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「1人1台のタブレットPCで日本の教育が変る」、MSが子どものPC利活用を促進

教育ICT インターネット

マイクロソフトの樋口泰行社長
  • マイクロソフトの樋口泰行社長
  • 立命館大学の陰山英男教授
  • マイクロソフト 執行役 常務 パブリックセクター担当の大井川和彦氏
  • 他国との比較(PCの所有率)
  • 海外での取組み
  • 業界を超えたパートナー協業
  • Innovative Education Program
  • Innovative Schools Program
 マイクロソフトは6月2日、「子どものPC利活用促進に向けた取り組み」に関する記者発表会を開催した。先進国において、日本の若年層におけるPC普及率は低く、教育現場での活用も進んでいない。そんななか、マイクロソフトでは、小・中学生、高校生などの子どもたちが、教育機関や家庭においてPCを利活用する環境を構築するため、教育機関やPCメーカー、教育関連ソフトウェア、サービス提供企業など業界の枠を超えたパートナー連携を拡大していく。

 挨拶に立ったマイクロソフトの樋口泰行社長は、日本の若年層では、携帯をヘビーに使う一方、教育目的で使われるPCの普及が遅れている現状を説明。市場では教育、パブリック、医療の分野で、他の先進国に比べてPCの普及が遅れていることも付け加えた。また、日本ではITや先進技術のデメリットの部分が注目されて利用を控える風潮もあり、これは人材の競争力、さらには国の競争力にも影響があるのではないかと指摘した。

 PC所有率の他国との比較では、日本は5人に1台の割合となっており、アメリカ(1.6人に1台)の約1/3、韓国(2.4人に1台)の約1/2と、普及が遅れていることを示す数値が紹介された。樋口氏はこれを「国のICT予算が少ないことや、利活用のシナリオが不足していること」などが原因であると説明した。

 同社は、社会貢献活動として、グローバルで教育分野におけるさまざまな取組みを行っているとし、シンガポール、アメリカ、イギリス、ポルトガルでの事例を紹介した。ポルトガルでは、官民連携により教育PCの普及支援を行う「マゼランプロジェクト」として、年齢に応じた3種類のPCと50以上の教育コンテンツを提供。価格を通常の平均1/4程度で、所得に応じて設定し、低所得世帯には無料とし、約100万人の小中学生(小学校90%、中学校40%)にPCを配布したという。これにより、「家庭と学校でのよりより指導連携、子どものICTリテラシー、コミュニケーション能力の向上、国内IT産業の活性化に貢献できた」と樋口氏は言う。なお、日本においても、青山小学校、和歌山市でのタブレットPCを使った取組みの事例があるという。

 これのら状況を踏まえマイクロソフトでは、公的機関、教育機関、PCメーカー、教育関連ソフトウェア、サービス提供企業など、業界を超えたパートナーと連携して、PCや学習環境のさらなる充実を進めていくという。公的機関との連携としては、すべての小中学生がデジタル教科書・教材をもつ環境を整えることを目的とする「デジタル教科書教材協議会」(7月設立)の発起人となり、活動を行っていることを紹介した。なお、発起人メンバーには、立命館大学の陰山英男教授、ソフトバンクの孫正義社長、慶應義塾大学の中村伊知哉教授らが名を連ねる。

 続いて、「デジタル教科書教材協議会」の発起人で陰山メソッドや百ます計算で知られる陰山英男氏が登壇した。陰山氏は「子どもたちが1人1台のタブレットPCをもつことで、日本の教育が根本から変わっていく。シンガポールや韓国から見たら日本は抜き去られている状況だが、ここから大逆転できる最後のチャンスがここにあると思っている」と語り、「子どもたちが小学校に入学したときに日本政府からタブレットPCが与えられ、お道具箱にタブレットPCが入っているようなことを妄想のごとく考えている」と教育者の視点から、学校教育におけるPC活用の必要性を紹介した。

 また、PC利活用の例として、自分のPCに小学校1年生から高3年生までの全教科の教科書を保存することで、学年をまたいで予習や復習が可能となること。またeノートとして使い、問題に解答し、システムで丸つけまでを行うことで、日本の教育現場での先生不足の問題をも一部解決し、学習効率を上げる効果があることを紹介した。また、たとえば理解の難しい鶴亀算の説明については、アニメーションであれば5分程度にまとめることができ、それを繰り返し視聴することで学習効果を上げられるのではないかといったアイデアも披露した。

 陰山氏は、「今までの教育のうえに新しい技術をのせるのではなく、未来を見つめ、世界をリードするようなデジタルを使った教育システムとはいったい何なのかを、国家戦略において考えるべきではないのか」、また「日本の社会のすべての力を活かして、最先端のデジタル教育推進に力をお貸しいただきたい」と語り、締めくくった。

 続いて、マイクロソフト 執行役 常務 パブリックセクター担当の大井川和彦氏から、発表内容についてデモを交えた説明があった。

 まず「初等中等教育分野の教育機関におけるPC利活用促進に向けた取組み」として、「Innovative Education Program」(イノベーティブ エデュケーション プログラム)、教育機関・子供向けソフトウェアツールの提供が紹介された。

 「Innovative Education Program」は、eラーニングやICT研修教材の提供、ICT活用実践コンテストを実施する「Innovative Teachers Program」、教育関係者の情報共有や学び合いの場を提供する「Innovative Teachers Day」(8月3日東京、8月6日大阪で開催予定)、ICTを軸とした教育革新のための21世紀型先進教育環境づくりの提示に取り組む「Innovative Schools Program」の3つの取り組みからなる。

 教育機関・子供向けソフトウェアツールとしては、Office製品のWord 2010、PowerPoint 2010、OneNote 2010を子どもに使いやすくする無償のアドインツール「Dr. シンプラー 2010 Light」を提供。同ツールは、2009年11月より提供されている「Officeきっず2007」をOffice 2010対応とするとともに機能強化したもので、学年にあわせた漢字の表示や、ソフトウェアキーボードや音声読み上げソフトへの対応などが可能となる。また、学校行事や授業で使えるポスターや絵日記、感想文などのテンプレート集が200種類追加されている。Word、PowerPoint向けには6月30日、OneNote向けには今夏より提供される予定だ。また、教育機関向けプレゼンテーション用ツールとして、PowerPoint利用時に、複数(25人まで)の子どもがPC1台でマウスを同時に操作することで、先生がインタラクティブに授業ができる無償アドインツールも提供される。これにより、PCが不足する環境においても、参加型の授業が可能となる。いずれも教育機関向けのサービスとなる。

 「子ども向けのPC活用促進に向けた取り組み」としては、家庭で子どもが安心してPCを活用できるように、Officeや子ども向けのOfficeアドオンツール、セキュリティ対策ソフトウェアを従来より低価格で提供する「児童生徒向けライセンスプログラム」(7月中旬より)、親子のためのPC利活用サイト「マイクロソフト きっずナビ」の2日開設、ハードウェアメーカー、教育関連ソフトウェアやオンラインサービスを提供するパートナー企業、塾などの学習サービスを提供している教育機関などとの連携を展開していくことが説明された。

 最後に樋口社長は、創業者であるビル・ゲイツ氏が社会貢献活動に専念していることを紹介したうえで、「マイクロソフトはソフトウェアやITの分野で成長してきた会社であるので、その得意分野で社会に恩返しをするという強い考えを持っている」、また「これからこの大きな問題に向けてパートナーとともに頑張っていく」とし、発表を終えた。

《田村麻里子》

※ この記事は、RBB TODAYにて6月3日に配信された記事を転載したものです。
《RBB TODAY》

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