【読書感想文 3/3】感想文は「自己紹介」として捉えるべき

 小学生の夏休みの課題で親子ともに頭を悩ませるもののひとつに読書感想文がある。どんな本を選べばいいのか、何を書けばいいのか、といった基本的な問題から具体的なテクニックまで、個別指導教室 SS-1の代表小川大介氏に聞いた。

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中学受験 個別指導のSS-1代表、小川大介氏
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 小学生の夏休みの課題で親子ともに頭を悩ませるもののひとつに読書感想文がある。どんな本を選べばいいのか、何を書けばいいのか、といった基本的な問題から、読書が苦手な子どもにどう読書感想文を書かせるのかなど、課題に対する姿勢から具体的なテクニックまで、個別指導教室 SS-1の代表小川大介氏に聞いた。

本の選び方と読書段階においての注意点などを小川氏に語っていただいた「読書感想文対策」連載の第3弾として、今回は、編成や書き方の具体的なテクニックについて解説していただいた。

◆読書感想文は「自己紹介」として捉えるべき

 実際に読書感想文を書くとなると、何を書けばよいのか、何から書き始めればよいのか悩む子どもも多いのではないだろうか。多くの場合、感想より本のあらすじが主体になった作文になってしまうことが少なくない。

 作文で大切なのは、本の内容よりも読者自身のことだと小川氏は話す。読書を通じて自分が何を感じたか、自分ならどうするか、そして読後に考えが変わったこと、変わらなかったことなどを書けばよいと説明する。重要なのは、本を通じて子どもの世界を広げることであり、自分をいかに表現できるかということ。この考えに基づくならば、図書の選定などに親や先生の介入は最小限でよく、どの本がためになるか、といったことはあまり考えなくてよいとするのも小川流の考え方だ。

 しかし、あまり子どもに自由に書かせると、成績の評価につながらず、受験対策という意味ではマイナスにならないのだろうか。この疑問に対しても小川氏は、小学生では特に配慮する必要はないと話す。それよりも、本嫌いや作文嫌いになることのリスクを考え、読書と受験は切り離してもよいと解説する。また、読書感想文を通じて自分を表現する力をつけることは、面接でも有利に働くという。

◆3ステップで感想文を組み立てる

 さて、ここまで小川氏が示したアドバイスは、読書感想文に対する考え方や取り組み方などだが、より実践的なアドバイスや具体的なテクニックにもコメントしていただいた。小川氏はSS-1式読書感想文ツールという教材を開発し、その使い方や感想文の書き方を指導するDVDを出していることもあり、ツールの内容も含めて解説していただいた。

 まず、読書感想文を書くためには、3つのステップで考えるとよいという。ステップ1は、「材料の拾い出し」、ステップ2は「材料をふくらませる」、ステップ3は「響く流れに仕上げる」となっている。

 ステップ1では、本との出会い、本のあらすじなどを箇条書きや短い文章で書き出す。さらに読書段階での秘策として解説していただいたメモ書きや付箋付けといった、印象に残った個所、理由、読んでみて発見したこと、考えを改めたこと、などを感想文の素材とする。

 ステップ2は、ステップ1で書き出した材料を6W1Hでふくらませる作業だ。ステップ2でポイントとなるのは、物語の過去や未来についても考えること。主人公はこの話の前にどのような経験をしていたのか、どのように考えていたのか、その考えが物語の最後でどのように変わったのか、変わったとして、その主人公は今後どのような人になるのだろうか、といった分析や推論を働かせると、子どもが自分との対比を書くときの目安になるという。

 最後のステップ3では、ステップ2までにブラッシュアップした材料を、基本的な感想文の流れ(テンプレート)にあてはめて構成していく作業となる。基本的な構成は、「本との出会い」「本の紹介」「印象に残った場面」「自分の気持ち」「本の内容に対する考え」などと続く。要所要所に会話調や心情の吐露などを織り込み、人に読ませる工夫ができると、よりレベルの高い感想文になるという。

 ステップ3では、基本的な構成のテンプレートも提示されており、テンプレートに沿って書くだけでも一定のクオリティの感想文が書ける。しかし、このツールの目的は、子どもたちに読書や作文を自由に書かせるだけでなく、一定の枠組みを提供するとで書きやすくすることにもある。「まっ白いキャンバスだと何を書いていいかわからないかもしれないが、そこに枠線を引いてコマを4つ作るだけで、子どもたちは絵を描き始める。それと同じで、簡単なガイドを示してやるためのツール」だと小川氏は説明する。

 さらに実践的なテクニックとして、読書感想文の文字数の指定が原稿用紙2枚だとしたら、本との出会い、紹介、自分の印象までを約1枚に収めるのが目安だと話す。そして、自分の考えや思ったこと、著者や主人公への思い、今後の自分など、自分を表現する部分で残りの1枚を書き上げるのが理想的な構成だという。

 この目安でいくと、本との出会いに100〜150文字、本の紹介やあらすじと印象部分で残りの300文字前後という計算だ。そのためには、本の紹介やあらすじはかなり内容を絞って書く必要がある。すべての内容を網羅できないので、どこを書くかは、ツールで書き出した素材をベースに考えることになるだろう。

◆無感動や無反応な感想文は避けるべき

 本を読んだ感想といっても、実際の子どもの感情はそれほど大きく影響されていないかもしれない。本が子どもに与えた、感情のわずかな変化をどう捉えて書くかが重要だと小川氏は話す。また、面白くなかったという批判のみの内容も良くない。面白くなかったら、なぜそう思ったのか、そう思った自分はどうなのか、など自己分析や自己批判までできれば、面白くなかったという感想文を書くこともできると説明する。

 親の意識として、正しい読み方、感じ方を求めるのではなく、作者の意図するところとは関係なくても、子どもの関心や感想が表現されていればよいというのが小川氏の主張だ。

 むしろ、感想文による自己表現によって子どもの考え方や姿を知ることにつながり、それを親の体験や話につなげることができれば、子どもとのコミュニケーションが進み、共感も得られるという。小川氏の考えでは、親の失敗談を共有できる親子のコミュニケーションは一般的に良好だといえるが、自分の成功話しかしない親の場合、子どもはかえって委縮したり意識の共有が難しかったりするそうだ。

 夏休みの読書感想文をひとつのイベントとして扱い、親子のコミュニケーションの向上を図る機会と捉えることができたら、親子ともに楽しむことができるだろう。
《中尾真二》

中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。エレクトロニクス、コンピュータの専門知識を活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアで取材・執筆活動を展開。ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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