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【デジタル教科書(4)】iPad導入でわかったこと…国語の実践や休み時間の利用

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写真1 友達のリーフレットを基に交流する子どもたち
  • 写真1 友達のリーフレットを基に交流する子どもたち
  • 写真2 友達のリーフレットをiPadで開いて学ぶ子どもたち
  • 写真3 休み時間にiPadを活用して楽しむ子どもたち
 「学習者用デジタル教科書」の現状と課題に続き、前回は私の知る優れた実践者による「算数」での授業づくりの事例を紹介した。今回は、私自身が学習者用iPadの活用を、試行錯誤しながら実践し、見えたことを、ありのままに紹介したい。

◆学習者用iPad導入体験

 私のクラスでもこの10月、ソフトバンクBBの協力により、第一世代のiPadを3週間レンタルし実践に取り組んだ。同社では、展示用に使われていた端末を、研修や教育に貢献しようと貸し出している。学校現場にとっても有り難いことで、感謝して利用させていただいた。

 学年は6年生、39名の学級である。児童に使わせてみて、自分が使ってみて、初めてわかることは多い。以下に、導入初日に感じた10の感想を紹介する。

(1)壊さないで、落とさないで、と注意が多くなる。これは、自分の想像以上であった。子どもたちはもちろん気をつけているが、それでも、どうしても気になる。

(2)40台同時に接続するため、インターネットアクセスのタイムラグが多い(自分のWi-Fiの設定が中途半端なのも原因)。これがサクサクいくかどうかは、授業をリズムよいものにするかどうかの大きな要素である。

(3)机の狭さ。教科書・ノート・デジタル端末(iPad)と、3つを扱うことになるので、iPadを落としそうだと、子どもたちも心配していた。教師用の机とまでは行かずとも、ゆったりとしたスペースが欲しいと思った。

(4)社会の授業では、知りたいことを即座に調べていく効果をすごく感じた。たとえば、葛飾北斎「富岳三十六景」は、資料集には一景しか載っていない。しかし、「富岳三十六景」で画像検索をかけると、たくさん出てくる。子どもたちのイメージの広がりが全然違う。

(5)イレギュラーな情報が次々と入るので、授業のスタイルが変わる。教師の用意した教材を超えていくので、対応力が求められる。発見した資料によって、個々の子どもに問いが次々と生まれ、そのつぶやきを別の誰かが解決するという流れ。教師は、自ずと、ファシリテーター的な対応が必要になる。

(6)一つの資料をネタに全員で同時に考えるというよりも、個々に違った資料で考えるスタイルとなるので、必要なことは、いかに共有の場を作るかにあると感じた。そのためにはおそらく、Apple TVで、個々が発見したものをすっと映せるようにすることが大事なのだろうが、第一世代iPadではそれはできない。それができると、「個の調べ活動」と「よい発見の共有」がスムーズにでき、授業の密度が格段に上がるだろう。

(7)電子黒板の役割が変わってくると感じた。「教師の提示装置」から、「子どもが発見した教材の共有装置」になる。個々に検索をすると、よい内容を見付ける子どもがいる反面、なかなかよい情報が見つからない子どもも、もちろん多くいる。その辺りの落差を埋めるのが、電子黒板の役割となるべきであろう。

(8)コンピューター室に行ったときに、そこで、お絵描きをする子どもたちの姿に不自然さを感じた。コンピューター室が、画一的で自由度が低く見えてしまった。大きいパソコンがその場に設置されていて、そこから動きが取れないなどということは考えられない。そんな風に見えてしまうほど、教室でiPadを使う子どもたちの姿は伸びやかであった。

(9)子どもたちの適応力はすごい。あっという間に使いこなしていく。操作に困ったまま、解消されない子どもの姿はまったくない。コンピューター室でのコンピューター学習以上に、スムーズに進んだ。

(10)初日は、エラーは皆無。PCルームであったような、フリーズなどで授業が中断することもない。

 授業でiPadを使ってみて一番感じたことは、PCルームでの活用とはまったく違うということだ。また、教師が提示のために使うICT利活用授業ともまったく異質な授業になる。私は、実際に子どもたちに活用させる中で、「学習者用デジタル端末」の必要性をこれまで以上に実感し、自分の目指す方向の正しさを確信した。

◆国語での実践事例

 次に、私の実践を紹介する。国語では、「リーフレットで伝えよう!太陽光発電の現状と課題」という実践を行った。学力差と興味関心に対応できるように、18種類の新聞記事をDropboxで共有しておき、児童が、それらの記事や、インターネットで調べたことを基に、リーフレットを作る。そして、リーフレットを通して、4、5年生に太陽光発電の良さや課題を伝えていくという単元である。

(1)課題提示で感じたよさ

 まず、子どもたちは18種類もの大量の新聞をiPadでさっと流し見て、どの子もが、自分の学力や興味関心にあった新聞記事を見付けることができた。これはタブレット端末だからこそできた。

 一方、児童から「文字数が多い新聞記事は画面では読み辛い」という指摘を受けた。そこで、iPadで選択した後は、選択した新聞記事を紙で生徒に渡すこととした。その結果、子どもたちは、紙の新聞を活用する子、iPadの新聞を活用する子に分かれたが、全体的には、細かい字を読む場合を除き、iPadの紙面を利用する子が多かった。この点は、解像度や端末のサイズによって状況が異なるであろうし、今後も紙との併用を考えるなど、柔軟な対応が必要であろう。そして何より、子どもの声に耳を傾けながら考えていくという視点を忘れてはならない。

(2)資料検索で感じたよさ

 資料検索については、iPadが大変効果的に働いた。新聞記事では、足りなかった情報をiPadでの検索で見付けた資料で補うことができた。資料をブラウザの「お気に入り」に入れ、それを見ながらグラフを書き写すなど、手元にタブレット端末がある良さを大変感じることができた。子ども自身が「資料を選ぶ力」を付けるうえでも、非常に有効に働いたと考える。

(3)発表・交流活動で感じたよさ

 作成したリーフレットをより良くするために、iPadを活用して「リーフレット中間検討会」を行い、作成途中のリーフレットに対しアドバイスし合った。そこでのiPadの役割は、次の2つである。

1.交流に先立ちそれぞれが行う2分間の発表の際に、個々に自分のiPadアプリ「プレゼンタイマー」で2分間を計り、時間意識をもって発表する。
2.聞き手の2人は、それぞれの端末から、Dropbox経由で共有してある友達のリーフレットを見ながら聞く。

 交流の授業でよく見られる姿は、ノートやリーフレットが見えない・遠くて見辛い、という姿である。しかし、iPadで共有しておくことで、各自が見やすい距離・角度・拡大率でリーフレットを見ながら聞くことができた(写真1)。

 次の時間には、生徒はアドバイスやメモを基にリーフレットを完成させたが、そこでも、効果を感じることがあった。もう一度、友達のリーフレットをiPadで開き、見ながら追記を行っているのである(写真2)。

 時を選ばず、全員のリーフレットが見られるということは、リーフレットをデジタルデータ化して、共有しているからこそできたことだ。もちろん、すべてを紙でコピーして配布することは理屈としては可能だ。しかし、児童には大量の紙が配られ、それらの整理・振り返りが困難な子どもが続出するだろう。全員のリーフレット原稿は、合計すると160枚もあるのだから。大量の資料を整理して渡すことができる。これは、今回の実践で国語の指導者の先生からも、もっとも評価をされた点である。

◆休み時間での使用

 「学習者用デジタル教科書」は学習ツールであるが、児童がいつも使うと考えると、「休み時間」の使用についてのルール化も考える必要がある。学校でいつ、どこまでの端末利用・ネットアクセスを許容するかという問題は、大切でありながら、意外と語られないテーマとなっている。コンピューター室でのコンピューターの活用でも同様だが、1人1台端末となると当然、このような問題が大きくなる。一般に自治体のガイドラインには、アダルトサイト等、不適切サイトへのフィルタリング等に関するものが多く、使用時間に関するガイドラインはあまりないように思う。その場合、学校でガイドラインを作成するか、個々の学級担任の判断となる。

 担任の判断となった場合、これは「筆箱の中身」と同じような論争が起きることだろう。筆箱の中身は、落ち着いて学習活動を進めるため、「無地の鉛筆、赤鉛筆、定規のみ」という先生もいれば、「調べ活動などで使いこなすため、ボールペンやマーカーなどをある程度許容」という先生もいる。また、児童の自主性・主体性の問題だからと「なんでも勝手にしてOK」というゆるい先生もいる。

 ゆるくても学級経営が上手な先生の教室では問題は起こらないかもしれないが、そうでない先生のクラスでは、女子を中心とした「キラキラマーカー集め競争物による」筆箱の肥大化や、男子を中心としたボールペン分解や消しゴム跳ばしなどによる授業への集中力低下が起こる。管理と自主性の尊重は、学校教育の永遠のテーマだ。

 話を戻すが、私は、せっかくの機会なので「休み時間のiPad利用」を許可した。今回は、以下のようにルールを設定した。

1.私の許可を得ての利用(途中から、言いに来なくても原則としてOKとした)
2.教室内での利用
3.アプリの使用は可。インターネットの使用は学習目的のみ可(途中から、一部のネットコンテンツの利用を許可した)
4.友達との交流(一緒にやる)は可

 我が学級は落ち着いているので、このルールで行けると私は判断した。しかし、もし荒れているクラスであったならば、4の友達との交流は不可だろうし、「着席しての使用」というルールも必要であろう。それでも不安な先生は、おそらく、休み時間は使用禁止とするであろう。また、年間を通しての利用であるならば、休み時間に身体を使った遊びを大切にする目的で、使ってよい曜日を決めることもあるだろう。このように、端末導入時には、新しいルールの設定が必要となる(写真3)。

 ここまで述べてきたように、実際に導入すると、さまざまな点で小さな問題が起き、修正が必要な点が出てくるだろう。しかし、それらのリスクと、その効果の大きさや可能性を比較すると比べ物にならないほど、効果や可能性の方が大きい。それは、私が特別にそういったツールが好きだからだとか、扱いが得意だからということではない。むしろ、技術的には苦手な部類の教員だと私自身は感じている。

 むしろ、子どもたちは簡単にツールを使いこなせるようになる。考えてみれば、彼ら「デジタルネイティブ」は、すでに、ニンテンドー3DSやWii等のデジタルゲーム端末や携帯電話等を複数台使いこなす「デジタルマルチリンガル」であるともいえる。一番遅れているのは、今の学校生活であり、その学習環境の枠組みを作る側の意識なのかもしれない。子どもたちのために、大人は、その遅れを取り戻す努力を今こそしなければならないのである。

【著者プロフィール】
片山 敏郎(かたやま としろう)
新潟市立上所小学校 教諭で、日本デジタル教科書学会会長。みんなのデジタル教科書教育研究会の発起人でもある。
《片山敏郎》

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