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DNP体感型デジタル教材で絵の中を探検、春日小5年生が美術鑑賞に挑戦

教育ICT 小学生

ウォークビューの説明を受けながら体験する児童
  • ウォークビューの説明を受けながら体験する児童
  • 6班に分かれ、各班にDNPのTAが児童のフォローを行う
  • 左:『雪中の狩人』が映し出されたスクリーン 右:電子黒板
  • 今回使用したデジタルペン
  • 初めての体験に興味津々
  • 登場人物なりきりワークシート。絵とセリフを書く部分が電子黒板に反映される
  • タブレットは3人で1台使用。みどころルーペで細部をじっくり観察
  • 児童全員が書いたセリフが表示された電子黒板
 大日本印刷(DNP)は2月1日、教育CSR活動の一環として茨城県つくば市立春日小学校でデジタル教材を利用した美術鑑賞の出張授業「絵の中を探検しよう!美術鑑賞入門」を行った。

 出張授業の対象児童は、つくば市立春日小学校の5年生。春日小学校は2012年に開校した中高一貫教育を行う春日学園の小学校。日常的にICT機器を授業に取り入れていることで知られ、県内にとどまらず、国内における教育ICT先進校のうちの1校である。

◆身近な存在であるDNPの紹介と今回の授業内容の説明

 「多目的教室/美術室」へと集められた児童たちは、5~6人をひとつの班とし、全部で6つの班に分けられた。各班にDNPのTA(ティーチングアシスタント)が1人ずつつき、デジタル教材の使用方法や課題の答えを導く手伝いを行った。

 授業はまず、DNPの紹介から始まった。DNPは、本・雑誌・漫画はもちろん、お菓子のパッケージや児童たちが使っている机の木目調の印刷なども行っていることが授業を進行するDNPの講師から語られた。「未来のあたりまえを作る」をテーマとしたDNPのテレビCMを見せられた多くの児童たちはすでにそのテレビCMからDNPを知っており、そこから話題は今日の「未来の美術鑑賞授業」に発展した。

◆3つのICTツールを使用した「未来の美術鑑賞授業」

 「未来のあたりまえ」を反映した当日の美術鑑賞授業のテーマは、「絵の中を探検すること」。鑑賞する絵は、スクリーンに映し出された「雪中の狩人」(1565年、ブリューゲル)。

 絵の中を探検するには、まず始めに鑑賞者が絵画の中に入ったような体験ができるシステム「ウォークビュー」を使用する。





 スクリーンから少し離れた床上に白いテープで貼られた150センチ×150センチの大きな正方形があり、正方形はさらに9つの小さな正方形(マス)に分割されて、1~9までの数字が振られている。鑑賞者がマスを移動すると、スクリーン下の短焦点プロジェクターと距離センサーが反応し、投影画像を動かす。ウォークビューは、絵画を立体的に体感できるばかりでなく、視点を変えて歩くことで、絵の構成を理解するのに役立つツールだ。

 講師がウォークビューに関して簡単な説明をすると、実際に数名の児童が1人ずつ体験することになった。講師が体験者を募ると、児童の手が一斉にあがった。選ばれた児童は「絵の中を本当に歩いているみたい」「動物が見える!」など、マスからマスへと移動することで「何ができるか」を体感したようす。

 児童の動きに合わせ変わっていくスクリーン上の絵から何が読み取れるか、講師が質問しつつ、みんなで一緒に考える。「これはどこだろう?」「のどかな村」「季節は?」「木に葉がついていないから冬」「スケートをしている人がいるね」など、絵に関する簡単な背景をみんなで確認をしたのち、2つめのICTツールである「みどころルーペ」が登場した。





 「みどころルーペ」は、タブレット上で操作が可能なルーペ機能。名前のとおり、細かい部分を拡大し、絵画の魅力を詳細に発見できるシステムだ。ICT教材を積極的に使用している小学校なので、児童も臆することなくタブレットを使いこなす。各班のTAがみどころルーペの操作方法を見せると、児童たちは簡単に操作し始めた。ここで、「絵の中の気になる人物になりきって、セリフを考えよう!」という鑑賞ポイントが児童に伝えられる。ウォークビューで色々な視点から見て気になった人物でもいいし、みどころルーペで誰も発見できないような人物や動物に焦点を当ててセリフを考えてもいい。児童それぞれの選択にゆだねられた。





 「ウォークビュー」「みどころルーペ」に続く3つめのICTツールは、「デジタルペン&ワークシート」だ。ワークシートにデジタルペンで書き込むことで、児童が手書きした文字がリアルタイムに電子黒板に集約・閲覧できる機能を搭載している。ワークシートには「雪中の狩人」の絵が貼ってあり、自分が選んだ人物に丸印を付け、その横に出席番号を書く。その後、児童は選んだ人はどんな人か、何をしている人なのか(描写)と、その人になりきったセリフを書く欄に思い思いのセリフを書き込んだ。





 ワークシートに記入する時間は10分程度。この時間は班ごとに自由にウォークビューを体験できる時間でもあり、ウォークビューは絶え間なく児童たちに囲まれていた。ほぼ、全員が体験したと言えるであろう。みどころルーペで絵を拡大するのに夢中になっていた児童もいたようだ。

 ウォークビューは9つのマスから成り立っているが、「2人で別々のマスに乗ったらどうなるの」と、ウォークビューの仕組みに興味津々で質問をする児童もいた。実際に、TAが2人の児童を別々のマスに乗るよう促し、「前のマスの方が優先されて、画面に入り込めるんだよ」と見せていたようすも見受けられた。

◆多角的な視点で見ることで、より具体的な想像が広がる

 児童が自由にのびのびとした環境で想像力を膨らませて作った描写やセリフは、細部まで凝っていて興味をひく。たとえば、「おじいさんで、転びかけている 81さい」「雪の中に迷い込んでもう60年」など、年齢や何かが起きた期間までも設定し、実に具体的。思いつくままにすぐ書き上げてしまう児童、時間をかけて試行錯誤している児童、課題の進め方はそれぞれだったが、最後まで書かない、書けない児童はいなかった。

 ワークシートを仕上げると、児童は電子黒板の前に集められた。電子黒板の中央には「雪中の狩人」の絵が映し出され、絵の中のさまざまな部分に丸印が付いている。丸印は、各児童が選んだ「なりきった自分」だ。絵の周りは、児童が書いた全員分の出席番号とセリフの組み合わせで埋め尽くされている。これで、「雪中の狩人」は「クラスみんなが登場する絵」になった。たくさんあるセリフの中から、講師が出席番号を読み上げ、発表者を指名する。

 指名された児童は、どの人物になりきったのかをスクリーン上の絵に向けてレーザーポインターで示す。その際、自分が選んだ人物が見られるウォークビューのマスに乗り、その人物の設定や、どんなセリフを考えたのかを発表した。「僕も同じ人を選んだよ」という声や、セリフに同意して頷いている子、面白いセリフにみんなで大笑いするなど、楽しみ、意識することなく絵の鑑賞方法を身に付けている姿が印象的だった。

 授業の最後に、本日鑑賞した絵画の詳細が講師より語られ、ここで初めて絵のタイトルや作者、年代が明らかになった。「日本で言えば戦国時代に描かれたものだ」と聞いた児童は、さらに関心を持ったようす。こうした授業のバーチャル体験により、「実際に美術館に足を運んで作品を見てみよう!」という主体的な鑑賞姿勢を育むことがDNPが目指すゴールだという。

 全体をとおし、ICTを日常的に使用しているとはいえ、初めて体験するデジタルツールへの児童の適応能力には目を見張るものがあった。そして「絵の中に入り込む」という未来型の美術体験、それによって絵画に抱いた感想や意見をクラスでシェアすることで、児童たちの鑑賞能力が高められたのではないだろうか。ICTを取り入れた授業は今後、さまざまな学校で取り入れられていくべき授業スタイルのように思えた。
《賀来比呂美》

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