【私学訪問】自分・学校・国境の枠を越えた生徒に…鴎友学園・吉野明校長

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鴎友学園 吉野明校長
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 1935年に創立された鴎友学園女子中学高等学校は、東京府立第一高等女学校(現・東京都立白鴎高等学校)の校長で、女子教育の先覚者と仰がれた市川源三氏と、内村鑑三氏・津田梅子氏の薫陶を受けた石川志づ氏によって、その基礎が築かれた。市川源三氏はその時代から「社会で活躍する女性になれ」と鼓舞し、石川志づ氏も英語教育によって国際社会で活躍する女性の育成を目指したという。

 創立以来の校訓である「慈愛」(互いに尊重し合い、共に成長しようとする力)、「誠実」(自らの意欲を持って学ぶ力)、「創造」(自由な発想で新しいものを生み出す力)を礎に、生徒のさまざまな挑戦を応援し、ひとりひとりの可能性を引き出す教育で近年大躍進を遂げている鴎友学園女子中学高等学校。同学園の吉野明校長に、校風や学校生活、グローバル教育などについて話を聞いた。

◆「いま、私がここにいること」への自己肯定感を育む校風

--校風について、どのように表現できますか。

 鴎友学園の生徒は、お互いに支え合い、学び合いながら、一緒に頑張っていくことができる子が多いですね。ただしそれは最初から、そのようなタイプの子が多く入学してくるということだけではありません。むしろ入学後、鴎友学園という環境で過ごしていく中で、生徒たちがそういう気持ちを自然と持つようになるのだと思います。どんな子でも居場所が作れ、“私が今、ここにいること”への自己肯定感や、ここで頑張っていこうとする意欲を持てるようになります。

 女子は「横の関係性」がとても重要です。一般的に、女子は男子に比べてコミュニケーション能力が高い一方、行動範囲が狭いので、どうしても身近なところで小さなグループを作って固まってしまう傾向があります。グループが固定化すると、グループ以外の友達との間に壁ができてしまい、そこにうまく入れない子も出てきてしまいます。子どもの自己肯定感は、欧米が8割であるのに対し、日本は4割。特に女子の自己肯定感が非常に低いといわれています。学校生活の原点はクラスにありますが、大きな集団の中で居場所がなく、そんな自分が嫌になる、というのは由々しきことです。

 そこで鴎友学園では、2003年から「3日に1回の席替え」というのを始めました。この頻繁な席替えの一番の利点は、どんなに引っ込み思案な子にも、必ず誰かが声をかけるということです。それまでは、クラスという大きな集団の中でなかなか声をかけられることがなかったようなおとなしい子でも、3日に1度の席替えで、多くのクラスメイトから声をかけられるようになります。おとなしい子同士、趣味が合う者同士など、「自分のことを認めてくれる」仲間との出会いが増えます。それがその子にとっての「居場所」となり、自己肯定感につながるのです。

 このように、コミュニケーションを大切にした教育は、校風を作ります。クラスで、学年で、互いに手を取り合い、励まし合い、一緒に頑張っていこうとする校風は、日々の豊かなコミュニケーションによって育まれています。

◆鴎友名物授業と言えば…

--学校生活のようすについてお聞かせください。

 鴎友学園の授業には、独自性があります。たとえば、英語の授業は13年前からオールイングリッシュで行われています。英語を英語で学ぶことで、英語的な発想や思考方法が身に付き、ネイティヴスピーカーに近い表現を自然と使えるようになります。

 また、この時期の女子は男子に比べ、抽象的な概念への理解がまだ苦手であることを考慮し、理科では生物から始めています。たくさん実験をし、自分の手を動かして自分の目で見ることを重視しながら、実験と講義を関連づけて学べるカリキュラムを組んでいます。

 そして、鴎友名物の「園芸」の授業。校内に園芸実習園があり、ひとりずつ小さな畑を持ちます。収穫した野菜を入れた袋をぶら下げて下校するのは、鴎友生くらいではないでしょうか(笑)。

◆海外研修も積極的 特色あるグローバル教育を

 昨今注目されているグローバル教育については、鴎友学園はかねてよりオールイングリッシュを取り入れているので、語学研修というよりも、むしろ多くのディスカッションを通して高次な意見を引き出すことを目的とした「海外研修」を行なっています。異質な文化、考え方を持つ相手と理解し合い、違いを乗り越えて一緒に課題に取り組む力を養います。

 まず、アジア圏については、2012年から、韓国の韓亜(ハナ)高校で行われる国際シンポジウムに参加し、韓国、中国、タイ、シンガポール、日本などからの高校生が約170名集う場で、高校1・2年生の代表生徒が環境や教育などのテーマに関するプレゼンテーションやディスカッションを行なっています。日本からはほかに、灘、海陽学園、早稲田大学高等学院、筑波大附属なども参加しています。

 そこで、生徒たちが抱く思いのひとつに「悔しさ」があります。矢継ぎ早に飛んでくる質問にうまく英語で答えられなかった、自分の考えをうまく英語で表現できなかった悔しさ。そんな思いを抱えて帰ってきた生徒たちは、その悔しさをバネに頑張ろうとします。

 その姿を見て、もっと外にそういう機会を作れば、将来やりたいことが見つけられるかも、と思い、欧米圏で学べる場として、イェール大学での研修もスタートさせました。これは、高校1・2年生の希望者が、アメリカの名門イェール大学のキャンパスにて、前半は現地の語学学校で授業を受け、後半はイェール、ハーバード、 マサチューセッツ工科大学(MIT)の学生との交流やディスカッションを経験できるというものです。参加した生徒は、帰国早々、校長室に飛び込んできて「先生、私、イェール大学に行きたい!」とか「高校からアメリカに留学したい!」と言っていますよ(笑)。

 さらに、2016年からは大統領をはじめ、各界で活躍する人材を輩出しているアメリカの伝統校、チョート・ローズマリー・ホールというボーディングスクールにも機会を広げ、TOEFLの厳しい基準をクリアした4名が参加しました。

 もちろん、校内にも多彩な国際理解プログラムを用意しています。毎年7月、アジア、ヨーロッパ、オセアニアなど、さまざまな地域から日本に留学している大学生との交流会(中学3年生~高校2年生対象)や、外国人講師を招いたディベート講習会(中学3年生~高校3年生対象)、さらにはアメリカの大学生を招いて、イェールでの研修と同様の体験ができるエンパワーメントプログラムなどを行なっています。

◆女子の特性や心理に寄り添ったカリキュラム

 このような機会に自分が参加しなくても、友達が参加したことをきっかけに自分の道を探す子も数多くいます。鴎友生は6年間のオールイングリッシュで英語力が鍛えられるため、大学へ行ってからも英語に非常に強いと言われます。多くの卒業生が、大学の公費で行ける留学制度に合格するなど、何らかの形で海外と関わっています。

 すべての授業や行事について言えるのは、この年齢の女子の特性や心理を充分に考慮し、それらを最大限に生かしたカリキュラムがよく練られていること、そしてコミュニケーションを大切にした校風からは、自然と「アクティブラーニング」が実現できていること、です。

 鴎友学園では、「なぜそれをやるのか」ということを教員間で徹底的に議論します。教員が大きな理念を共有しているからこそ、現場で生徒と接する中で、3日に1回の席替えも生まれました。校長からのトップダウンではなく、教員たちもまた、互いに支え合いながら、具体的に現場で適切な判断をしているのです。

 私たちは、生徒たちのそんな未来につながる「種」をたくさん蒔いていきたいと、心からそう思っています。
《加藤紀子》

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