【無料試し読み】「ダメ子育て」を科学が変える!全米トップ校が親に教える57のこと(3)

 SBクリエイティブの協力により、星友啓著『「ダメ子育て」を科学が変える!全米トップ校が親に教える57のこと』の第一章を紹介する。

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「ダメ子育て」を科学が変える!全米トップ校が親に教える57のこと
  • 「ダメ子育て」を科学が変える!全米トップ校が親に教える57のこと

 さまざまな情報が飛び交い、先の見えない今の時代。だからこそ「子育てこそ科学的エビデンスが必要」というのは、スタンフォード・オンラインハイスクールの校長の星友啓氏だ。氏は現在、世界40か国以上からの中高生とその保護者をサポートしつつ、スタンフォード・オンラインハイスクール入学を希望する小学生の支援プログラム運営も行っているという。

 SBクリエイティブの協力により、星氏の著書『「ダメ子育て」を科学が変える!全米トップ校が親に教える57のこと』の第一章を紹介する。

第1章 子供の脳と心について知っておくべきこと(3)

子供とストレスとの正しい関係

 ただ、子供をすべてのストレスから遠ざけようとする必要はありません。
 すべてのストレスが子供の脳の発達に悪影響というわけではなく、適度なストレスは子供が成長するうえで必要不可欠とさえいえるのです。

 つまり強いストレスがサポートなしに長期間続く状態は避けるべきですが、日常の少しのストレスは、まったく問題ありません。

 勉強や友達関係、思いがけない出来事など、日常生活のさまざまな事柄が多かれ少なかれ子供の心にストレスを与えます。そして、子供はそれぞれの体験から、学びを得ます。難しい問題がすぐに解けずにイライラしても、それを乗り越えることで、新しい知識が身に付いたり、友達との関係が少しこじれて悲しくなっても、いろいろ考えを巡らすことで、感情面や社会性が伸びていったりするわけです。したがって、すべてのストレスから子供を遠ざけようとせず、ストレスがかかった後にどう子供をサポートできるかを考えることが重要です。

 たとえば、家族で大げんかをしてしまったとしましょう。小さな末っ子もいて、家族のあまりのけんまくにおびえて泣きだしてしまいました。そんなことがあったら、すぐに優しく落ち着かせてあげて、その後同じようなことが何度も起きないように気を付ける必要があります。

 極度のストレスを放っておいて、子供の心が傷つききってしまうと、それを癒やすのは非常に難しくなってしまいます。そのため、強いストレスに子供がさらされてしまったときは、すぐに子供の心をサポートして、その後そのストレスが続かないようにしましょう。そうすることで、子供の心や脳への悪影響を最小限に抑えることができます。

 実際、子供の心にトラウマが与える影響は、どんなトラウマだったかということよりも、その出来事が起きたときにどんなサポートがあったかで決まってくるともいわれているくらいです。

子供の脳を育てる最もシンプルで最も効果的な方法

 なるほど、暴力や暴言はダメなのはわかるし、いろいろとやり過ぎてもダメ。だからといって、放っておいたら育児放棄で虐待と同じぐらい悪影響……。ここまでの説明で、いろいろ避けるべきことはわかった。では反対に、積極的にやるべきことは何か?

 この問いに、本書では、さまざまな角度から迫っていきます。まずは、もっともシンプルで効果的、かつ子育ての基本となる方法をご紹介しましょう。先ほど紹介したハーバード大学の「子供の発達センター」が推奨する「サーブ&リターン(Serve & Return)」という子育て習慣です*9。 
*9 https://developingchild.harvard.edu/science/key-concepts/serveand-return/

 最初のステップは「サーブ」から。テニスでいうところの、ボールの1打目のイメージです。たとえば、赤ちゃんが「バブバブ」と声を出したり、手足を動かしたりしているのもすべて赤ちゃんからの「サーブ」と解釈されます。

 そして、親が「リターン」を返します。つまり、なんらかの反応を示すということです。たとえば、話しかけたり、なでたり、笑顔を返したり。非常にシンプルな習慣ですが、そうした「サーブ」と「リターン」のやりとりが、子供の認知能力やコミュニケーション能力の発達に欠かせないことがわかってきています。

 したがって親として第一に大切なのは、子供からの「サーブ」に目を凝らして、しっかり「リターン」を返すことなのです。「サーブ」に気づかなかったり、無視したり、身勝手に返したり返さなかったりすると、子供の脳の自然な発達をベストにサポートすることができません。

 そして、「サーブ&リターン」は、赤ちゃんよりも大きくなった子供たちにも重要です。年齢にかかわらず、子供たちの問いかけや表情、ジェスチャーに対して常に「リターン」を返すという、いわば「子育ての基本」を忠実に守ることこそが、子供の自然な脳の成長をサポートするためのシンプルな近道なのです。

今すぐやってあげられる! 子供のメンタルの成長に最も重要なもの

 さて、「サーブ&リターン」は、子供の認知能力やコミュニケーション能力の発達を助けるだけでなく、親子の間で安心できる信頼関係を築いていくことにもつながります。そして親子の信頼関係は、日々の暮らしや子育てをスムーズにするだけでなく、子供のメンタルの成長に非常に大事なことがわかっています。実際、子供のメンタルの強さは、しっかりとした信頼関係を持てる大人が、一人でもいるかどうかに大きく左右されるという報告があります*10。 *10 National Scientific Council on the Developing Child (2015),Supportive Relationships and Active Skill-Building Strengthen the Foundations of Resilience: Working Paper No.13. Retrieved from https://developingchild.harvard.edu/

 これは子育てをする親にとっては非常に重要で心強い科学的発見です。世の中の逆境や困難な環境自体を変えることは、私たち一人ひとりには難しい。また、将来子供が直面するかもしれない難しい状況を未然に防ぐことも不可能です。だからこそ、子供には強いメンタルをもたせてあげたい。そうするためには、たった一人の大人が信頼関係を築いてあげればよく、その一人に自分がなればいいというのです。

 たとえば、同居中の姑と子育て方針が極端に異なる場合を想像してみましょう。姑の時代遅れのやり方に子供が苦しそうで、悪影響が出てしまうのではと心配です。しかし、自分にはその姑の行動自体は変えられない。

 そんなとき、親である自分が子供としっかりした関係性を築くことが、子供が「姑という逆境」を耐えるためのメンタルサポートにつながり、心配している悪影響を防ぐことができるのです。

 同様に、学校や塾などでいじめられたり、挫折したりしても、前を向いて進んでいけるようなメンタルを育てるためにも、子供としっかりとした信頼関係を築くことが重要なのです。

 「サーブ&リターン」を実践して、日頃から子供との信頼関係を深めていきましょう。それが子供のメンタルを強化するための着実な第一歩になります。

 そのうえで、さらに、本書の第4章で扱う子供のメンタル強化法を試してください。

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