優等生なりの生きづらさをも乗り越える東京大学の魅力…東大研究室訪問記<教育学部編>

 「東大研究室訪問記」シリーズでは、現役東大生が彼ら自身が所属する研究室の先生への取材を通して、あらためて東京大学の魅力を発見していく。今回は、東京大学教育学部・准教授の大塚類先生に話を聞いた(聞き手:東京大学教育学部3年生 橋本匠)。

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 1877年に明治政府によって創設された東京大学は、今日に至るまで国内最難関の国立大学として確固たる地位を築いてきた。進学先の多様化や海外大学進学が選択肢に加わろうとも、東京大学進学を羨望する受験生の眼差しは変わらない。

 この「東大研究室訪問記」シリーズでは、東京大学に在学する現役東大生がインタビュアーとなり、彼ら自身が所属する研究室の先生に取材を実施。取材を通し東京大学の魅力を再発見していく。

 今回は、東京大学教育学部3年生の橋本匠が、東京大学教育学部・准教授の大塚類先生に話を聞いた。東京大学進学に関心のある中高生にも、ぜひ積極的にご覧いただきたい。

日本全国誰もが納得する進学先

--早速ですが、大塚先生のご経歴を教えてください。(聞き手:橋本匠)

大塚先生:私は高校まで大分県で過ごしました。大学進学の際、周りからは九州大学を勧められましたが、上京することに憧れていた私は、周りを納得させるために東京大学を目指しました。東京大学では教育学部で博士課程まで進み、修了後は青山学院大学など他大学を経て、准教授として東京大学に戻ってきました。

--先輩であることは伺っていましたが、周りの反対を押し切るための材料として東大を選んだとは。今も昔も日本全国、皆が認める大学だということですね。現在の研究に関心をもったのは、どのような経緯からですか。

大塚先生:私は今、現象学の知見を頼りに「生きづらさ」と向き合う教育臨床現象学を専門にしています。具体的には子供の言動から子供の生きづらさを研究する、フィールドワークに基づいた事例研究を行っています。

 きっかけは、学部生時代に参加した児童養護施設や、大学教員になってからもずっと続けてきた公立小学校でのボランティア活動です。発達障害の子供や親との関係性に悩む子供など、多様な生きづらさを抱えた子供たちと出会ってきました。現在もさまざまな教育現場に足を運びながら、子供たちの生きづらさの解消について考え続けています

優等生だからこそ抱える「生きづらさ」

--さまざまな場所でのフィールドワークを通して、ご自身の肌で現場の課題を感じながら、子供たちの生きづらさを現象学的に再構築しているのですね。先生がおもな研究対象としている「子供たち」はもう少し年齢の低い子たちですが、「大学生」の生きづらさについてもお聞きしてみたいです。他大学でも教鞭を取られている先生だからこそ感じる、東大生が抱えている生きづらさはありますか。

大塚先生:たとえば、世間一般からは「キラキラ」しているように見られがちなブランド力のある私立大学の学生でも、その大学の学生なりの生きづらさを抱えている場合が多いです。「本当はもっと行きたい大学があったのに…」と語る人や、美人すぎて他の人から疎まれてしまう人、裕福な家庭で育ったゆえに親との関係に苦しんでいる人など。

 他方で、東大は第一志望として進学した学生が多く、劣等感を抱いている人は少ないように思います。とにかく優秀なのです。しかしその優秀さゆえに、こちらが期待している以上の結果をいつも出そうと自分にプレッシャーをかけてしまう。さらには人に頼り慣れておらず、すべて自分でやろうとしてしまって潰れてしまう。そんな生きづらさが、東大生には多い気がします。

--私も、相手に負担をかけてしまうのではないかと不安に感じて、頼ることができないときが多々あります。思いきって人に頼ることも重要な能力なのだと常々感じています。

大塚先生:他に橋本さん自身が感じている生きづらさはありますか。

--アルバイトやボランティアなど、大学以外の場所で周囲から「東大生だ」と思われながら活動することですね。解消のためには、周りの目を気にしないことや、息苦しさを感じないような環境形成のためのコミュニケーションが必要だと痛感しています。友人の中にも、東大生であることを重荷に感じている人はいて、中には、親に対してお金をかけて東大に進学させてもらったと恩義を過剰に感じている人や、自分の生活に影響が出るまで社会貢献をしようとする人も。

大塚先生:真面目で優秀であるがゆえの、生きづらさですね。研究室に所属していたり、授業で触れ合ったりする学生には、このような東大生の特徴を踏まえて接しています。

東大の魅力は「圧倒的な量と質のリソース」

--これまで東大生の内面的な特徴について話してきましたが、次は大塚先生が考える東京大学そのものの魅力について教えてください。

大塚先生:先ほどもお伝えしたとおり、私自身学部生から博士までずっと東大にいて、初めて就職したのが青山学院大学でした。現在も非常勤講師として他大学に行くことも多くありますが、その中で強く感じているのは施設・環境面の違いです。

 たとえば、東大に関しては「東大の図書館にない本はない」と思うほど、蔵書数と種類が豊富です。他大学では読みたい本が大学図書館に所蔵されていないこともしばしばありますから。

--東大は総合図書館だけでなく、学部ごとに図書館があって、それぞれの学問分野の蔵書が潤沢ですよね。

大塚先生:ほかにも、留学したいときの海外大学の提携先の豊富さや、奨学金などの支援制度の充実など、学生が「さらに深く学びたい」「学び続けたい」と思ったときのサポートや設備が非常に整っていると感じますね。

--海外だけでなく国内の研究活動に関してもプログラムが充実していて、支援体制も整っていると感じます。たとえば、私は現在「フィールドスタディ型政策協働プログラム」と呼ばれる、地域課題の解決を考えるプログラムに参加しています。

大塚先生:そういった充実した教育環境・研究環境のもとで最先端の研究が行われているというのは、やはり東大の大きな魅力だと思います。各分野を牽引する研究者の話を授業やプライベートでいつでも聞ける環境は深い学びにつながるとともに、良い刺激にもなります。

 あわせて、一緒に学ぶ学生たちが優秀であることも魅力の1つだと思います。レベルの高い空間で切磋琢磨する中で、自分の能力も底上げされていきます。

--私は周りから影響を受けやすい性格なので、東大という環境は自分を成長させるために合っていると感じます。日々、東大の友人たちのモチベーションや考え方に刺激をもらっています。

大塚先生:橋本さんは東大のどのようなところに魅力を感じて、進学しようと考えたのですか。

--もともと別の大学を志望していたのですが、高校の授業で東大の入試問題を解く機会があり、その問題の面白さに惹かれて進学を決意しました。

東大の入試問題に触れる「東大入試実戦模試」はこちら

当たり前を疑え…問いを促す校風と入試問題

大塚先生:入試問題がきっかけとは珍しいですね。どのようなところに面白さを感じたのですか。

--「常に問いを感じなければならない」「当たり前そのものに疑問を感じなければならない」といったメッセージを問題から感じたんです。たとえば、数学の問題で問題文と条件を与えられたときに、暗記している公式を当てはめたり、条件を使うことで解を導けるのが一般的な大学であるとするならば、東大の問題は、なぜこの問題文に対してその条件が与えられたのか、なぜ条件をこの数値にしたのかを、一度立ち止まって考える必要があるんです。無思考に与えられたものをこなすのではなく、深い思考を促される問題に触れて、魅力に感じたのがきっかけですね。

大塚先生:入試問題や受験勉強だけに限らず、とても大事な部分ですね。

--先生は授業で「当たり前を疑え」とよくおっしゃっていますね。どのような学生に研究室に来てほしい、ひいては東大に入学してほしいと思っていらっしゃいますか。

大塚先生:フットワークが軽く、積極性がある人ですね。頭でっかちにならず、常に現場を知ろうとしてほしいと思っています。学生だからこそ、いろいろな現場に出てさまざまな情報を得て、すでに確立されている理論との違いを感じ続けてほしいと思っています。

--現場に出て行こうとする積極性をもってほしいということなのですね。

大塚先生:もちろん同時に、理論も大事にしてほしいです。どのような観点をもちながら現場を体験するかは、理論を通じて考えていく必要があります。理論と実践を行き来することが大切なんです。

--東大生は厳しい受験勉強を乗り越え、多くの知識を手にしている人が多い一方で、だからこそ頭でっかちになることなく、現場での体験を大切にしてほしいという思いがあるのですね。私もあらためて意識して活動していきます。大学に入るまでの段階で、受験生にはどのような経験をしてほしいですか。

大塚先生:避けることなくいろんな経験をしてほしいと思っています。ボランティア活動などの課外活動を通して人とたくさん出会ってほしいですね。読書に関しても、受験期だからと言って勉強に関連する書籍だけに絞るのでなく、漫画でも文学作品でも多様な本に触れてほしいです。何が自分の引き出しになるかわからない、将来の自分が何をきっかけに、どんなことに興味をもつかわかりませんから。

--私も高校時代は「食わず嫌い」で興味分野がとても狭かったですが、大学に入って多様な友人と出会い、世界の広さを感じられるようになりました。なかなか前に踏み出せないとき、仲間からの刺激が一歩踏み出すきっかけになることが多々あります。

大塚先生:そうなんですね。橋本さんは中学高校の学生時代や受験勉強の中で、現在の学びに活きていると感じることはありますか。

--先ほどもお話ししたとおり、受験勉強の中で出会った「当たり前を疑う」という考えは、研究に向かう姿勢としても生きていると感じます。

「自分ごと」として課題に向き合う姿勢

--予備校での経験も今に生きています。私は高校3年生のころ、駿台予備学校に通っていたのですが、駿台の高校生クラスは講義以外の時間の使い方は受験生個人に委ねられています。他の予備校の中には1日の学習計画を立ててくれるところもあり、そこに通う友達を羨ましくも思うこともありましたが、自分を管理し、自分自身と葛藤しながら受験を乗り越える経験を通して、受験を終えたときに成長を感じることができました。「自分ごと」として受験と向き合うことができた気がしたんです。

大塚先生:受験に限らず、大学入学後も、そして社会に出てからも「自分ごと」として課題に向き合うのは重要な姿勢ですよね。

--最後に、東京大学に関心をもっている受験生、高校生、中学生へのメッセージをお願いします。

大塚先生:今受験勉強を控え、辛く感じている生徒さんもたくさんいらっしゃると思います。正直なところ私も本当に辛かったですし、東大に通う学生のほとんどが同じ思いをしてきたと思います。でもその辛さを乗り切ったという経験が、今も私を支え続けてくれています。乗り越えた先に、東大だけでなく、新たな世界が広がるはずです。応援しています。

--本日はお忙しい中、ありがとうございました。

身を置くことで成長できる、最高峰の学びの環境

 周りの友人たちがとにかく優秀なので、成長を貪欲に求めるマインドでいられる。研究だけでなく、課外活動や起業など多様な方面でそれぞれ活躍しているため、友人間で多様な知見を得ることができるのだ。友人関係も含む恵まれたヒューマンリソースは、東大の大きな魅力だと言えよう。

 東大に感じる憧れは人それぞれだと思うが、私のように入試問題をきっかけに進学を目指す人もいるだろう。駿台予備学校では、東大をはじめとする日本全国の大学の入試問題だけではなく、講師の先生や合格者のOB・OGの先輩から大学における研究の実績や研究室のようすなど、多様な情報を手に入れることができた。志望校を選ぶ際には、そういった情報を活用しながら、模試の合格基準や偏差値だけにとらわれず、自分の興味関心や大学そのものの魅力を軸とした大学選びをお勧めしたい。

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《カルぺ・ディエム 橋本匠》

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