JSTと上越教育大、幼児の脳の働きライブ学習とテレビ学習で異なることを解明

 科学技術振興機構(JST)と上越教育大学は8月2日、幼児がテレビで学習するすることは、目の前の他者から学習することと比べて運動に関係する脳領域の活動が弱いという研究成果を発表した。テレビなどのデジタル機器を用いた、より効率的な学習への応用が期待される。

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実験の様子
  • 実験の様子
  • 成績の違い
  • 脳活動を計測した結果
 科学技術振興機構と上越教育大学は8月2日、幼児がテレビで学習することは、目の前の人から学習することに比べ、運動に関係する脳領域の活動が弱いという研究成果を発表した。

 これまでの研究では、3歳以下の子どもはテレビから十分に学習できないことが明らかにされてきた。たとえば、生後9か月の乳児はライブの他者からは外国語の学習ができても、テレビの他者から外国語の学習はできないという。しかし、4~5歳頃になると、テレビの他者から言葉やゲームのルールなどを学習できるようになり、その成績はライブの他者から学ぶ場合と同程度であることが示されている。

 森口准教授らはこれらの先行研究に基づき、テレビから学習することが可能な5~6歳の幼児を対象に、ライブおよびテレビの他者から学習している際の脳活動を計測。幼児(5~6歳)15名と成人15名に参加してもらい、ライブ条件とテレビ条件でモデルがルールに従ったカード分けをしている様子を見せた。その後、参加者にはモデルと同じルールでカードを分けるように指示したところ、幼児と成人のどちらも、ライブ条件とテレビ条件の間に成績の違いはなかった。

 また、近赤外分光法を用いて脳活動を計測・解析した結果、成人はライブ条件とテレビ条件のどちらにおいても運動関連領野の酸化ヘモグロビン量が時間とともに増加した。しかし、幼児はライブ条件では左の運動関連領野の酸化ヘモグロビン量が時間とともに増加したが、テレビ条件では同領域の酸化ヘモグロビン量の増加は認められなかった。つまり、幼児も成人と同様にライブ条件とテレビ条件のどちらからも学習することが可能であるにもかかわらず、テレビから学習する場合は、他者認識と関連する運動関連領野が活性化していないことを示している。

 今後は、運動関連領野以外の領域の活動がいかに異なるかを検討することで、テレビから学習する際の学習プロセスや脳内機序をより明確にしていくという。
《工藤めぐみ》

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