【NEE2014】学びのイノベーション総括と、佐賀県・荒川区の成果と課題

 「学びのイノベーション実現に向けた文部科学省・自治体の施策」と題されたリレーセッションでは、昨年に終了した「学びのイノベーション事業」の総括と今後の取組みが発表。さらに、佐賀県と荒川区のタブレット導入事例が紹介された。

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文科省 生涯学習政策局 情報教育課 課長 豊嶋基暢氏
  • 文科省 生涯学習政策局 情報教育課 課長 豊嶋基暢氏
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 New Education Expo 2014の専門セミナーでは、「学びのイノベーション実現に向けた文部科学省・自治体の施策」と題されたリレーセッションが開催された。2013年(平成25年)に終了した「学びのイノベーション事業」の文部科学省(文科省)による総括と今後の取組みが発表され、この事業を受けて始まった自治体の取組みとして、佐賀県と荒川区のタブレット導入事例が紹介された。

 登壇したのは、文科省からは生涯学習政策局 情報教育課 課長 豊嶋基暢氏、佐賀県教育委員会 福教育長 福田孝義氏、荒川区教育委員会からは指導室 統括指導主事 駒崎彰一氏と同 指導主事 菅原千保子氏だ。

 セミナーはまず、文科省が進める教育の情報化に関する取組みのうち、平成23年から25年にかけて実施された「学びのイノベーション事業」の概要と3年の活動や実証実験で得られた知見、成果の報告、課題、そして今後の活動について、豊嶋氏のセッションから始まった。同事業では、デジタル教科書・教材の開発、ICTを活用した指導方法の開発、ICT活用の効果・影響の検証を3つ主な取組み内容とし、個別学習、協働学習にICTを採り入れたり、リモート授業などさまざまな実験・研究を行った。

 3年間の成果は実証実験報告書としてまとめられ、平成26年4月11日に公開された。デジタル教科書については、まずコンテンツやソフトウェアがどんなデバイスでも使えるように標準化が重要であるとする。また、学習履歴の保存や管理ができることなどがまとめられている。2番目の指導方法の開発については、学習場面を一斉学習、個別学習、協働学習に分類し、さらにそれらを細分化し10の場面に落とし込み、活用事例を整理した。留意点としては、ICT活用によって理解度、思考力の向上など一定の効果が確認されたが、授業のすべてを電子黒板やタブレットで行うのではなく、コミュニケーション活動との組合せが効果的であるといったことが書かれている。

 また、特別支援学級では、少人数であること、オーダーメイドの指導が必要であること、ICTが障害を補うツールとして機能することなどから、効果が高いことも確認された。

 検証作業により浮上した課題は、そのまま今後の取組みや施策にもつながるもので、セキュリティ対策、児童の健康面への影響などを留意事項としてあげた。また、電子教科書の標準化については作業が始まっており、平成27年度に仕様を策定する方向だそうだ。実証校でも、環境の整備やコンテンツの開発、ICT授業の拡大などそれぞれの活動計画をもっており、「学びのイノベーション事業」は終了したが、活動は終わっていないとする。

 たとえば、総務省とは引き続き先導的教育システム実証事業としてクラウドを活用した教育ICTプラットフォームの研究を行う。実証研究のための委託事業、自治体向けの教育環境整備に平成26年度から29年度までの4年間、1,678億円(4年間総額6,712億円。全国で3.6人に1台の端末の配布を指標としている)の地方交付税の財政措置を講じるとした。

 学びのイノベーション事業やフューチャースクール事業を受けて、本格的なタブレット導入を始めた自治体に佐賀県と荒川区がある。佐賀県は今年の4月が県下の公立高校すべてにタブレットを導入し1人1台の授業を開始している。荒川区は昨年より区内のモデル校(小中学校)に1人1台タブレットの導入を始めている。省庁手動の実証実験や取組みが、自治体の現実の施策として教育現場への展開が始まったということになるわけだ。
《中尾真二》

中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。エレクトロニクス、コンピュータの専門知識を活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアで取材・執筆活動を展開。ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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