【DiTT】教育情報化八策とは、推進拠点地域とスーパーデジタル教員を選定

 6月17日に行われたデジタル教科書教材協議会(DiTT)のシンポジウムでは、これまでの実証研究の報告とともにDiTTの「教育情報化八策(案)」と題した2013年の提言案が発表された。

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中村伊知哉氏
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 6月17日に行われたデジタル教科書教材協議会(DiTT)のシンポジウムでは、これまでの実証研究の報告とともにDiTTの「教育情報化八策(案)」と題した2013年の提言案が発表された。

 八策を発表したのは、DiTT事務局長で慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授の中村伊知哉氏。2012年の提言発表からの1年間における動向を踏まえ、2013年のロードマップを描いたものとなっている。

 1策目は、教育情報化タスクフォースの設置。文科省、総務省、経産省、厚労省、内閣府などといった関連省庁横断のタスクフォースを設立し、課題の解決に当たるという組織的なもの。2策目は「デジタル教科書法」の策定という法的面の対策だ。学校教育法、教科書発行法、著作権法の3法の改正が必要なデジタル教科書の正規化に向け、「デジタル教科書法」の策的に向けた検討を開始するという。

 3策目は、文科省の「教育情報化ビジョン」の前倒し。2010年代の実現を目標とする政府に対し、すべての子どもが2015年にデジタル教科書で教育を受けられるようにするという。4策目は、デジタル教育システムの標準化と検証。教育のICT化に必要とされる情報端末、クラウドネットワーク、デジタル教科書や教材のシステム標準化を行うことで導入時のハードルを下げることがねらいだ。10地域のモデル自治体で検証を行い、2015年の標準化を目指すという。

 5策目と6策目は、推進地域とスーパーデジタル教員の選定という先行支援型モデルの設立だ。5策では、全国47都道府県および政令指定都市を含む100か所に推進拠点地域を設定し、施策を重点投下するというもの。推進地域100か所に選ばれた地域へのメリットが具体化されたことで、地域主導の試みが期待されている。6策においては、各地域で教育情報化における成果を上げている教員100名を「スーパーデジタル教員」として選定。こちらも重点的に支援することで、教員のモチベーションを上げることがねらいだろう。

 7策目は教員の教育面に関する内容となっており、DiTTは年間100万人がICTによる創造力・表現力を育成するワークショップに参加できるよう支援するという。2013年3月に実施されたワークショップの参加者が10万人と発表されており、ワークショップ規模の拡大化か実施回数の増加が期待される。

 8策目はもっとも難しいであろう予算処置についてだ。DiTTは、教育ICTに使途を限定した上で毎年3千億円規模の予算処置を行うという。ハード、ソフト、人的サポートと広範囲に適応できるようにするとDiTTは語るが、この予算がどこから出るのかが焦点になるだろう。

 今回のDiTTシンポジウムで求められたのは、今後のロードマップを示す提言だけでなく、第1次政策提言および2012年の提言の振り返りではないだろうか。前年描かれた未来の何が達成されており、何が達成できていなかをより明確にする必要があったのではないかと考える。

 たとえば、3策目の「教育情報化ビジョン」の前倒しは、第1次政策提言において「2015年に達成できるように取り組むこと」と盛り込まれていた内容であり、今回の八策は再確認にすぎないのではないだろうか。そういった意味では、法的改正の必要性が明らかにされた2012年の提言でも制度改革が盛り込まれていた。

 新たに盛り込まれた内容として興味深いのは、推進地域とスーパーデジタル教員の選定だ。先進的取り組みを行う地域や教員にメリットを与えることで、導入する地域・教員と導入を躊躇する地域・教員を極端に差別化した。推薦地域として募集している100地域には、佐賀県、大阪府大阪市、大阪府箕面市、東京都荒川区、佐賀県武雄市、岡山県新見市が名乗りを上げているという。「スーパーデジタル教員」としても、100名中すでに42名が応募しており、反応は悪くないようだ。

 参加することにおけるメリットがより明確になった今、日本の教育における先進的取り組みを児童生徒に体験させることができる地域と、そうでない地域がより明確になるのではないだろうか。
《湯浅大資》

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