【e絵本】一人ぼっちは根っこをのばす時間

 みんなと一緒の楽しい色々が過ぎ去ってしまった、うら寂しさなのだろう。学生時代の友人は揃って夏が好きな連中で、そんな感情を「サウダーヂ」と呼んでいたっけ。

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くろねこ ろびんちゃん「ごろごろ」
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 この上なく私事ではあるが、夏が好きだ。でもって、夏が過ぎたあとの秋の気配が、ちょっぴり苦手である。

 みんなと一緒の楽しい色々が過ぎ去ってしまった、うら寂しさなのだろう。学生時代の友人は揃って夏が好きな連中で、そんな感情を「サウダーヂ」と呼んでいたっけ。会社が休みの土曜の昼ごろ…。遅く目覚めたふとんの中で、外から響く今年一番の石焼き芋の歌声に、筆者はそいつをひしひしと味わう。あーあ、今日も一人寂しく、原稿書きかぁ…。

 そんなサウダーヂな心持ちなので、今日は一人遊びする猫のお話でもご紹介しよう。くろねこ ろびんちゃん「ごろごろ」、iPhone/iPad対応、無料。ブルーアートより配信中。

 のんびりとしたテンポが心地よいお話だ。黒猫の“ろびんちゃん”が様々なものを「ごろごろ」する。ビー玉に毛糸玉、だるまさん。ごろごろするものはどんどんスケールが大きくなって、空想遊びは宇宙にまで飛び出してしまう。するとそこにろびんちゃんの予期しなかった「ごろごろ」が登場して…。「一人」のこざっぱり感と心細さがちょうどよくブレンドされた、不思議な力強さのある作品である。

 そうそう。一人って心細いんだけれど、決して悪いことでもないのだ。だれにも邪魔されないこざっぱりした時間を過ごせるから、仕事だって、勉強だってはかどる。学校の先生や大人は、子どもたちが一人でいると「友だちがいないのかしら?」と心配になるみたいだけれど、案外好きでそうしているのかもしれない。筆者にもそんな頃、あったなぁ。

 一人って、根っこをのばす時間なのだ。

 お話ではいちばん最後に、ろびんちゃんにとって安心できるものが出てきて一件落着となる。子どもたちにも、安心できる人がそばにいてくれたら、別に一人だって大丈夫なんじゃないかしら。

 筆者にはそんな人、いたっけかな。や、いるいる。あの人でしょ、あの人でしょ…。
《てらしまちはる》

てらしまちはる

ワークショッププランナー/コラムニスト/絵本ワークショップ研究者。東京学芸大学個人研究員。2022年3月に単行本『非認知能力をはぐくむ絵本ガイド180』(秀和システム)を刊行。絵本とワークショップをライフワークとしている。アトリエ游主宰。

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