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【EDIX2014】3.6人に1台のタブレット導入で見えたこと、1人1台環境との比較

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パイオニアVCブースでの模擬授業の様子
  • パイオニアVCブースでの模擬授業の様子
  • 岩崎有明教諭の模擬授業
  • ストローを使って地層を切り抜く
  • タブレットで撮影
  • 解答をタブレットに書き込む
  • 電子黒板で各グループの見解を共有
  • 楠本誠氏の模擬授業は個別の復習作業からスタート
  • 授業ノートを見ながら復習
 5月21日に開幕した教育ICTの展示会「第5回教育ITソリューションEXPO」(EDIX)の企業ブースでは、各社がさまざまな模擬授業を実施している。2日目の22日には、パイオニアVCのブースにて、中学教諭2名による中学理科の模擬授業が行われた。

 模擬授業を行ったのは、鳥取県岩美町立岩美中学校の岩崎有朋教諭と、三重県松阪市立三雲中学校の研究主任を務める楠本誠氏の2名。模擬授業では、電子黒板と授業支援ツールがセットとなったパイオニアのソリューション「xSync(バイシンク)」と富士通のタブレット端末が活用された。

◆3.6人に1台のタブレットで地層の重なりを探る

 岩崎有朋教諭の授業は、地層の重なりを探るというもの。寒天で作った地層のモデルをストローで刺し、色で分けられた地層が場所によってどのように異なるのかを調べるという内容だった。

 参加者は4人1組の6つのグループに分けられ、タブレットは各グループに1台配布。政府が平成23年3月までの導入を目標とした3.6人に1台のタブレット環境をイメージした模擬授業だ。ストローを刺す場所によって地層が異なるため、複数のストローを利用し、タブレットで撮影。各グループの画像を電子黒板で表示し、グループごとに発見したことを共有していた。

◆1人1台のタブレットで復習し、4人1組で恊働学習

 一方、楠本氏の授業は、政府が2020年までの導入を目標としている1人1台のタブレット環境で行う中学理科の授業。単子植物と双子植物の見分け方を復習する課題が与えられ、タブレットに保存された前回までの授業ノートを確認しながら、参加者はひとりひとり課題を解いていく。

 復習の時間が終わると、恊働学習が始まる。4人1組になり、その中の3人はタブレットを裏返すようにと楠本氏が指示。グループで行う課題に必要なタブレットは1台のみで、1台を4人で囲んで意見交換し、課題を解決していく。

 恊働学習の内容は、玉ねぎの食べられる部分は「葉」「茎」「根」のどの部分かを考えるというもの。各グループの見解を電子黒板に表示し、科学的根拠を発表させる。その後、玉ねぎが各グループに配られ、断片を実際に見ながら楠本氏が授業内容をまとめていく。

 2つの異なる模擬授業をセットにして実施したのは、参加者に3.6人に1台と1人1台の授業環境を比較してほしかったからだと、パイオニアVC 文教事業統括部長の太田泉氏は話す。

 1人1台端末の実現を前に政府が目指した3.6人に1台の環境は、費用面からしても学校側にとって現実的な構図だ。その一方で、1人1台の環境が整えられないのであれば、導入を控えるという考え方をする学校も少なくないと太田氏はいう。1人1台環境でなければ効果が期待できないという懸念は、恊働学習において問題とならないようだ。

 1人1台の環境で模擬授業を行った楠本氏も、グループで作業を行う際は、使用タブレットをグループで1台に限定していた。1台のタブレットを囲み、グループで議論しながら課題を解決していく課程は、岩崎氏の模擬授業と変わらない。

 フューチャースクール推進事業実証実験担当校である三雲中学校は、1人1台のiPad環境を取り入れた。三雲中学校の環境について楠本氏は、1人1台の導入を行ったからこそ、「活用しなければいけない」という意識が学校内にあったと話す。機器に使われる授業になってはならないと強調したうえで、グループに1台または3.6人に1台という環境は、教師や生徒にとって理想的なステップになるのではないかと提案する。

 1人1台の環境が整っていない岩美中学校の岩崎氏は、「どうしてもその場面でタブレットが必要か」ということを常に考えていると話す。恊働学習では、関わろうとする態度、グループで作り上げる経験、アナログでも表現できる力を育てることが大切で、3.6人に1台という環境は、これらの能力を育成することに適しているようだ。

 1人1台の環境は理想だ。1台のタブレットを複数の生徒が利用する場合、「タブレットの中にある学びの足跡は誰のものか」という問題が発生すると岩崎氏は話す。1人1台のタブレット環境が整えば、生徒ひとりひとりがそれぞれの「学びの足跡」を持ち運ぶことが可能になり、端末を個別学習でも活用できるようになる。

 ただ、恊働学習においては、3.6人に1台のような環境が、生徒たちにとってより効果的なものになることを模擬授業は提示した。最終的には各教師の授業デザイン能力の話になると語る楠本氏、岩崎氏は、ICTを導入することで教師の役割が「teacher」から「director」「producer」「coach」「facilitator」に変化すると解説する。導入端末数が大きく異なる2校の教師による模擬授業は、導入端末数ではなく、活用方法が生徒の学びを左右することを物語っていた。
《湯浅大資》

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