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「教育スクウェア×ICT」の進捗と今後の計画…NTT中山俊樹氏

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模擬教室で説明をするNTT 常務理事 新ビジネス推進室長 中山俊樹氏
  • 模擬教室で説明をするNTT 常務理事 新ビジネス推進室長 中山俊樹氏
  • 教育スクウェア×ICTの取り組みイメージ
  • 教師、家庭を含めたサポートの充実とカリキュラムや指導メソッドの確率を目指す
  • テレビ会議はWebカメラと会議用のマイク・スピーカで行う。回線はインターネットを利用
  • 全国5つの自治体の10の小中学校で実験中
  • コンテンツやインフラ整備などでのパートナー企業
  • 利用している端末は、3種類のタブレットPCと中学生(英語)用のノートPC
  • NTT 常務理事 新ビジネス推進室長 中山俊樹氏
 日本電信電話(NTT)が進める「教育スクウェア×ICT」は、教育クラウドをベースに学校と家庭をブロードバンド環境でつなぎ、授業や教材開発の効率化、連絡網、校務システムなどを支援することを目的に今年度スタートした民間のプロジェクトだ。その実証実験として、すでに5つの自治体の10の公立小中学校を対象に、デジタル教材や電子黒板、タブレットPCやノートPCを使った新しい授業が始まっている。

 3年計画で進められている「教育スクウェア×ICT」プロジェクトで、平成23年度はその第1段階として位置づけられている。その第1段階も終盤に差し掛かった12月初旬、大手町のショールーム「NOTE」内に設置された「模擬教室」で、これまでの取り組みや今後の計画を、日本電信電話 常務理事 新ビジネス推進室長の中山俊樹氏に聞いた。

◆プロジェクトは3段階で進める

 第1段階の今年は、まず春休みに対象となる学校のネットワーク環境の準備から始まった。1学期にはLAN、WAN環境やデバイス環境の整備を行い、夏休みには先生へのデジタル教材や電子黒板などの活用方法の指導・研修を実施、2学期からICTを活用した授業を開始したという。

 最初の年は、まずしっかりとした環境の土台づくり、学校や自治体、家庭との関係を含めてよいものを作る取り組みを強化している。これは、第2段階となる平成24年度の目標である、持続可能なエコシステムを構築するために重要なフェーズとなる。そして、最後の第3段階(平成25年度)には、教育ICTの普及と定着を目指す。プロジェクトは3年計画だが、教育ICTへの取り組みそのものは自律的に継続できるように育てることをゴールとしている。

◆実際の授業はどのように行われているのか

 では、現状、どのような教材や環境が整備され、どのような授業が行われているのだろうか。このプロジェクトでは、小学5年生の算数、理科、社会および中学2年生の英語を対象に、教材開発やICTを活用した授業が行われているが、たとえば算数では、図形の面積や立体を扱う授業に電子黒板やタブレットPCが活用される。三角形や平行四辺形の面積を求めるのに、元の図形を任意に切り離して長方形や正方形をつくり、公式を導き出す授業や、立体の展開図を視覚的に把握させる授業が、デモやビデオで紹介された。

 理科では、教材となるビデオ番組を視聴するだけでなく、自分たちの実験風景をデジカメやムービーカメラで撮影し、考察を加えたコンテンツで発表を行わせるといった、知識や推論、論理的思考を育てながら、プレゼンテーション能力も身につけさせるというものだった。

 社会の授業では、企業の担当者とテレビ会議で接続し、仕事や産業についての学習や議論が行われているという。さらに、総合学習の時間には、プロジェクトに参加している他校や企業の3者を結んだ授業を展開している事例も紹介された。

 中学校の英語では、ノートPCによる単語の反復学習や、ヒアリングと発音の学習のデモが行われた。単語学習では、間違った単語を集中的に学習できるよう工夫された教材となっており、自宅でも反復学習ができる。発音については音声認識技術を活用し、ネイティブとの比較、音節ごとの違いなどを確認しながら自習できるようになっている。また、オーストラリア・ビクトリア州のFairhills High Schoolとの、テレビ会議システムを利用した交流授業も開始されている

 これらの授業において、児童・生徒には基本的に1人1台のタブレットPC(小学生)もしくはノートPC(中学生)が提供されており、中学生には自宅用のノートPCも配布されている。タブレットPCは現状では、ドコモのGALAXY Tab、NECのLife Touch、東芝のFOLIO100の3種類が学校ごとに利用されている。

◆プロジェクトを支える技術およびパートナー企業

 教育スクウェア×ICTは、教育クラウドをベースとして学校や家庭をつなぐもので、ドリル、問題集、ビデオ教材、eラーニングなどのコンテンツはクラウド上に置かれている。

 クラウドのメリットの1つに、教材を端末ごとに揃える必要がなく、バージョン管理等が効率的になることがあげられる。プロジェクトの第1段階では、教材ライブラリーの充実や、デジタル教材や指導コンテンツ作成支援ツールを強化・充実させているそうだが、地域や学校を越えた教材の共有が図りやすいのもクラウドの特長だ。

 このプロジェクトには大手教科書出版社や教育関連企業も参画しており、すでに1,500以上の教材や指導コンテンツが用意されている。作成支援ツールでは、既存コンテンツに学校や先生独自の内容を加えたり、複数の教材を組み合わせた独自教材を作ることや、他の先生が作った教材を先生どうしで改良し合ったりすることも可能だ。共有可能範囲は、校内・全国など、目的に合わせて設定できるようになっている。

◆第2段階へ向けての課題と取り組み

 今後の課題は、ICT活用の授業を継続させるためのエコシステムにつきるそうだ。NTTとしては、新しいビジネスの創出という大義があるが、中山氏は、「教育に関する事業であるので、1社が単独でできるものではなく、限界がある」とも述べている。エコシステムといっても、NTTとパートナー企業だけで成立するものではなく、国・地域や自治体、NPOとの連携は不可欠であり、その仕組みづくりが必須であることを強調した。

 中山氏は、教育クラウドのエコシステムについては、宮城県女川町での実験である「コラボ・スクール」がひとつのモデルになるのではないかと注目している。コラボ・スクールは、震災以降に授業がままならなかった児童や生徒のための補習塾である。NPOが中心となり、教育委員会・学校や「教育スクウェア×ICT」を含む支援者の協力により、運営ができなくなった地元私塾の講師が、放課後の学校で補習を行ったという。

◆今後の取り組み

 「教育スクウェア×ICT」は、3年後以降の自立的に機能するシステムの構築に向け、次のステップへと進んでいくが、NTTでは「国の公教育ICT化の取り組みを踏まえ、国の施策と連携して、教育スクウェア×ICTを実施していく」としている。
《中尾真二》

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