Imagine Cup 2015日本予選大会、プレゼンテーション詳細

 4月11日、羽田空港国際線旅客ターミナル4階のTIAT SKY HALLで開催された、Microsoft主催の学生向けITコンテスト「Imagine Cup 2015 日本予選大会」について、4月13日のイベント概要紹介に続き受賞作を中心としたプレゼン内容を紹介する。

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歴代のImagine Cup日本代表によるメッセージが寄せ書きされたフラッグを持つ、チーム「すくえあ」のメンバー
  • 歴代のImagine Cup日本代表によるメッセージが寄せ書きされたフラッグを持つ、チーム「すくえあ」のメンバー
  • ゲーム部門の部門賞を受賞した、チーム「絆」の「Fleeting Light」
  • チーム「Creative House」の「PicGather」
  • チーム「RTableProject 」の「TWIDIVER」
  • ワールドシチズンシップ部門の部門賞を受賞した、チーム「CHAMPIGNON」の「CHILDHOOD」
  • チーム「HackforPlay」の「HackforPlay」プレゼンテーション
  • チーム「Web3D Makers」の「jThird」
  • イノベーション部門の部門賞、最優秀賞に輝いた、チーム「すくえあ」の「すくえあ(SCREEN feels AIR.)」
 4月11日、羽田空港国際線旅客ターミナル4階のTIAT SKY HALLで開催された、Microsoft主催の学生向けITコンテスト「Imagine Cup 2015 日本予選大会」について、リセマムでは4月13日のイベント概要紹介に続き受賞作を中心としたプレゼンテーション内容を紹介する。

 Imagine Cupにはゲーム部門、ワールドシチズンシップ部門、イノベーション部門の3つがあり、日本からはゲーム部門の応募がもっとも多かったという。会場には、各部門の予選を通過した計9チームが集結し、10分間のプレゼンテーションを行い審査員からの5分間にわたる質疑応答が行われた。

◆ゲーム部門

 ゲーム部門は、インタラクティブな遊びの体験を与えるゲームコンテンツが対象の部門。プレゼンテーションの先陣を切ったのは、チーム「絆」の作品「Fleeting Light」。メンバーは、トライデントコンピュータ専門学校の水野沙織氏、クレメンス・ベルガー氏、角威希氏、新宮悠輔氏。

 チーム「絆」がつくったゲーム「Fleeting Light」は、タブレットを使って楽しむもの。1つの画面を向かい合った2人が操作し、ステージをクリアするには、2人で同時にボタンを押すなど、お互いの協力が要所要所で必要になる。メンバーは、実際にプレイすることでその姿をカメラで撮影し、大型スクリーンに映して遊ぶことで2人の間に絆が生まれることを壇上でアピールした。

 「Fleeting Light」が部門賞を獲得すると、審査員から「2人で協力し合って遊ぶということは、膝を突き合わせることになるので、親しくない間柄の人がやるにはハードルが高いのではないか」といった質問が出たが、メンバーは「膝が触れ合うことであっという間に絆が生まれます」と自信を持って答えていた。

 次に登場したのは、チーム「Creative House」の作品「PicGather」。メンバーは、バンタンゲームアカデミーの山田真充氏、杉本圭次朗氏、細浦稚菜氏、大友毬衣氏。

 同作品のコンセプトは「絵を描き、ゲームと共に子どもを成長させる」というもので、葉っぱや雲などを描くとそれらが画面に登場し、木を成長させていく仕組みのゲーム。メンバーは、「知育」をより簡単に実践できる点と、「文字」を一切使用していないのでまだ字が読めない子でも楽しめるという点、そして言語や年齢に関係なく遊べるという3点を、自らのゲームの特長として強調していた。

 3番目に登壇したのは、チーム「RTableProject」の作品「TWIDIVER」。メンバーは、HAL 大阪の小野将裕氏、牧山拓斗氏、水嶋悟史氏、福士達哉氏。

 「TWIDIVER」は「学生の間に、自分たちが本当に楽しめるゲームを、自分たちがつくりたいようにつくり、学校の歴史に名を刻みたい」という思いから生まれたアクションゲーム。剣をはじめ、さまざまな武器を用いて戦いながらステージをクリアしていき、1人から最大8人まで同時に楽しめる。

 プログラミングはもちろん、キャラクター造形などの完成度も高く、プレゼンテーションの合間の休憩時間には、来場していた子どもが「TWIDIVER」を気に入り、何度もプレイする姿が印象深く見受けられた。また、キャラクターや武器、世界観が載ったコンセプトブックまで仕上げるこだわりようにも驚かされた。

◆ワールドシチズンシップ部門

 ワールドシチズンシップ部門は、病気や災害、人権、貧困、情報へのアクセス、男女の平等といった社会問題をITで解決するアプリやサービスが対象の部門。最初のプレゼンテーションは、チーム「CHAMPIGNON」の作品「CHILDHOOD」。メンバーは、筑波大学の西田惇氏、高鳥光氏、佐藤綱祐氏。

 部門賞に選ばれた「CHILDHOOD」は、子どもの視点・視野をシミュレーションできる作品。カメラを大人のウエスト部分に装着すると、そのカメラから撮影された画像が顔に装着されたゴーグル内のモニターに投影される。また、子どもの手を模した人工の手を大人の掌の内側に装着することで、視覚だけでなく、触力覚(触った感覚)も疑似体験ができるようになっている。

 「車のように空間を移動するものでなく、子どもの頃に戻れる、時間移動をするもの」だというこの作品は、エンターテイメントであると同時に、医療関係者や教師などに役立つ、子どもへの理解を促進する意識教育支援ツールでもあるという。またメンバーは、建築やプロダクト(製品)デザイナーなどの社内研修用キットとしても貢献できると訴えた。

 同部門の2番目に登場したのは、チーム「HackforPlay」の作品「HackforPlay」。メンバーは、石川工業高等専門学校の寺本大輝氏、谷口諒氏。

 「HackforPlay」は騎士がドラゴンを倒すゲームであり、最大の特長は簡単にコードが書き換えられることである。子どもがプログラミングを覚えながら楽しめるつくりになっており、数値を変更することで騎士のエネルギーを高めたり、ドラゴンを弱くしたり、ロケーションに手を加えることもできる。

 また、同メンバーは既に子ども向けのワークショップで8,000人以上を集め、プログラミングを教えていることをスライド映像とともに紹介した。また、同作品には専用サイトが用意され、誰かがコードを書き換えたゲームを楽しみ、そこからさらに自分でコードにアレンジして遊ぶことができるという魅力を伝えた。

 同部門の最後に登壇したのは、チーム「Web3D Makers」の作品「jThird」。メンバーは新宿山吹高校の松田光秀氏、慶應義塾大学の河崎純真氏、清水快氏、東京大学の酒井崇至氏。

 メンバーによりアピールされたのは、「プログラミングは夢をかなえる道具」であるということ。メンバーによると、プログラミングによってビル・ゲイツ氏やマーク・ザッカーバーグ氏は成功を収めたものの、プログラミングには「できる人とできない人の間に格差」があり、「面白くない」「面白そうに見えない」ということが入門の壁であるという。

 その解決策として、メンバーはWeb3D(Web上で3次元グラフィックスを表示するもの)でプログラミングを大衆化することを提案。3Dの面白さ、簡単さなどを実際にライブコーディング(その場でコーディングして見せること)を披露しながら訴えた。

◆イノベーション部門

 イノベーション部門は、既成概念や常識を打ち砕くサービス、テクノロジーの新しい使い方を提案するアプリや最先端のテクノロジーを駆使したアプリなどが対象の部門。まず、登場したのは、チーム「すくえあ」の作品「すくえあ(SCREEN feels AIR.)」。メンバーは、香川高等専門学校の山崎啓太氏、金子高大氏、瀧下祥氏、東山幸弘氏。

 「すくえあ」のメンバーが、ステージ上で大型ディスプレイに息を吹きかけると、モニターに映る暖簾がふわりと揺れた。また、うちわを仰ぎ風を当てると、暖簾は異なる揺れ方を見せ、風を感じることのできる「すくえあ(SCREEN feels AIR.)」に会場から驚きの声があがった。

 作品の仕組みは、ディスプレイ前に網戸を取り付け、その網戸の裏側に磁石を取り付けておき、吹き付けられた風によって網戸の表面と磁石が揺れると、それをセンサーが感知し、あらかじめプログラミングされた暖簾のビジュルアルが揺れるというもの。風を視覚化するという、ほかにないアプローチであることが部門賞のみならず、最優秀賞(日本代表)獲得につながった一因だろう。

 次に登壇したのはチーム「MOOMAN」の作品「P.M.Karaoke」。メンバーは鳥羽商船高等専門学校の島影瑞希氏、矢倉章恵氏、栗原亨穂氏、小山紗希氏。

 女性のみで構成された「MOOMAN」のメンバーは、カラオケで、自分以外の人が歌っているのを多くの人が聴いていないことについて、自らが調査したデータを見せながら言及し、その解消に貢献するものが「P.M.Karaoke」だと紹介した。

 「P.M.Karaoke」とは、プロジェクションマッピングとカラオケを組み合わせたもの。カラオケに合わせ、コンピュータで作成した映像をカラオケボックス内の壁面に投影。また、楽曲に合わせてスマートフォンをシェイク(振る)ことで映像が変化するなど、カラオケをみんなでより楽しむためのサービスを提案した。

 最後にプレゼンテーションが行われたのは、チーム「Robograph」の作品「Robograph」。メンバーは、大阪府立大学の石丸翔也氏、同志社大学の村田温美氏、立命館大学の中川峰志氏、立命館大学の松本崚氏。

 「Robograph」は、自走して自動的に写真を撮るテクノロジーを搭載している。フィルムカメラ、デジタルカメラ、スマートフォンと進化してきたカメラの歴史を紹介しながら、メンバーは次世代の撮影テクノロジーとして「Robograph」をアピールした。また、メンバーはスマートフォンやSNSの普及とともに高まった「selfie(自撮り)」欲求を満たすサービスとして、被写体の位置に合わせ自動で移動し、美しい写真の構図を自動的に選んで撮影する機能の魅力を紹介した。

 9チームのプレゼンテーションはいずれも素晴らしく、審査員は頭を悩ませたがようだが、最優秀賞(日本代表)は「すくえあ」に決定。高い技術力と優れたアイデアに加え、ゲーム、広告、メディアアートへの拡張性など、幅広い可能性を感じさせた。

 Imagine Cup 2015世界大会は、7月27日から31日まで米国シアトルで開催予定。「世界一になります」と力強く宣言した、「すくえあ」リーダーの言葉が現実になることを期待したい。
《大倉恭弘》

大倉恭弘

大阪生まれ。美大卒、デザイナー出身のコピーライター。教育、ICT、スポーツなど幅広い分野のインタビュー取材に携わる。プログラミング、コーディングをこなし、4コマ漫画の連載も。企画・編集協力に「ナニワなんでもタイガース」他。趣味はウクレレ、Sonic Piを用いた楽曲制作、スケッチ、GIFアニメ制作。

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