女子高生の所持率は1年で3倍、利用傾向に男女差…小中高生と保護者のスマホ利用実態

 デジタルアーツは12月10日、小中高生とその保護者に行ったスマートフォンの利用実態調査の結果を発表した。子どもだけの調査ではなく、その親の利用動向も合わせて調査。

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デジタルアーツ 代表取締役社長 道具登志夫氏
  • デジタルアーツ 代表取締役社長 道具登志夫氏
  • デジタルアーツ 経営企画室 広報・コーポレートマーケティング課 吉田明子氏
  • この1年で子どものスマートフォン利用は急激に増えている
  • アプリはゲームや動画が多い
  • アプリ以外では通話やメールも定番機能だが、LINEやSkype、SNS利用も増えている
  • ネット上の知り合いについていろいろな情報を得ている
  • 女子高生はネット上の知り合いと会いたいと思う人が多い
  • 東京成徳大学 応用神学部臨床心理学科 博士(心理学) 田村節子教授
 デジタルアーツは12月10日、小中高生とその保護者に行ったスマートフォンの利用実態調査の結果を発表した。調査結果の概要発表に際して、調査の監修を担当した東京成徳大学 応用神学部臨床心理学科 博士(心理学) 田村節子教授の講演や、日本インターネットユーザー協会代表 小寺信良氏らを迎えたトークセッションなども行われた。

◆女子高生の半分はネットからリアルな出会いも希望

 まず、デジタルアーツ代表取締役社長 道具登志夫氏が「この調査は、スマートフォンをよりよいツールとして使ってもらうため実施しています。」と挨拶をかねて調査の目的を述べ、同社 経営企画室 広報・コーポレートマーケティング課 吉田明子氏が、調査概要についての説明を開始した。

 この調査は、2012年11月9日から10日にかけて、全国の10〜18歳の男女、およびその子どもの保護者(サンプル数=1,236)に対して行ったインターネット調査とのことだ。今回の調査の特徴は、子どもだけの調査ではなく、その親の利用動向も合わせて調査し、学年、親子での比較と前回調査との比較にある。

 スマートフォンの利用率は、親世代では前回調査(2012年6月)とほんとんど傾向に変化はないが、子ども世代では前回調査で30.6%だったものが今回調査では37.4%と着実に増えている。1年前の同じ調査では、子ども世代のスマートフォン利用率は14.4%だったことから比較すると、この1年で2.6倍まで増えていることになる。さらに特徴的なのは、女子高生であり、昨年11月の調査では20.9%だったものが、今回の調査では65.0%と3.1倍へと急激な伸びを示している。ちなみに男子高生は、32.0%から60.2%と2倍弱の伸びとなっている。

 ほかにもリアルな友達との連絡方法では、高校生の場合、メール・電話に加えてLINE、Twitter、Skype、mixiの利用率が高いことが結果に現れている。ここでも女子高生の友達との連絡にLINEを使う割合は54.4%と2人に1人がLINEを使って連絡をとっていること。そして、ネット上で知り合った人について、男子中学生は8割近くが「会うつもりはなく、ネットだけで十分」と考えているのに対して、女子中学生は5割以上が、ネット上の知り合いとリアルでも会ってみたいと考えている実態も浮かび上がった。

◆「付き合っているけど会ったことがない」も子どもたちの付き合い方のひとつ

 続いて、田村氏のセッションとなった。田村氏は、調査結果を踏まえ、まず注意しなければならないのは、コミュニケーションは言語と非言語の2つの手法で成り立っているとし、そのうち言語的コミュニケーション(会話、メール、チャット)は全体の3〜4割程度しか伝えておらず、声の調子、態度、視線、表情など非言語的コミュニケーションが残りの6〜7割を担っているのだそうだ。子どもたちは、スマートフォンを情報ツールやコミュニケーションツールとして活用しているが、これは言語的コミュニケーションがメインとなる。非言語的コミュニケーションとして、絵文字やデコメなどを活用しているが、それでも会話や認識のズレが生じることがある。

 これが、ネットいじめにつながったり、子どもたちの人付き合いや恋愛にも影響するという。前者は、まさにコミュニケーションのズレが結果としていじめになったりするパターンだ。後者については、つながりや心のふれあいを求める子どもの心理と、近年の社会や家庭の事情などが要因となっている現象だという。たとえば、付き合っている人がいるといいながら、その人には会ったことがない、といった事象が5〜6年ほど前から子どもの中では一般化しているという。これは、触れ合いを欲していながら、人間関係の難しさや多忙な社会から、ネットでのつながりを求め、知らない人でも優しいメールなどに癒されてしまう。ここで、コミュニケーションのズレが出ていても、一方的に相手の人物像を理想にカスタマイズできてしまうため、相手に会いたくなったり恋愛感情にもつながることがあるためだ。

 また、田村氏によれば、臨床や相談の現場では、スマートフォンでも携帯電話のときと同じような依存症の問題が寄せられていると警鐘も鳴らす。携帯電話を卒業しスマートフォンになったからといって、依存症や犯罪被害の問題は変わっていないということだ。

 今回の調査結果では、女子高生はネットで知り合った人たちについて、住んでいる地域、年齢、家族構成、職業などをよく把握しているということも(例:女子高生の79%が相手の住んでいる地域を知っている)明らかにされている。

 その情報はどのようにして入手しているか確認したところ、知り合ってからのコミュニケーションやSNSの公開情報だと思われるとの回答だった。しかし、ネット上ではこれらの情報の扱いには注意が必要だ。本人が公開している個人情報が正しいとは限らない。田村氏の言う子どもたちの人づきあいの変化を考えると、情報リテラシー、もしくはネット上での危険察知にかかわる行動センスのようなものの重要性が問われるところだろう。

 以上のような問題に対して田村氏は、「子どもへの心理教育、子どもが困ったときに相談できる窓口(援助資源)の設置、そして、子どもが大切にされているという実感ができる大人や家族の関わりが重要となります。」という。

◆男子は「あつめる」女子は「つながる」

 最後に、田村氏、小寺氏にデジタルアーツ 経営企画室 工藤陽介氏を加え、トークセッションが行われた。

 トークセッションでは、まず小寺氏が日本と海外のスマートフォン事情の違いについて発言した。海外では、未成年を対象としたスマートフォン調査はあまり行われていないと前置きしつつ、海外先進国ではスマートフォンは写真や動画撮影などに活用される傾向があり、新興国ではPCの代わりとしてWebブラウジングの利用が多いという。これに対して日本では圧倒的にメールなどの通信利用が多いそうだ。特に個人同士の連絡の用途が多く、SNSでも広く情報発信をするというより、個人的な知り合いとの情報交換やコミュニケーションがメインとなる。

 次に田村氏は、未成年のスマートフォン利用の傾向を男女で分けると、男子は「あつめる」がキーワードとなり、女子は「つながる」がキーワードとなっているという。男子の「あつめる」は、音楽、アイドルの写真や動画、趣味に関するコンテンツをダウンロードし、友人とそのファイルや情報を共有したりするためにスマートフォンを活用する傾向があるという意味だそうだ。女子の「つながる」は、メールやチャットなどで友人と会話を楽しんだり、ゲームやアバターを通じて友人とコミュニケーションしたり、友達の輪を広げるためのツールとしてスマートフォンを活用することだという。

 そして、スマートフォンの利用にはフィルタリングは「マスト」であるとし、しかし、一般的な親は適切なフィルタリングの操作などわからないことが多い。これが簡単にできないと、結局使ってもらえないことになったり、使いにくいとしてフィルタリングを解除してしまったりするため、サポート体制の充実と、子ども目線でのフィルタリングも必要との認識を示した。

◆ルーターでのフィルタリングが有効、しかし設定が問題

 小寺氏は、デジタルアーツの調査を見て、「スマートフォンの普及が高校生で進んでいることは、ある程度予想していましたが、LINEの浸透には驚いています。」と感想を述べた。背景には、通話料の問題があるという。スマートフォンでもパケット定額制は進んでいるが、音声通話は従量制のままであり、少ないおこづかいでスマートフォンを維持しなければならない高校生には負担が大きい。これまではウイルコムのような無料通話ができる端末を持つなど工夫していたが、LINEは1台のスマートフォンで無料通話やチャットなども楽しめ、絵文字に相当するスタンプ機能など「子どもの利用に最適化されたシステム」(小寺氏)だと述べる。

 加えて、そのLINEが最近、認証方法に電話番号かFacebookのアカウントが必要になったが、その変更に対して、iPod touchでLINEを使っていた高校生ユーザーから不評を買っているという事例を引き合いに、マルチデバイス化とWi-Fiの在り方にも言及した。

 PC、スマートフォン、タブレット、ゲーム機と家庭内でWi-Fiに接続される機器がどんどん増えてきている。そのため、家庭内でのWi-Fi環境の整備、セキュリティが重要になってくるというのだ。単純に端末が増えてくると、それぞれにフィルタリングソフトを入れるのも効率的でないし、コストの問題もある。この場合、ルーターにフィルタリングやセキュリティ機能を集中させる方法があるが、端末やユーザーごとのセキュリティレベルの設定や管理が難しくなる。これを解決するには、ベンダーがそのような機能をもち、設定までしてくれる製品を提供するなどの対応がどうしても必要となる。さらに、そのためには、ベンダーだけでなく契約者の年齢情報をもっているキャリアの協力(例:auのLINEが年齢によって検索機能が制限されている)も不可欠になると指摘した。

 工藤氏は「コンテンツのダウンロードや共有は、注意しないと著作権法に違反することにもなりかねません。子どもたちにそういった教育が必要であるとともに、業界としても対策が必要な部分です。」という。子どもたちは無料のダウンロードサイトを利用しがちだが、セキュリティの専門家によれば、「無料、MP3」などのキーワードで検索して上位にくるサイトはかなりの確率でマルウエアの配布サイトであるともいわれている。法律だけでなく子どもたち自身を守る意味でも必要な対応だろう。

 そして、フィルタリングの操作性や機能については、「今後もブロックの精度アップや利用者への啓発活動などに力を入れたいと思います。」と答えていた。
《中尾真二》

中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。エレクトロニクス、コンピュータの専門知識を活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアで取材・執筆活動を展開。ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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