国内外大学の研究経営システムを分析、基礎的調査報告書公開

 文部科学省は6月15日、国内大学の研究経営システム確立に向けた国内外動向に関する基礎調査の結果、および報告書をホームページに掲載した。国内大学の現状・課題と国外大学の取組みを調査・分析し、目指すべき方向性を示している。

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研究経営システムモデル強化の要素
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  • 東京大学の収入構成の推移
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 文部科学省は6月15日、国内大学の研究経営システム確立に向けた国内外動向に関する基礎調査の結果、および報告書をホームページに掲載した。国内大学の現状・課題と国外大学の取組みを調査・分析し、目指すべき方向性を示している。

 文部科学省では、国の厳しい財政状況から研究開発投資についても選択と集中が今後ますます強まると想定。大学が各々の強み、特色を最大限に生かし、高い付加価値を生み出していくため、各大学のトップマネジメントによる研究経営資源(人材、資金、施設・設備、知的財産)の積極的な獲得および効果的な学内配分の重要性を示している。

 大学における研究経営システムを抜本的に強化するための方策検討に資する目的で、平成27年度に基礎調査を実施した。基礎調査が行われた国内大学は、東京大学、東京工業大学、岡山大学、慶應義塾大学、東京理科大学。国外大学では、ハーバード大学やシンガポール国立大学、オックスフォード大学など4か国15大学。3月には、三菱総合研究所が結果をもとに報告書をまとめている。

 報告書によると、国外トップ大学は「財源の多様化による収入拡大」「トップマネジメントの強化」により、学問のポートフォリオの維持、これからの成長分野の開拓を行っているという。一方、日本の大学が抱える現状・課題として、部局単位の教授会中心の局所的なマネジメント、大学経営層の経営キャリア・経験の不足、研究施設の画一的・固定的なスペース配分、研究のタコツボ化・硬直化、大企業に偏った知財創出・活用などがある。

 研究人材のマネジメントにおいては、局所最適に陥りがちな人材採用の現状を指摘。人材(特に若手)の新規採用は、部局単位の教授会による検討・決定で実質的に決定される場合が多く、中長期的・全学的視点からの研究領域再編や学際研究が進みにくくなっている。部局単位で教員定数が硬直化しており、既得権益化している点にも言及されている。

 また、優秀な人材獲得に必要な相応の処遇、研究支援などが先進国との競争的な水準に達しておらず、終身雇用を前提とした画一的な人事処遇は、優秀な研究者の獲得や流動性を高めるうえで大きな問題だという。

 これらの現状について、「優秀な研究者の獲得」を最重要課題としてとらえ、全学的・戦略的な視点で人材を発掘・採用することを目指すべき方向性として示している。獲得だけでなく流動性にも対応した採用プロセス、資金体系(年俸制など)の実現を掲げた。

 このほか、研究資金のマネジメントにおいて、間接経費や寄附などの自由度が高い多様な財源を確保・管理するための取組み・体制の強化を提示。現状、基盤的経費(運営費交付金や私学助成)や授業料は教職員人件費にほとんど支弁され、それ以外のおもな財源は使途があらかじめ定められた競争的資金や共同・受託研究費。全学的視点に立った予算の配分・執行が困難だという。

 また、研究活動と知的財産のマネジメントにおいて、競争的な資金を獲得できるまでの萌芽的な研究、新任研究者のスタートアップ研究を重点支援すること、人的財源を活用した研究成果の社会実装の強化を方向性として示した。
《黄金崎綾乃》

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