるものだけではありません。時事問題も含めて、教科の学びは日常にも潜んでいます。知らないことを頑張って勉強して、わかるようになるともっと勉強が楽しくなります。そうやって自分自身をランクアップさせていってほしいと思います。

--ありがとうございました。


 志望校に合格すること以上に、高校受験を通して「人間として成長してほしい」と伝えてくれた尾田先生と岡田先生。迫る入試に向け、万全の対策とサポートで生徒たちを送り出してくれる頼もしさを感じるインタビューだった。

 受験生は、学校や塾の先生、保護者のサポートを受けながら、実りある冬を過ごし、体調を整え自信をもって入試日を迎えてほしい。

東京都立高校をはじめ、難関国公私立高校に合格者を多数輩出
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《吉野清美》

吉野清美

出版社、編集プロダクション勤務を経て、子育てとの両立を目指しフリーに。リセマムほかペット雑誌、不動産会報誌など幅広いジャンルで執筆中。受験や育児を通じて得る経験を記事に還元している。

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