実践的カリキュラムや充実した奨学金制度、韓国留学という選択

 近年K-POPや韓国ドラマの人気とともに、注目度が高まっている「韓国留学」。6月22日と23日に東京で開催された「韓国留学博覧会 2023」から、韓国留学の特徴や魅力を深堀していく。

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漢陽大学ERICAキャンパス
  • 漢陽大学ERICAキャンパス
  • 「韓国留学博覧会2023」のようす
  • 国際教育院ブースの様子
  • チェジュ大学の先生方
  • 漢陽大学ERICAヘイン先生
  • スンシル大学先生方
  • 済州大学キャンパス
  • 漢陽大学ERICAキャンパス本館

 近年K-POPや韓国ドラマの人気とともに、注目度が高まっている「韓国留学」。2023年6月22日と23日に東京で開催された「韓国留学博覧会 2023」から、韓国留学の特徴や魅力を深堀していく。

「韓国留学博覧会 2023」のようす

 今回のイベントは、韓国政府が海外からの留学生を誘致するための組織である国立国際教育院、駐日韓国文化院、東京韓国教育院が主催。韓国の大学・語学学校からオフラインで29校、オンラインで40校の計69校が参加した。

韓国留学の特徴

 韓国留学の大きな特徴は、大学に付属の語学学校があること。韓国国内の主要大学には「語学堂」とよばれる韓国語の語学学校が併設されているケースがほとんどだ。「語学堂」の学生は、大学の敷地内にあるさまざまな施設を利用できたり、現地の大学生と交流したりできるところが魅力だ。

 そして、韓国の大学は、学科の多さと「ティンプル(チームプロジェクトの略)」とよばれるチームでの課題が多いことも特徴だ。ティンプルを通して現地の学生との交流も数多くあるそう。また、大学を卒業したその先、社会人になってからの生活を見据えたような実践的なカリキュラムを組み込んだ授業を実施する大学も増えている。

日本からの留学生のようす

 では、日本からの留学生は一体どんな生活を送っているのだろうか。今回のイベントを主催した、国立国際教育院の担当者は次のように語る。

 「日本から韓国留学に来る学生のほとんどはK-POPや韓国ドラマを通して韓国に興味をもち、韓国語を学びに来ています。趣味をきっかけに言語学習を始めたからこそ、一生懸命勉強しますし、楽しんで韓国語を勉強している学生が多いです。日本語と韓国語は文法も似ているうえ、同じような発音の単語も多く、どの学校でも日本人の学生は韓国語能力が高い子が多いという話をよく聞きます。また、留学生であっても、韓国企業に提案できるような企画を練る授業や、会社で働いている社会人の方々を講師に迎えた授業も多く受けられるので、実践的な学びができるチャンスが少なくありません。どの大学でも留学生向けの就職支援も行っているため、卒業後韓国系企業の日本支社や、韓国の企業に就職するという選択をする学生も多いです。」(国立国際教育院・ミヒ先生)

国際教育院ブースのようす

留学先の紹介

 今回のイベントで、話を聞けた留学先をいくつか紹介していく。

美しい海に囲まれたキャンパスが魅力の「済州大学(チェジュ大学)」

 「チェジュ大学の最大の特徴は、済州島の美しい自然の中で学ぶことができるということです。済州島は韓国最大のリゾート地であり、大学のキャンパス付近にも美しい海が広がっています。交換留学生、正規留学生、語学堂生問わず、すべての学生が部活動に参加することができるのですが、スキューバダイビングやシュノーケリングなどのウォータースポーツの部活が人気を集めています。

 そして、チェジュ大学のもうひとつの魅力は豊富な奨学金制度と、国立の大学ということもあり、韓国内の他の大学と比べても格段に学費が安いということです。人文・社会系の学部ですと、1学期で1,858,000ウォン(日本円で約20万円)。TOPIK5級以上を所持している学生は授業料が100%免除となります。また、同大学の韓国語課程を修了した学生は1学期あたり700,000ウォン(日本円で約7.5万円)の進学奨励金が受けられます。」(チェジュ大学・ミジ先生)

済州大学キャンパスのようす

 TOPIKとは、大韓民国の教育部と国立国際教育院が主催する韓国語の語学検定試験。最上級の6級から最下級の1級まで、全部で6つの等級に分けられている。日本では例年4月、7月、10月の年3回試験が実施されている。

実践的なカリキュラムが充実した「漢陽大学ERICA(ハニャン大学エリカ)」

 「漢陽大学ERICAは京畿道にあるキャンパスで、地下鉄の4号線の駅のすぐ近くにあります。デザイン学科や実用舞踊学科、現代音楽学科など文化コンテンツに特化した学科が多いというのが特徴的です。音楽学科には実際に今、歌手として活躍している人がいますし、舞踊学科にはダンサーやアイドルとしてデビューしている学生もいます。日本の学生たちは特に、舞踊や音楽、デザインなど文化コンテンツに関連する学科に通う人が多い傾向にあります。

 そして、他の大学と違うユニークな点は、キャンパス内にLG等の有名企業や、韓国政府の研究員が常駐していることです。経営学科の授業を受講する学生に、こうした企業で実際に業務を体験させるといった取り組みもあります。大学4年生になれば、キャンパス内にある企業でインターンをすることも可能です。企業が学生を採用する際には、エリカにいる学生を推薦してもらうこともあります。他の大学と比較すると、就職後の実務を事前に学ぶことができるので、就職に有利になるというのは大きな利点だと思います。

 最近の動きと言えば、キャンパス内にカカオのデータセンターが建築中で、完成すればそこでも授業を受けられます。カカオではどんな仕事をしているのか、間近に見ることができるようになるので、学生たちには貴重なチャンスとなるでしょう。」(ハニャン大学エリカ・ヘイン先生)

漢陽大学ERICAキャンパス本館

さまざまな国の留学生と交流できる「崇実大学(スンシル大学)」 

 「崇実大学は地下鉄7号線の『崇実大学校入口』駅からすぐ。学校付近からバスも出ていて、ソウル中心部にも簡単に行くことができるアクセスの良い立地です。留学生が現在1400人ほど在籍しており、その中で日本人が占める割合は3割ほどです。いちばん多いのは中国人ですが、ほかにもモンゴル、トルコ、フランス等からの留学生もいて、国際色豊かなのが特徴です。日本人学生は日語日文学科や言語広報学科に多く在籍しています。言語広報学科では企業のマーケティングや広報の仕事について学ぶことができ、実践的なカリキュラムが人気を集めています。また、留学生向けの韓国語の授業もあり、チューターとして韓国人学生がサポートにもつくため、語学力に不安があっても安心して大学生活を送れると思います。

 キャンパス内には2010年に建てられた1500人収容可能な寮があり、寮の中にはフィットネスルームや自習室も備わっています。高級マンションのような設備が整っているため、かなり人気を集めています。寮費は1学期20万円ほどです。奨学金も充実しており、TOPIK3級以上だと初学期授業料40%免除、4級以上だと70%、5級以上だと授業料全額免除になります。そして初学期以降も成績優秀者には継続して奨学金を付与しています。」(スンシル大学・ヨンジン先生)

スンシル大学学生寮

韓国留学という新たな選択肢

 韓国留学への注目度は年々高まっているが、英語圏への留学に比べると、韓国留学という選択肢を選ぶ人はまだ多くはない。

 しかし、今回のイベントの取材を通して感じたのは、どの学校も共通して、他国と比較すると格段に学費が安いということ。そして、ただ韓国語を学ぶというだけではなく、日本の大学ではあまり体験できない実践的なカリキュラムを受けることができ、留学生へのサポートが充実している大学が多い印象を受けた。

 日本からも近く、食文化も近く、物価も安い韓国。コロナ禍も終わりつつある今、韓国留学という進路選択の参考にしてほしい。

《稲知希》

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