「子どもは人に任せろ」~ホリエモンが語る新しい日本の教育論

 「ホリエモンが語る新しい日本の教育論」と題した緊急セミナーが2月10日、六本木ヒルズのヒルズアカデミーにて開催された。

教育・受験 その他
堀江貴文氏
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 「ホリエモンが語る新しい日本の教育論」と題した緊急セミナーが2月10日、六本木ヒルズのヒルズアカデミーにて開催された。講師はホリエモンこと堀江貴文氏。就職超氷河期といわれる今、求められる子育て、教育方法は? エキサイト教育を企画・運営するスーパーウェブが、数々の既成概念を打ち破ってきた堀江氏を招き、開催した。

◆ゆとり教育の誤りが招いた日本の危機

 セミナーは、まず日本経済の危機的な状況をどうとらえるのか、そして大企業神話は崩壊したのか、という問いかけに始まった。

 堀江氏は、「この危機的な状況では画一的な教育をしていてはだめだ」と言う。現在の教育の問題点として、「子どもに、まわりと同じことをすることをよしと教えている」「運動会などで順位付けや競争を否定する」「ゆとり教育の弊害で、勉強もボトムにあわせるカリキュラムになっている」ことなどを挙げた。続けて、本来“ゆとり教育”は、詰め込みをやめて、個人の能力に合ったカスタマイズの教育を目指すことにあったはずだが、勉強時間を減らすという間違った選択をしてしまったと指摘する。

 現在、日本企業が国際競争力を失って、過去の資産を食いつぶしているのは、このような教育をしてきた結果だという。

 大企業神話については、まず「日本企業」という考え方をやめようと主張する。たとえばソニー株の半分は外国人、もしくは外国企業がもっているが、これを日本企業と呼ぶのかとの疑問を呈し、オリジンは日本かもしれないがグローバルではどの国の企業かは優先事項ではないとした。関連して、たとえばトヨタのような大企業の将来はどうかという質問については、現在トヨタ自動車はグローバル企業の中では32位と、20位以内に入っていない。EV時代になると、エンジンからモーターになり、日本企業のコア技術が通用しなくなる。モーターはエンジンよりコンピュータシミュレーションしやすく、ITによっていろいろな企業が参入してくるが、IBMがPC事業部を売却してSIerになったように、トヨタにこのパラダイムシフトが受け入れられるかとの疑問を呈した。

◆給料は高いが教育は低い日本人

 続いて学歴神話は今後も続くのかに議論が移った。堀江氏自身は就職活動をしたことがないので学歴をメリットに感じた経験はないが、唯一、会社をつくるとき、東大生というと信頼度が上がったことはメリットだったと振り返る。学歴神話は薄れていくものとしながら、企業の人事部制度があるかぎり、学歴重視や学閥はなくならないのではないかと述べた。

 日本の企業が変わらなければ学歴もそれなりに意味を持つかもしれないが、グローバルに見れば、中国の精華大学の優秀な学生が日本人の給料より低い賃金で採用できるなら、普通の経営者は日本の学生を選ばないだろうとした。日本の企業や学生は、給料は高いが教育は低い、競争力がない、いわば没落貴族のような状態にあるという。P&Gという会社は極東のヘッドクォータを日本からシンガポールに移し、ネスレは日本でのCM放送をやめている。これらは、グローバル企業が、すでに日本を成長市場とはみなしておらず、メンテナンスだけでよいと考えていることの現われだと述べ、日本はこの危機的な状況を真剣に考えなければならないとした。

◆子どもは人に任せろ

 このような時代に、親たちはどのように子どもを育てればよいのだろうか。堀江氏によれば、「人に任せる」発想が必要だという。現在の親や教育者は知識が古いといわざるを得ず、よいコーチ、プロフェッショナルにまかせたほうが良いとのことだ。どのように古いのかについては、現在の6・3・3の教育制度の基本は富国強兵の明治時代に作られたものだからと説明する。ドラッカーが日本で流行るのは、和を重んじ、チームプレーを尊重する古い教育が影響しているからとし、今はそういう時代ではないと断じた。ネットやメディアが発達し、情報通信革命ともいえる現状で、価値観も多様化している。画一的で和だけを尊ぶ教育は通用しなくなってくるとの認識を示した。

 同時に、親はあまり子どもに干渉しないことも重要だという。また、子どもの人生なので、親が自分の夢を託すといったこと、特に自分ができなかったことを託すといった行為は子どもにとって負担でしかないと批判した。堀江氏がライブドアを創業したとき、東大のアルバイト学生に入社を勧めたら、親が「そんな会社に入れるために東大に入れたのではない」と怒鳴り込んできたというエピソードを紹介した。そのときライブドアに入った社員は、2年後の上場で10億円は手にしているそうで、これは親の間違った指導だったのではないか、ということだ。

◆選択の幅と自由度が必要

 具体的にどんな教育システムが考えられるかとの質問には、「指導要綱の緩和により学校ごとの教育内容に幅と自由度をもたせること」「教育バウチャー制度のような受ける側の選択肢を広げること」などが効果的だと述べた。また、海外のように飛び級制度もよいと言う。自身は、18歳まで大学に入れないのならと、中学、高校ではあまり勉強をしなかったという。同様に才能があればゴルフの石川遼選手のように若くてもプロになるべきだとし、間違ったアマチュアリズムが、ここでも子どもの才能の芽を摘んでしまっていると述べた。

 貧しい時代は家族の役目やつながりが重要だったが、そうではない現在は個の時代であり、親や家族の役目やあり方も変わってきているはずであるとし、親の意識改革も必要だと言う。子どもに対して経済的な支援はするが、やりたいことは基本的にやらせるほうが良いとする。すぐにやめるものもあるだろうが、その中から自分の得意分野や才能を活かせることが見つかると言うのだ。

◆自ら考え、表現し、行動する力

 質疑応答では、学歴や資格を否定しないが、それに頼れるかというと決してそんな時代ではないと述べ、自ら考え、それを表現でき、行動できる力が重要だとした。これらのスキルは学力だけでなく、メール、ブログ、SNS、あるいはネット上や友人どうしのディベートを利用して磨くこともできる時代だと述べて講演を終えた。
《中尾真二》

中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。エレクトロニクス、コンピュータの専門知識を活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアで取材・執筆活動を展開。ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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