今後の教育情報化とフューチャースクール…東工大名誉教授 清水康敬氏

 東工大名誉教授 清水康敬氏の講演より、今後の教育の情報化につて、さらに総務省が推進するフューチャースクールの取組に関する内容を紹介する。

教育ICT 学校・塾・予備校
東京工業大学 監事(常勤)・名誉教授の清水康敬氏
  • 東京工業大学 監事(常勤)・名誉教授の清水康敬氏
  • フューチャースクール推進事業
 教育関係者向けセミナー&展示会「New Education Expo 2010」(東京会場:9月22日~24日)で22日、東京工業大学 監事(常勤)・名誉教授で、総務省の「ICTを利活用した協働教育推進のための研究会」の座長を務める清水康敬氏が、「これからの教育の情報化の在り方」と題する基調講演を行った。

 内容としては大きく2つ--電子黒板(デジタル黒板、インタラクティブホワイトボードともよぶ)活用と効果、およにび今後の教育の情報化につて説明した。ここでは今後の教育の情報化につて、さらに総務省が推進するフューチャースクールの取組に関する内容を紹介する。

◆情報化に主体的に対応する力

 「臨時教育審議会第二次答申」(昭和61年4月)において、現行の「情報活用の実践力」を中心にして「情報活用能力」という総称が命名。「つくば科学万博」翌年のことである。情報に対する科学的な視点や情報社会で必要な姿勢、態度の要素が追加され、平成2年には情報教育の内容が定義された。さらに平成9年には今に続く情報の目標として3つの観点が定義され、「情報活用の実践力」「情報科学的な理解」「情報社会に参画する態度」が重要な位置付けとなり、現在に続く。清水氏は情報教育25周年に、「情報活用能力」を「情報化に主体的に対応する力」に置き換え、3つの観点を各々「情報を実践的に活用する力」「情報を科学的に扱う力」「情報社会に参画する力」と言い換えることを提案する。

◆全国10の小学校で実証実験

 総務省が実施する「フューチャースクール推進事業」の実証研究(「東日本地域におけるICTを利活用した協働教育の推進に関する調査研究」および「西日本地域におけるICTを利活用した協働教育の推進に関する調査研究」)での取組についても紹介された。東日本では石狩市立紅南小学校(北海道)、寒河江市立高松小学校(山形県)、葛飾区立本田小学校(東京都)、長野市立塩崎小学校(長野県)、内灘町立大根布小学校(石川県)、西日本では大府市立東山小学校(愛知県)、箕面市立萱野小学校(大阪府)、広島市立藤の木小学校(広島県)、東みよし町立足代小学校(徳島県)、佐賀市立西与賀小学校(佐賀県)の計10の公立小学校で、下記の環境を構築し、実証実験を行うという。

・全児童、全学級担当に1人1代のタブレットPCを配備
・全普通教室にインタラクティブホワイトボード(電子黒板、デジタル黒板ともよぶ)を配備
・校舎内外で通信可能な無線LAN環境の構築
・学校ポータルや無線小型端末を活用して学校と家庭との連携を図るための環境整備
・クラウドコンピューティング(インターネットを介してサービス等を利用する形態)を活用した協働教育プラットフォームの構築

 清水氏は先の電子黒板の取組と同様にここでも、「すぐにできることから始め、ステップバイステップで教員の負担にならないことから始めてほしい」「スタート時の研修が重要」と強調する。またこの取組では、「協働教育」というのが1つのキーワードとなっており、「実際に便利なツールを、自由に使ってもらうなかで(児童がお互いに学び合い、教え合う)協働教育になることが重要」であると説明する。現状は総務省主体で進められている同事業だが、「来年度には文部科学省と総務省の共同プロジェクトとして拡大させていきたい」と言う。さらに「求められることは全力で支援して、良い形で発展してほしい」と語り、講演を終えた。

 「フィーチャースクール推進事業」では、西日本を富士通総研、東日本をNTTコミュニケーションズが担当する。

 教育現場に限らず今や生活の様々なシーンに取り入れられているICT。環境整備の地域格差、デジタル導入の賛否など問題が山積な教育ICTであるが、導入効果などの具体的なデータを揃え、子どもたちのための前向きな議論を重ねて、よりより教育のために、活かしていくことが必要ではないだろうか。
《田村麻里子》

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top