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電子黒板は子どもの思考力向上にも効果…東工大名誉教授 清水康敬氏

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東京工業大学 監事(常勤)・名誉教授の清水康敬氏
  • 東京工業大学 監事(常勤)・名誉教授の清水康敬氏
  • 電子黒板(デジタル黒板、インタラクティブホワイトボードともよぶ)
  • 一体型電子黒板
  • 授業の様子
  • 授業の様子
 教育関係者向けセミナー&展示会「New Education Expo 2010」(東京会場:9月22日~24日)で22日、東京工業大学 監事(常勤)・名誉教授で、総務省の「ICTを利活用した協働教育推進のための研究会」の座長も務める清水康敬氏が、「これからの教育の情報化の在り方」と題する基調講演を行った。

 内容としては大きく2つ--電子黒板(デジタル黒板、インタラクティブホワイトボードともよぶ)活用と効果と、今後の教育の情報化について説明した。ここでは電子黒板に関する講演より紹介する。

◆効果を示すことが重要

 清水氏は「(電子黒板の利用推進には)まずエビデンスとして、効果のデータを示すことが重要」とし、文部科学省の業務委託として、長崎県大村市立大村小学校、熊本県人吉市立西瀬小学校、熊本県人吉市立中原小学校、熊本県人吉市立第一中学校、熊本県人吉市第三中学校、岐阜県池田町立池田中学校の5校で実施した実践授業の、調査の一部を公開した。

 電子黒板については、以前日本の学校に導入されたが、授業前の設定の必要など教員の負担が大きく普及が進まなかった「移動式・全面投影型」、イギリス等で導入され普及が進んだ、プロジェクターを天井に固定するタイプの「壁・天井固定型」、さらにプロジェクター不要の「一体型」が紹介された。このうち、実践授業では「一体型電子黒板」が利用されたという。

◆教員研修は段階的に実施

 教員向けの校内研修としては、「一体型電子黒板の操作方法(体験)」、書画カメラ(教科書等を投影するカメラ)による実物投影の仕方(体験)」、「活用場面のデモ(模擬授業)」、「一体型電子黒板のポイント整理」、「一体型電子黒板活用の授業計画」を行ったという。清水氏は、研修は「段階的に行うことが必要」と説明する。

 実際の授業では、小学3年生の理科「こん虫をさがそう」で児童が調べたシートを元にした説明や、教員が電子ペンで書き込みながらの解説、5年生の理科「台風と天気の変化」で気象衛星の映像から台風発生の観測や、衛星写真の雲とアメダスの映像を比較、5年生の算数「直方体と立方体」で展開図の書き方の説明、板書の見取り図と電子黒板の展開図の比較などが行われた。

 「初回の実践授業における電子黒板の活用」としては、「静止画を見せる」(小学校76.0%、中学校65.4%、全体70.6%)がもっとも多く、「静止画に書き込む」(同68.0%、44.2%、55.9%)、「大事なところを丸で囲む」(同30.0%、44.2%、37.3%)、「動画を見せる」(同28.0%、44.2%、36.3%)と続き、「プレゼンのスライドを見せる」や「アニメーションを見せる」は全体で10%を切るなど、あまり活用されなかったようだ。これについて清水氏は、最初から機能をフル活用するのではなく、「まずは簡単に使えるということが大事」「スタート時に自分の能力を超えることをしないで、段階的に進めていくことが重要」と言う。

◆電子黒板は使いやすい

 では実際に利用した「教員の評価」はどうだろうか。「電子黒板は授業の中で使いやすいと思う」(同81.4%、94.2%、88.4%)、「文字を書きやすいと思う」(同98.0%、98.1%、98.0%)と概ね好評で、「電子黒板を利用するための準備は負担ではないと思う」(同94.0%、86.5%、90.2%)という結果となった。

 さらに、「電子黒板の活用は、子どもの意欲を高めることに効果があると思う」「子どもの理解を深めることに効果があると思う」は小中ともに100%で、さらに「思考を高めたり広げることに効果があると思う」も全体で99.0%と高い評価を得ており、実際に活用した教員が効果を実感した様子がうかがえる結果となった。

 初回実践授業後の評価については、下記の教員が回答した。
  導入場面:小学校38人・中学校39人・全体77人
  展開場面:小学校32人・中学校30人・全体62人
  終末場面:小学校11人・中学校10人・全体21人

◆思考力の向上にも効果

 児童を対象とした調査では、「学習内容等に関する客観的テスト」「学習内容等に関する実技テスト」「各教科の観点別評価にもとづくアンケート(4段階評定)」が実施された。

 テスト結果では、電子黒板活用の有無による、「思考・考え方」「技能・表現・処理」「知識・理解」「総合結果」の4項目の、教科ごとの比較が紹介された。

 理科では「科学的な思考」「技能・表現」「総合結果」、算数・数学では「数学的な考え方」「表現・処理」、社会では「総合結果」で特に著しい向上がみられたという。さらに、理科の「知識・理解」、算数・数学の「総合結果」、社会の「社会的な思考」でも効果が現れている。

 清水氏はこの結果を受け、「一部でデジタルでは考える力が育たないと言う意見もあるが、思考が向上したという重要な結果が得られた」と説明した。

◆子どもも効果を実感

 では子どもはどのように感じているのだろうか。アンケート結果による「関心・意欲」「思考・表現」「知識・理解」の各項目では、理科、算数・数学では「関心・意欲」「思考・表現」、社会では3項目すべてで大きな効果が、さらに理科では「知識・理解」についてもやや効果が出たという結果となり、子ども自身も電子黒板の活用は学習に有効と感じていることがわかった。

 清水氏は電子黒板の活用について、初めて授業を実施する教員が「負担に思わないこと」が大切であり、最初の研修のあり方が重要であると説く。また、授業を実施した教員はICT活用指導力が大きく向上し、授業後の客観テストでも児童・生徒の意識調査の結果からも「電子黒板の活用は効果がある」とまとめた。

 2009年の補正予算で一気に普及が進み、2010年3月31日時点で約56,000台(日本教育工学振興会資料より)が整備されたとされる電子黒板であるが、従来の授業に効果的に取り入れることで、大きな効果が期待される。清水氏が言うように、すべてをデジタルに移行すると言う考えではなく、教員の負担や子どもたちの学習効果のバランスをとりながら、ステップバイステップで、取り組むことが重要ではないだろうか。
《田村麻里子》

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