サイトトランスレーションという手法を聞いたことがあるでしょうか。英語を勉強している人なら、学習法の1つとして耳にしたことがあるかもしれませんね。
しかし、サイトトランスレーションが具体的にどんなものなのか、そしてどんな効果があるのかは知らない人もいるかもしれません。
そこでこの記事では、サイトトランスレーションとは何かをご紹介しつつ、その効果ややり方などを解説します。
特に英語の理解力をレベルアップさせたい人は、ぜひこちらを参考にサイトトランスレーションに挑戦してみてくださいね。
サイトトランスレーションとは?
サイトトランスレーションとは、「サイトラ」とも呼ばれる同時通訳者がトレーニングに用いる翻訳の手法です。
英文を意味のかたまり(チャンク)ごとにスラッシュを入れ、その区切りごとに音読しながら日本語に訳していくという形で行います。
サイトトランスレーションは、英語を日本語の語順に直すのではなく、英語の語順のままで理解をすることを目的としています。そのため、英語を英語のまま理解できるようにもなるのです。
スラッシュリーディングとの違い
サイトトランスレーションに似た手法に「スラッシュリーディング」というものがあります。英語学習者なら、スラッシュリーディングも聞いたことがあるかもしれませんね。
スラッシュリーディングも通訳者を目指す人が行うトレーニングのひとつです。
スラッシュリーディングもサイトトランスレーションのように、チャンクごとにスラッシュを入れる手法ですが、スラッシュリーディングの場合は「リーディング」とあるように、ただ英語を英語のままで、意味を理解しながら読んでいくだけです。
「トランスレーション(翻訳)」という言葉が入ったサイトトランスレーションとの違いは、翻訳をするかしないかということですね。
サイトトランスレーションを取り入れるのか、スラッシュリーディングを取り入れるのは、英語を学習する目的や好みで決めると良いでしょう。
サイトトランスレーションの効果
サイトトランスレーションを行うと、英語を英語のままで理解できるようになるというのは前述のとおりです。
しかし、そのほかにもサイトトランスレーションにはさまざまな効果があります。ここからはそんな効果について、紐解いてみましょう。
リーディングスピードが速くなる
サイトトランスレーションを日常的に行っていると、自然とリーディングスピードが速くなっていきます。
これは英語を英語の語順のまま翻訳しながら読み進めることで、文章全体を翻訳しようとしたり、理解しようとしたりするよりも、時間がかからないからです。
また、サイトトランスレーションを何度もやっていると、次第に英語を読むことに慣れてくるため、自然とリーディングスピードが上がっていきます。
読解力がアップする
リーディングスピードが上がることにも関係していますが、サイトトランスレーションを行っていると、英文の読解力がアップします。
これは、サイトトランスレーションでは英文を読みながら日本語への翻訳も行うため、深く意味を理解することになるからですね。
また、文章単位ではなく意味のかたまりごとに分けて理解していくというのも、読解力につながります。
一文だと長すぎて理解が難しくても、短いかたまりごとに分けて理解していけば、全体の意味がわかるようになるでしょう。
リスニングでの理解力もアップ
サイトトランスレーションはリーディング力に関係する学習方法のように思うかもしれません。しかし実は、リスニングにも効果があるのです。
サイトトランスレーションではリスニングは行いませんから、英語の音を聞くというスキルはあまり向上しないでしょう。
しかし、英語を聞いて理解するという点では、サイトトランスレーションが大きな効果を発揮します。
サイトトランスレーションを続けることで英語を短いかたまりごとに理解する癖がつくため、リスニングでも短いかたまりごとに、英語を英語の語順のまま理解していくことができるようになります。
リスニング音源が速すぎて理解が追いつかないと思っていた人は、サイトトランスレーションによる効果をかなり感じるはずですよ。
英語を英語のまま理解できるようになる
ここまでにも触れていますが、サイトトランスレーション最大の効果と言えるのが、「英語を英語のまま理解できるようになる」ということでしょう。
これができることで、前述のとおりリーディングやリスニングにも生きますし、英語で会話をしているときにも相手の言っていることが瞬時に理解できるようになり、コミュニケーションがスムーズになります。
「英語を英語のまま理解する」ということがよくわからない人は、サイトトランスレーションに挑戦してみれば、別世界が広がるかもしれませんよ。
サイトトランスレーションのやり方
ではここからは、サイトトランスレーションの基本的なやり方を解説します。
適した英文さえあればすぐにでも始められますから、サイトトランスレーションに興味がある人は、こちらを参考にチャレンジしてみましょう。
1. まずは自分のレベルに合った英文を準備!
サイトトランスレーションでは、英文が必須となります。ですからまずは自分のレベルに合った英文を準備しましょう。
目安としては、読んでいて7〜8割くらいは理解ができるものが望ましいです。
教材の種類は、リーディング教材でも良いですし、サイトトランスレーションやスラッシュリーディング向きの教材でも構いません。
サイトトランスレーションとスラッシュリーディングは、音読や翻訳をするかしないかという違いしかないため、どちら向きの教材を入手しても、どちらもトレーニング可能です。
また、答え合わせ用に日本語訳が入手できるなら、英語のニュース記事などを使っても良いですね。
2. 意味のかたまり(チャンク)ごとにスラッシュを入れる
サイトトランスレーションのトレーニングを始める前に、選んだ英文にスラッシュを入れていきます。このスラッシュの入れ方がわからない人もいるでしょう。
そこで以下に例を示していますので、こちらを参考にスラッシュを入れてみましょう。
I prefer Japanese food/ to Korean food / because I don’t like / spicy food.
たとえばこんな感じです。スラッシュを入れる回数に厳密な決まりはなく、自分ができる範囲で構いません。サイトトランスレーション初心者の場合は、上記のように3~5単語ずつスラッシュを入れるとやりやすいです。
慣れてきたらもう少し1つの区切りを長めにすると良いでしょう。上記の文章を例にするなら以下のような感じです。
I prefer Japanese food to Korean food / because I don’t like spicy food.
3. スラッシュごとに音読し日本語訳をする
スラッシュを入れたら、スラッシュごとに区切って音読をし、日本語訳をします。
上記の例文を使った場合、どのような順番でトレーニングを行うのか、下記の例をみてみましょう。
音読 | 翻訳 |
---|---|
I prefer Japanese food | 私は日本料理の方が好きだ |
to Korean food | 韓国料理より |
because I don’t like | なぜなら私は好きではないから |
spicy food. | 辛い食べ物が |
訳し方は意味さえ合っていればある程度自由ですが、上記のような流れですべてを声に出して行います。
日本語だけを見ると語順が不思議な感じですが、意味はわかりますよね。これがサイトトランスレーションの手法です。
最初は不思議な感じがするかもしれませんが、慣れれば英語の語順ですべてを理解できるようになるので、何度か試してみてくださいね。
サイトトランスレーションをするときの注意点
サイトトランスレーションをする際には、ただ何も意識をせずに行ったり、自己流のやり方を取り入れたりすると、その効果があまり感じられないかもしれません。サイトトランスレーションには一定のルールがあるからです。
そこで、サイトトランスレーションをするときの注意点についてもまとめてみました。
実際にチャレンジしてみるときには、こちらの注意点についても意識をしながら進めてみてくださいね。
自分のレベルに合った英文・教材を選ぶ
サイトトランスレーションを行う際に非常に重要なのが、英文・教材選びです。
サイトトランスレーションに使う英文は、自分の今のレベルに合っていなければなりません。簡単すぎても英語力の向上にあまり効果を発揮しませんし、難しすぎると訳すことが不可能になってしまいます。
ですから、サイトトランスレーションに使う英文を選ぶときには、読んでいて7〜8割は理解できるものを選びましょう。自分の今のレベルに合った長文読解の教材などだと、レベルが合いやすいですよ。
答え合わせができる和訳を用意しておく
サイトトランスレーションを行うときは、答え合わせができる和訳を用意しておきましょう。長文読解などの教材を使う場合は、和訳はついているでしょうから問題はありません。
ですが、ニュース記事などを使う場合は注意が必要です。和訳がなければ、自分が訳した内容が合っているかどうか知りようがなく、トレーニングの意味がなくなってしまいます。
ちなみにサイトトランスレーションやスラッシュリーディング用の教材・英文を選べば、チャンクごとの和訳がついていることが多いです。チャンクごとの和訳が欲しい人は、そうした教材を探してみましょう。
後戻りは禁止!
サイトトランスレーションをしている際、たとえ意味を見失ってしまっても、後戻りはしないようにしましょう。とにかく前へ前へと進んでいきます。
意味がわからなかったところや、上手に訳せなかった部分はあとから答え合わせのときにチェックするようにしましょう。わからなかった部分に印をつけておくと、あとからチェックしやすいですよ。
日本語の語順で訳さない
サイトトランスレーションをしているときは、日本語の語順になおしてしまわないように気をつけましょう。
上記の例でも見たように、英語と日本語は語順が全く違いますから、チャンクごとで翻訳していくとなんだか気持ち悪い感じ、不自然な感じがするかもしれません。
しかし、慣れれば英語の語順のまま翻訳するということが自然とできるようになっていきます。
最初は一文単位で意味が理解できなかったとしても問題ありませんから、チャンクごとにそのままの順番で、後戻りをせずに翻訳するということを鉄則としてください。
必ず音読+日本語訳のセットで
サイトトランスレーションを行う際、「目で見て読んで頭の中で翻訳する」という手法でも良いと思うかもしれません。
しかし、瞬発力を養うためには、音読と日本語訳を声に出すことを癖づけましょう。
復習をかかさずに
サイトトランスレーション中に意味がわからなかった表現や語彙は、あとから復習して意味がわかるようにしておきましょう。
この復習を行っておかなければ、せっかくサイトトランスレーションをしても、わからない表現や語彙が多いままになってしまうため、あまり効果が感じられないかもしれません。
復習をしておけば、同時に語彙力も鍛えることができるので、一石二鳥ですね。
トレーニングを習慣化する
サイトトランスレーションは時々やっただけではあまり効果が出ません。ですから、トレーニングを習慣化することも大切です。
目安としては週に2回以上は取り組みたいですね。もちろん、毎日やればそれだけ上達スピードも速くなります。
ただし、頻繁にサイトトランスレーションを行うかわりに、1回のトレーニングは短時間でもOKです。
たとえば、
サイトトランスレーションと答え合わせをする日→わからなかった語彙を復習する日→休憩の日
というサイクルで行えば、1回につき20〜30分くらいでトレーニングが終わるはずです。無理のない範囲で習慣化をするようにしましょう。
サイトトランスレーションで英語の理解力を身につけよう!
サイトトランスレーションは、通訳者を目指す人にとっては非常に有効なトレーニング方法です。
しかし通訳者になる予定がない場合も、英語への理解力を養うという点において、高い効果を発揮します。
特に読解力やリスニングでの理解力が足りていないと感じている人は、ぜひサイトトランスレーションを学習に取り入れてみてくださいね。