大規模公開オンライン講義は日本の教育を変えるか? JMOOC4/14開講

 日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)は4月14日、国内では初となるMOOC(Massive Open Online Course)を開講した。最初のコンテンツである東京大学 本郷和人教授の「日本中世の自由と平等」の配信を開始した。

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JMOOC理事長 白井克彦氏(放送大学学園 理事長)
  • JMOOC理事長 白井克彦氏(放送大学学園 理事長)
  • JMOOC事務局長 福原美三氏
  • まずはプラットフォーム2種類で開講
  • 申込みから修了までの流れ
  • 講座の基本構成
  • NTTドコモ ライフサポートビジネス推進部 伊能美和子氏
  • アカウントを作成し、マイページにログイン
  • 本郷教授の授業動画のデモ
 日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)は4月14日、国内では初となるMOOC(Massive Open Online Course)を開講した。

 JMOOCでは、昨年の発足以来、日本でもMOOCsによるオンライン講義の配信を開始すべく準備、受講者の募集を行ってきたが、この日、最初のコンテンツである東京大学 本郷和人教授の「日本中世の自由と平等」の配信を開始した。

 開講に際して行われた記者発表では、JMOOC理事長 白井克彦氏(放送大学学園 理事長)が「本日は日本の高等教育にとって記念すべき日になるのではないか」と挨拶し、教育の大衆化が進み世界中で改革の機運が高まり、これからの人類の発展、課題克服のための教育基盤を考えるというマクロな要求が、MOOCsという新しい取組みを生み出したのではないかと、その背景を説明した。

 MOOCsといった場合、CourseraやedXが有名だが、JMOOCは、産学官が共同で取り組み、大学教育だけでなく、高校、中学、あるいは企業教育や社会人学習まで広範な教育を考えている点に特徴があるという。そして、アジアを中心に世界展開も視野にいれている。

 次にJMOOC事務局長 福原美三氏が、JMOOCのオンライン講義の概要を説明した。JMOOCには現在、80以上の大学、機関、企業、個人が会員として登録している。このうち特別会員が7社、正会員50のうち18が大学としての登録だ。福原氏は、この会員数をまずは100まで増やしたい考えだという。将来的には200くらいまで増やし、受講者は100万人規模を目標としている。

 JMOOCは、現在のところ2つの講義配信プラットフォームをもっている。ひとつはNTTドコモが運営する「gacco(ガッコ)」と、もうひとつは放送大学が運営する「OUJ MOOC」だ。福原氏によれば、どちらも無料であり、受講登録から修了までの流れは同じだ。それぞれのサイトからアカウントを登録し、あとは好きな講義を選んで受講(コンテンツの視聴)をしていく。多くの講義が4週間程度のコースとなり、途中の小テストのほか、最後に修了試験となる問題やレポートがある。最終のレポート等で規定の評価が得られれば、講義の修了証が発行される。

 講義のビデオは10分程度のものが1単元となる。これを1週間に5~10本程度視聴し、間に学習確認の小テストを受けたり、掲示板による議論も行えたりする。掲示板では、講師などへの質問、受講者どうしの議論など双方向でのコミュニケーションが可能だ。また、本郷教授のコースを始めいくつかの講義は、対面授業(有料)も予定されている。参加者はJMOOCを受講している前提で、対面授業は反転授業の形式となる。

 申込み状況について、gaccoの数字が公表された。現在、5つの講座について受講申込みを受け付けており、応募者数は33,000名だそうだ。これは延べ人数ではなく純粋な申込者数だ。申込者の属性については、平均年齢が46才、男性70%、女性30%という内訳とのことだ。最終学歴は52%が4年生大学であり、大学院などを含めると60%以上が大学卒業以上となる。

 欧米のMOOCsでは、20代から30代の受講者が多いが日本は比較的高い年齢層が多い。これはJMOOCの特徴でもあると福原氏はいう。

 4月14日現在、予定されている講座は19であり、経営マネジメントや統計学の他、アニメ・ゲームに関する講義やピクトグラムに関する講義など広範な分野をカバーしている。

 続いてNTTドコモ ライフサポートビジネス推進部 伊能美和子氏が、gaccoのログイン方法や画面操作、その他の機能を説明した。伊能氏が強調するgaccoの特徴は、スマートフォンやタブレットなどマルチデバイスに対応する機能(レスポンシブ対応)だ。courseraなどMOOCsはコンテンツや画面設計がPC向けになされており、多様な画面サイズをもつモバイルデバイスに正式対応しているMOOCはgaccoが世界初とする。スマートフォンやタブレットで受講する場合、場所を選ばないことになるので、講義の音声を消して字幕を表示する機能もサポートされるという。また、PC版は、コンテンツのダウンロードが可能で、再生スピードの調整などもできる。
《中尾真二》

中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。エレクトロニクス、コンピュータの専門知識を活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアで取材・執筆活動を展開。ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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