【国際教育】世界大学ランキングを懸念、明大で国際シンポジウム

 明治大学の駿河台キャンパス、リバティータワーで国際シンポジウムが3月9日に開催された。世界大学ランキングが日本の大学に与える影響を含め、世界の大学の構造変動に伴う国内大学のあり方について議論した。

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明治大学国際教育研究所の開設記念国際シンポジウム、世界大学ランキングと大学の「世界水準」
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 明治大学の駿河台キャンパス、リバティータワーで国際シンポジウムが3月9日に開催された。世界大学ランキングが日本の大学に与える影響を含め、世界の大学の構造変動に伴う国内大学の在り方について議論した。

 同イベントは、明治大学国際教育研究所の開設記念国際シンポジウムシリーズの2回目。今回のシンポジウムでは、新興国、欧州、アジア・太平洋それぞれの視点からランキングや世界水準の大学形成に関連した研究を行ってきた学者3名を海外より招待。講演やパネルディスカッションを通じ、国内の研究者と議論を交わした。

 世界銀行のJamil Salmi(ジャミル・サルミ)博士の基調講演では、世界大学ランキングが大学での教育に与える影響について発表。サルミ氏によると、ランキングは大学の運営、国の教育政策などに大きな影響をもたらすとし、高等教育機関の本来の目的を問うた。世界の主要大学ランキングでは、常に欧米の大学が上位にランクインされるが、ランクの高い大学が必ずしもほかの大学より社会に貢献しているとは限らないとサミル氏は説明する。

 現在のランキングは各大学の世界的評判と、研究論文の被引用数をポイント化し、ランク付けしたものが主流で、生徒に対する教育の質、サポート体制、学習支援体制などはランキングに影響しないという。そのため、経済力があり、世界的に著名な研究者を集めることのできるエリート校が上位にランクインされる。さらに、豪州政府などは、国内の大学のランクを上げるためにエリート校を中心に資金を配分し、大学間の格差が生まれるという。

 豪州以外でもランキングは国や大学に危機感を与えている。Ellen Hazelkorn(エレン・ヘーゼルコーン)博士によると、被引用数の多い論文を発表する研究者には、授業よりも研究に専念させ、研究発表は英語の論文集に掲載させるなどという方針をとる大学もあるという。また、理工系の研究や、学部生よりも大学院院生を集中的に支援するなど、大学のランキングを上げる試みは必ずしも学生のメリットにならないようだ。

 同シンポジウムの参加者は、ランキング向上のための高等教育を揃って懸念する。問題とされているのは、世界大学ランキングの結果を元に大学や国が教育政策を作り上げることだという。投資が偏り、ランキングで評価されない研究は行わず、著名な研究者には授業をさせないなど、ランクが上がっても失うものは多い。

 一方で、ヘーゼルコーン博士も認めるとおり、国内と海外の大学を視野に入れる現代の高校生や保護者には、大学ランキングは必要不可欠な情報となりつつある。膨大な情報の中から最適な大学を選択するのは難しく、ランキングは扱いやすく整理された情報として重宝される。日本の大学がランクアップに集中し、学生への教育をおろそかにしては本末転倒だ。だが、世界中の大学がランクを意識し、切磋琢磨するのは悪いことではないだろう。世界大学ランキングを非難し、独自のランキングを作ることよりも、学生や保護者にわかりやすい方法で、整理された大学情報を届ける努力に時間を費やしてほしいものだ。
《湯浅大資》

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