【共通テスト2024】4年目の共テは「凪」思考力を問う傾向は変わらず…代ゼミ川崎氏に聞く

 2024年で4回目となる大学入学共通テストが終了した。これまで実施されてきた共通テストとの比較や出題傾向の総括、さらに新課程移行後初となる2025年度入試の対策について、代々木ゼミナール 教育情報センター 教育情報推進室 部長の川崎武司氏に聞いた。

教育・受験 高校生
PR
【共通テスト2024】4年目の共テは「凪」思考力を問う傾向は変わらず…代ゼミ川崎氏に聞く
  • 【共通テスト2024】4年目の共テは「凪」思考力を問う傾向は変わらず…代ゼミ川崎氏に聞く
  • 代々木ゼミナール 教育情報センター 教育情報推進室 部長 川崎武司氏
  • 「多くの文章や資料を読み解きながら、なぜその解答に至ったのかという思考力・判断力が問われる問題が増えている分、共通テストは『独自』の対策がどうしても必要」
  • 2025年度は新課程移行後初の試験。「情報I」が加わり、時間が長くなる科目もある
  • 「沈着・最新・大胆」代々木ゼミナールの壁に貼られた、受験生へのメッセージ

 2024年で4回目となる大学入学共通テスト(以下、共通テスト)が終了した。これまで実施されてきた共通テストとの比較や出題傾向の総括、さらに新課程移行後初となる2025年度入試の対策について、代々木ゼミナール 教育情報センター 教育情報推進室 部長の川崎武司氏に聞いた。

共通テスト4年目は「もっとも目立ったトピックがない」年に

--2024年の大学入学共通テストが終わりましたが、まずは昨年、そして過去3年間との比較など、全体の概況を総括していただけますか。

 今年はこの4年間でもっとも目立ったトピックがない年だったと言えます。昨年までの3年間、大きさ・種類は違えど「波」があったわけですが、今年はその点では「凪」と言えたかもしれません。

 センター試験から共通テストに変わった1年目は問題の分量、質ともに大きな変化が注目され、メディアでも大きく取り上げられました。さらに2年目は難化で平均点の大幅な下落、3年目も生物が難しく得点調整が行われました。

代々木ゼミナール 教育情報センター 教育情報推進室 部長 川崎武司氏

 一方で4年目となる今年は、思考力・判断力を問う問題の出し方が多少落ち着いてきたかなと思います。問題冊子は例年と変わらず厚いものの、全体を通して見ると、科目によっては会話文が減り、図表の数も少なくなりました。原点回帰とは言わないまでも、センター試験を彷彿とさせる出題も見られました。こうした傾向は、大学入試センターの中でノウハウが蓄積され、会話文や図表を多用しなくても、思考力や判断力を測れるような問題をつくれるようになったからと受け止めています。

--共通テストはセンター試験と比べ、「問題の難易度が高い」と言われています。今年の難易度はいかがでしたか。

 実は、代々木ゼミナール(以下、代ゼミ)の速報としては、問題の難易度はそんなに変わらないとお伝えした科目もありました。共通テストの難易度変化の評価は、「制限時間内にどれだけ解けたか」も点数に影響するため、単純な問題難易度だけでは決まりません。難易度が変わっていなくても、問題の分量が増えて制限時間内に解けないと、結果的に平均点が下がり「難しくなった」と受け止められがちです。

 今年は、この象徴的な事例が英語でした。SNSでは「英語は過去で一番難しい」と騒がれましたが、蓋を開けてみればそこまで平均点は下がりませんでした。実際には難易度よりも分量の問題で、読む量が増えたため、時間内に終わらなかった受験生が多いような印象でした。マークシート式で偶然点数が取れたのか、あるいは受験生全体のレベルが上がっているのか、結局のところ難易度というのは評価をしづらい部分がありますね。

--問題の「分量」が増えたというお話ですが、問題の「問い方」にも何か変化はありましたか。

 今年の英語では、特に大問4、5、6の単語数が多く、問い方もユニークでした。特徴的だったのは、たとえば大問5の小説のような文章では、単純な言葉の言い換えではなく、「この時の気持ちに近いのはどれですか」といったような、間接的な気持ちを聞く問い方をした点です。単語そのものの意味だけでなく、文脈をきちんと理解できているかを問われたため、受験生としては選択肢を選ぶ際に戸惑いがあったかもしれません。ただ、その戸惑いと平均点がリンクしていないのも事実です。

--なるほど。全体の平均点は昨年より上がる傾向ですね。

 そうですね。英語はリスニングが易しかったこともあり、英語全体としての平均点は昨年より上がっていますし、国語も昨年より10点以上アップしています。数学はやや下がったものの、いずれも5割は超えており、過去3回の点数から見れば決して低くはありません。

--つまり、受験生にとっても、過去問や模試などを活用し、事前に十分な対策をすれば「攻略」しやすくなったという見方もできますか。

 結局、英語のリーディングの平均点が昨年比マイナス2点程度に収まったのは、そういった事前のトレーニングでの「慣れ」による部分は大きかったのではないでしょうか。英語に関しても、マークシート形式のテストで偶然得点できてしまったという可能性はゼロではないものの、長文が出るという前提で、語数の多い長文を読むことに慣れた受験生が平均点を下支えしたのかもしれません。

 ですから対策については、共通テストの問題傾向がある程度つかめるようになってきました。その結果、高校でも「共通テストではこういう問題が出る」という前提で過去問や模試、問題集を活用した演習をすることで、以前は雲を掴むようだった共通テストをある程度「攻略」できるようになりつつあるとはいえるでしょう。代ゼミでも模試や実戦問題集、直前予想問題(白パック)、季節講習のテキストなどで的中問題があり、代ゼミのWebサイトに掲載しています。

テクニックだけでは通用しない共通テストの難しさ

--共通テストの受験者層についても教えてください。志願者数は6年連続で減少しており、推薦などの年内入試で入学する受験生の割合が増えている中、「共通テストはセンター試験に比べて学力の高い層しか受けなくなっている」という見方もあります。実際のところ、共通テストの受験者層に変化はあるのでしょうか。

 「学力の高い層しか受けなくなっている」という見方については、一概にそうとは言い難いです。私大専願が増えているのも事実ですが、特に地方は、地元から離れたくないという理由の他、都市部の私大に下宿をして通わせることが難しいといった家庭の経済的な理由からも、地元の国公立大学受験をベースに進路指導をされている学校が比較的多いと見ています。一方で、共通テストに変わってからは、なかなか点数が取りにくいのも確かです。その大きな要因としては、やはり共通テストの問題傾向です。

 センター試験の対策は私大の受験にも応用することができました。今でも私大の入試問題には、センター試験と似たような出題が散見され、標準的な知識を問う問題が数多く扱われています。このような問題にはコツみたいなものがあるのですが、共通テストはそれだけでは太刀打ちできないのです。もちろん、共通テストにもそうした問題は残っていますし、先ほども言ったように、この3年間である程度対策もできるようになってきました。ですがやはり、多くの文章や資料を読み解きながら、なぜその解答に至ったのかという思考力・判断力が問われる問題が増えている分、共通テストは「独自」の対策がどうしても必要になります。

「多くの文章や資料を読み解きながら、なぜその解答に至ったのかという思考力・判断力が問われる問題が増えている分、共通テストは『独自』の対策がどうしても必要」

 たとえば数学であれば、標準的な問題を解き進めて正しい値を埋めていくのではなく、文章題の解答を書くように、その解法に至るプロセスが文章として選択肢になっている。英語であれば、単純な言い換えではなく、問題文全体の文脈を踏まえ、その中身を問うような問題のつくりになっています。こうした背景からも、共通テストを敬遠する人は増えてきているのかもしれません。

新課程移行後の各科目「傾向と対策」は?

--来年度は、いよいよ新課程移行後初の試験です。共通テストに「情報I」が加わるなど、新課程後の変化にどう対策すべきでしょうか。

 やはり、まず基礎基本は大切です。これは、センター試験の時代からの大前提です。新課程だから、共通テストだからやらなくて良いということはありません。教科書の内容は演習を通してしっかりと理解し、定着させておきましょう。

英語

 今年話題になったように、共通テストの英語は分量が非常に多いので、まずはその分量に対応するための準備が必要です。そのために、まずはスピードにとらわれず、時間をかけてでも精読することを最優先にしてみましょう。さまざまな英文をしっかりと正確に読み進め、徐々にスピードを上げていく勉強法のほうが効果的です。

国語

 来年度からは大問が1つ増え、時間は10分長くなります。大学入試センターから出ている試作問題では、追加される第3問目に2種類の問題が出ていますが、追加される10分間だけではおそらく解き切れないと思います。では、どうしたらよいのか。試作問題を見る限り、追加される問題には図やグラフに加え、複数の文章もあり、それらを組み合わせて解く力が求められています。受験生の中には、こうしたいくつかの情報を分析することを苦手と感じる人は少なくないでしょう。だからこそ、情報を言語化する力、つまり「書く」練習が重要になってきます。まずは資料を読んで80字くらいに要約する練習から始めてみましょう。

 共通テストに記述問題は出ませんが、結局のところ「考えをいかに文章化するか」といった力も求められています。これは国語に限らず、他の教科にも通じるところです。

数学

 来年度からは数学②の内容が数学ⅡBから数学ⅡBCに変わり、必答問題に加えて3問中2問の選択から、4問中3問の選択となるので、時間は国語と同様に10分長くなります。内容で見ると、数列・ベクトル・統計的な推測(以下、統計)からの2分野選択から、新たに「平面上の曲線と複素数平面」という1分野が加わり、その4分野から3分野を選択しなければなりません。新たに加わる分野は数Cの範囲で理系の受験生にとっても難易度が高く、これまで選択していない統計を解答する受験生が多くなると推測しています。正直これは、多くの受験生にとってハードルが上がると言わざるを得ません。以前、統計は授業で扱う高校が少なかったこともあり、ご自身でも勉強しながら指導に当たられている先生方もおられるようです。

 繰り返しになりますが、公式丸暗記ではなく、その公式がどう導かれたのか本質から理解し、自分の言葉で説明できる力が求められています。ですが、それと同時に、数学において計算力は決して軽視できるものではありません。共通テストではセンター試験と比べて計算力だけを問う問題の数は減っているものの、新課程でも計算力は数学の基盤であることに変わりはなく、国公立の2次や私大の試験では、計算力がないと突破できない問題は依然として出題されているので、たゆまず手を動かす訓練も積み重ねてほしいと思います。

理科

 ある用語が化学から化学基礎で扱うなどの違いはありますが、理科全体で学ぶ内容に大きな変化はありません。数学と同様、基本的な知識と理解をベースにする点では変わりないのですが、理科については日常生活と結びつけやすい側面があるので、勉強したことがどのように日常生活に置き換えられるかといったことを想像できるよう、日頃から意識しておくとよいでしょう。

地歴・公民

 科目選択の仕方が変わり、さらにルールもあってかなり複雑になります。特に多くの受験生にとって影響が大きいと思われるのが歴史分野です。新課程では「歴史総合」が必履修科目となり、近現代の日本史と世界史をリンクさせる内容になっています。

 共通テストでは、「歴史総合、日本史探究」「歴史総合、世界史探究」の出題科目となっており、旧課程と大きな違いはなさそうに見えますが、試作問題を見る限り、旧課程での日本史、世界史片方だけの知識では解きにくい問題が一部出題されています。つまり、「歴史総合」では、同じ時代に日本、そして世界の各地で何が起きていたかといった多角的な視点が求められているということです。となると、従来型の「一問一答」に頼る暗記法では不十分で、覚えた知識から周辺の国々の状況などへ思考を広げるような勉強を意識していく必要があります。

 一方で、地歴、公民の科目全般において、史資料から読み取る訓練ができていれば、初見でも解ける問題もありますので、他の科目と同様、読解力、分析力が得点力につながることは間違いありません。

情報I

 新たな科目ですが、過度に不安になる必要はありません。試作問題では、プログラミングやデータ処理、リテラシーの問題など、ある程度傾向が出ています。配点については、圧縮して点数化する大学もあれば、受験は必須とするものの配点には入れないと公表している大学もありますので、まずは志望校の入試要項を確認してください。

 情報Iは少なからず、数学との親和性があります。そうした意味でも、数学を苦手とする文系の人にも頑張ってほしいと思います。問題集も出始めていますし、代ゼミでも来年度は模擬試験を実施しますので、演習を通じて出題形式に慣れておくようにしましょう。

2025年度は新課程移行後初の試験。共通テストに「情報I」が加わり、時間が長くなる科目もある

科目横断や文理融合の傾向へ

--お話を伺っていると、共通テスト全体として読解力、分析力、論理的思考力などが各科目に共通して、明確に求められていると感じます。文理融合の流れもありますね。

 大学でも、文理融合型の学科ができたり、入試でも文理どちらでも対応できるような科目を設定したり、入学後も学部を問わず情報系の科目履修を必須にしたりするところが増えています。大学入試センターでも、問題作成方針に「教科等横断的」という言葉を使っており、共通テストにも反映されつつありますね。

 親世代からの変化としては、文系なら英語・国語・地歴、公民、理系なら英語・数学・理科といった明確な垣根がなくなりつつあることは確かです。

--一方でそれらの新課程に対応できている高校と、まだまだ試行錯誤の高校があり、高校間での格差が広がっているように感じます。

 これは、とても悩ましく難しい問題です。やはり早くから対策できていることは今後も圧倒的に有利だと思います。まずベースとしては高校での基礎基本になりますが、今日お話ししたように、その上に積み重ねて養う力が一層求められるようになっています。今、高校で学べる範囲が限られているときには、ぜひ塾や予備校を積極的に活用して欲しいと思います。

 代ゼミでは、教室でのライブ授業はもちろん、スマホなどで見られる映像講座では一流の講師陣が講義・解説を行なっていますので、ぜひ有効に活用してみてください。

--最後に、共通テストで得点力をアップさせるためのアドバイスをお願いします。

 全教科に共通して言えるのは、最終的には制限時間内にどれだけ得点できるかが勝負であり、一にも二にもスピードに慣れる必要があるということ。けれどもそのためには、最初は時間をかけてでも解けるようになることが何よりも大切です。

「沈着・最新・大胆」代々木ゼミナールの壁に貼られた、受験生へのメッセージ

 まずは、基礎基本を固め、苦手な部分を着実になくしていく。その基盤ができれば、次に時間を縮めるためのアプローチをしていくというステップを踏み、徐々にスピードアップできるように進めていきましょう。

--ありがとうございました。


 新学習指導要領が実施された新課程で学んできた世代が、いよいよ受験生となる。来年度の2025年度入試からは、「情報I」や各教科の変更などもあり、不安に感じているご家庭も多いかもしれない。代々木ゼミナールでは、新高1・高2・高3生を対象とした「2024 春期講習会」を2月26日からスタートする。新規生限定で、最大2講座無料、自習室使い放題などの特典がある「春期無料トライアルキャンペーン」も開催されているので、早期から受験に取り組みたい、復習や新学年の先取りをしたいという方は、この春期講習から始めてみてはいかがだろうか。

新高1・高2・高3生対象 春期無料トライアルキャンペーン
代々木ゼミナール「春期講習会」詳細・申込みはこちら
映像受講・受講料無料
見れば納得!共通テスト「情報」学習のポイント
《相川いずみ》

教育ライター/編集者 相川いずみ

「週刊アスキー」編集部を経て、現在は教育ライターとして、ICT活用、プログラミング、中学受験、育児等をテーマに全国の教育現場で取材・執筆を行う。渋谷区で子ども向けプログラミング教室を主宰するほか、区立中学校でファシリテーターを務める。Google 認定教育者 レベル2(2021年~)。著書に『“toio”であそぶ!まなぶ!ロボットプログラミング』がある。

+ 続きを読む

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top