自前タブレット利用の無料補助教材、DM刷新など…新生ベネッセはどう変わる?

 ベネッセホールディングスは7月2日、代表取締役会長兼社長 原田泳幸氏による同グループの経営方針についての説明会を開催した。そこでは、事業ごとに縦割りだった組織を再編し、グループのシナジーを強化する方針、進研ゼミの独自性を生かした戦略などが発表された。

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ベネッセホールディングス 代表取締役会長兼社長 原田泳幸氏
  • ベネッセホールディングス 代表取締役会長兼社長 原田泳幸氏
  • ブランドイメージを共有するためロゴのCIを変える
  • 改革のステップ
  • 進研ゼミを最大化することで事業を強化
  • 赤ペン先生とのラウンドテーブルに参加する原田氏
  • DMも変わる
 ベネッセホールディングスは7月2日、代表取締役会長兼社長 原田泳幸氏による同グループの経営方針についての説明会を開催した。そこでは、事業ごとに縦割りだった組織を再編し、グループのシナジーを強化する方針、進研ゼミの独自性を生かした戦略などが発表された。

 現在、進研ゼミの会員として赤ペン先生の指導を受けている児童・生徒にはどのような影響があるのだろうか。またグループの一員である進学塾にも影響はあるのだろうか。発表内容から、変わると思われる点を整理してみたい。

 まず、東京個別指導学院、東大特講、京大特講、御茶ノ水ゼミナール、ベルリッツなどベネッセグループのすべての事業ブランドについて「A Benesse Company」のロゴが付与される。これによってグル―プ企業であることをアピールし、ブランド価値の共有やサービス連携を強化していく。単にロゴが変わるだけでなく、通信講座から塾への移行をしやすくするための施策も実施される。

 利用者のIDを共通化し、1IDでグループ内の塾や通信講座を受けやすくしたり、長期継続の利用者に対する優遇措置、ロイヤリティプログラムも考えているという。これにより、幼児教育、義務教育、受験、留学、英会話、生活関連から介護まで、「1IDで一生をサポート」(原田氏)することを目指すという。ただし、人々の学びから生活までの支援事業には、まだまだ抜けているところがあるとして、M&Aも視野に入れた成長戦略も考えている。

 原田氏は、成長戦略を支えるのは、圧倒的な会員数を誇る「進研ゼミ」であるとして、ベネッセグループのコアコンピタンスである添削通信講座を最大化させていくための拡大・成長を目指すという。やみくもに成長市場に参入しても、消耗戦になるだけなので、独自性や差別化できるポイントでの勝負ということだ。

 同社の平成26年3月期の決算は減益となっているが、その原因は進研ゼミの会員獲得数が伸びていないことが原因と指摘されている。しかし、同社のコア、DNAとも呼べる進研ゼミを生かす方向での経営強化を目指す。そのため、グループ内で重複する事業や部署の共有化、組織の再編を行い、グループ間で500名規模の異動を実施する。赤ペン先生については、原田氏自らラウンドテーブルをもって現場の先生の声を拾い、赤ペン先生の次のキャリアも考えていきたいとしている。

 この成長戦略のための投資は、新たに調達するのではなく既存の枠組みの中で実施するという。つまりこれまでの投資配分やマーケティング方法を見直していくということだ。会員獲得も、少子化傾向を考えると純増の伸び率より継続率や利用年数を重視する。身近な例では、DMの使い方を変えていくという。

 ベネッセのDMは「締切迫る」「最後のチャンス」といったあおり文句と「マンガ」がおなじみだが、これがデザインを含めて路線変更となるようだ。すでに新しいイメージでのテレビCMも始まっている。また、ただDMをうつばかりではなく、塾やサービスの連携を支援するため、全国500拠点を目標にリアルな店舗である「エリア ベネッセ」を展開するという。

 「デジタル化」も原田氏が進める改革のひとつだ。1ID戦略のためにはCRM(顧客管理システム)の統合化を行い、これまで商品ごとだったマーケティング戦略や事業計画を、顧客(ID)ごとのマーケティングにシフトさせる。サービスが変わっても連続性のある顧客情報管理によって、サービス品質、顧客満足度向上を目指す。

 また、MOOC(大規模オープンオンライン講座)のような新しい教育モデル、ビジネスモデルを意識して、教材のデジタル化も考えていくという。優先順位としては紙の教材や通信講座を1番目とするが、補助教材や紙を補完する部分にタブレットやクラウドを最大限活用していく。具体的な戦略はまだ確定していないとのことだが、まずは、タブレットのBYOD(Bring Your Own Device:自己所有デバイスを業務に持ち込むというビジネス用語)対応を行う。

 ベネッセでは、現在「チャレンジタブレット」として端末を支給するタイプの通信講座の補助教材を提供している。2015年もチャレンジタブレットは継続するとしているが、2015年4月には、自前のタブレットを利用できる教材コンテンツのサービスを始める予定だ。サービス開始時はキャンペーンでコンテンツの無料提供も考えている。

 また、タブレットを持っていない会員向けにレンタルサービスのプログラムも開発するとしている。レンタル端末は契約期間の縛りをつけず、好きな時に契約できて、いつでも解約できる方式を目指す(原田氏)とも発表された。詳細は未定だが、月額700円から1,500円くらいではないかとの発言もあった。BYOD対応はiOSからのスタートになるが、Android対応も行う予定だという。
《中尾真二》

中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。エレクトロニクス、コンピュータの専門知識を活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアで取材・執筆活動を展開。ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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