【e絵本】たいやきくんで経験する「小さな死」

 今回紹介するのは、アイフリークの電子絵本アプリ「こえほん」内で配信中の作品、「およげ! たいやきくん」だ。iPhone/iPad対応、250円。お母さん・お父さん世代にはおなじみの、同名の童謡が元となっている。

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およげ! たいやきくん
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 毎日同じことばかりの繰り返しで、嫌になっちゃう時ってないだろうか? 筆者は朝の通勤電車で、週に1度は思う。「あ~っ、いっそ外国にでも飛んでっちゃいたい!」って。

 今回紹介するのは、アイフリークの電子絵本アプリ「こえほん」内で配信中の作品、「およげ! たいやきくん」だ。iPhone/iPad対応、250円。

 お母さん・お父さん世代にはおなじみの、同名の童謡が元となっている。1975年に子門真人が歌った原曲は、サラリーマンの日常をも彷彿とさせて、どこか物悲しい。絵巻物を見せるように聞き手に場面を想像させる歌詞が、絵本アプリとして再構成された今も、その魅力を存分に発揮している。

 親が子どもに絵本やアプリを選ぶとき、知識が身につくとか脳の活性化とか、「効能」の部分をとかく期待しがちなのだと思う。けれど、ぼ~っと眺めていい気分になる、というそもそもの楽しみ方も、もっと見直され、子育てのシーンに取り入れられるべきではないだろうか。このアプリは、そんな使い方に向くものの1つである。

 日常にむしゃくしゃした子が、たいやきくんに自分を投影し、海に飛び込み気ままに暮らして、釣り上げられて食べられる。頭の中で彼らが体験するのは「冒険」、そして「小さな死」だ。

 言葉にドキリとする方もいるだろう。が、この「小さな死」の楽しみを知ると、気持ちのコントロールが上手くなるように筆者は思う。むしゃくしゃした感情を主人公に託して捨て去り、現実に戻った自分はリフレッシュする…。原曲が一大ヒットを記録するほど人気を得たのも、こんな要素が関係しているのではなかろうか。

 たいやきくんがアプリの中で食べられているうちは、筆者も朝の電車をやり過ごせることだろう。
《てらしまちはる》

てらしまちはる

ワークショッププランナー/コラムニスト/絵本ワークショップ研究者。東京学芸大学個人研究員。2022年3月に単行本『非認知能力をはぐくむ絵本ガイド180』(秀和システム)を刊行。絵本とワークショップをライフワークとしている。アトリエ游主宰。

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