第一線で活躍する医療スタッフと交流、広尾学園 医サイの学びと進路支援

 広尾学園中学校・高等学校では、7月21日、「医進・サイエンスコース」授業の一環で、高校2年生を対象とした「チーム医療講演会」が行われた。当日は、医療現場に携わる現役病理医や看護師が、生徒たちに講義やワークショップを行った。

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講師らに質疑応答を行う生徒たちのようす 講演後の「カフェテリアトーク」
  • 講師らに質疑応答を行う生徒たちのようす 講演後の「カフェテリアトーク」
  • 小澤氏によるワークショップ 生徒たちは、コミュニケーション能力の必要性を楽しみながら学んだ
  • 小澤氏によるワークショップ
  • 順天堂大学医学部附属練馬病院 病理医 小倉加奈子氏
  • 順天堂大学医学部附属練馬病院 医療情報センター室 看護師 小澤淳子氏
  • 熱心にメモを取る姿や、講師の話にうなずく姿が見られた
  • なかには2回質問をする生徒も。みな積極的に発言していた
  • 講演終了後には、「修了証」が手渡された
 広尾学園中学校・高等学校では7月21日、「チーム医療講演会」が行われた。当日は、医療現場に携わる現役病理医や看護師が、生徒たちに講義やワークショップを行った。

 広尾学園が2011年に新設した「医進・サイエンスコース(以下、医サイ)」は、"第一線で存分に活躍できる医師、研究者、先端エンジニアの育成を目的とした、医学部、理系学部を目指す"コース。今回の特別講演会には、医サイコースの生徒を中心に、医療分野に興味を持つ高校2年生の希望者30名が参加した。

◆生徒へ針路を示す、広尾学園ならではの特別講義や講演会

 広尾学園では、各分野の第一線で活躍する人々を招き、講演会や特別講義などを積極的に行っている。今回の「チーム医療講演会」に招かれたのは、順天堂大学医学部附属練馬病院 病理医 小倉加奈子氏、同医療情報センター室 看護師 小澤淳子氏ら講師2名。そのほか、同じ職場の医療スタッフである臨床検査技師・細胞検査士 飯野瑞貴氏、病理医 坂口亜寿美氏、研修医の小名木寛子氏、浦礼子氏、順天堂大学医学部6年 長瀬駿介さんらを迎え、医療分野を志す生徒たちに講演を行った。なお、同講演会は「病理診断の総合力を向上させる会」の協力を得て開催された。

◆第一線で働く生の声で進路選択の視野を拡大

 講演会のテーマは「チーム医療とは?」。小倉氏と小澤氏による講演のほか、ワークショップや質疑応答をとおし、生徒たちは医療現場に携わる人々の多さやコミュニケーション能力の必要性、チームワークの重要さを学んだ。

 小倉氏は、ひとりの乳癌患者の診断から治療に至るプロセスに沿って、病理医の仕事やを中心に「チーム医療」について紹介。さらに、医療の現場には医師だけではなく臨床検査技師(細胞検査士)、病理医、臨床心理士、栄養士、看護師などあらゆる職種の人間が関与し、医療はチームで行うものであることを説いた。

 小倉氏によると、医療は「患者、そしてその家族の幸せのためにさまざまな職種のスタッフが協力して行う共同作業」。医師を志望しているという生徒は、この講演を受け「医師だけが目指すべき道ではないかもしれない」と、将来に対する視野が広がったようだった。

 小澤氏は、「乳がん患者からみたチーム医療」と題し、小倉氏の説明する「チーム」とは何かを患者の視点から紐解いた。小澤氏は、講演のなかで医療にはテクニカルな知識や技術はもちろん、それ以上に対人コミュニケーションが必要であることを説明。

 同氏は、説明ののち医療現場で実際に用いられているという、コミュニケーション能力向上のトレーニングを模したワークショップも開催。生徒たちは、言葉のみならずジェスチャーやアイコンタクトで相手の意思を読み取り、自分の意思を伝える難しさに触れた。

◆普段は関われない分野で活躍する社会人と交流

 小倉氏と小澤氏による講演会ののち、講師2名をはじめ今回の講演に参加した医療スタッフに対し質問を行う時間が設けられた。生徒たちは、「医療に携わる仕事のやりがい」「働いていて大変なこと」「女性としてのキャリア」など医学分野に進むうえで気になる質問のほか、日々の勉強でやる気を保つためにはどうしたら良いか、などを気兼ねなく積極的に講師に質問。飯野氏や坂口氏を始め、講師や医療スタッフはみな自身の学生時代や現在の仕事を振り返り、真摯に回答を行った。

 すべての講演と質疑応答が終了したあと、「病理診断の総合力を向上させる会」から生徒たちにチーム医療講演会修了証が手渡された。講演会終了後も、生徒らは講師のもとへ駆け寄り各々自由に交流を図っていた。

◆学びに貪欲、自ら進んで進路を切り拓く生徒たち

 小倉氏は、今回の講演会を振り返り「皆さん目の付け所が良く、質疑応答にも積極的。こちらが伝えたいメッセージを汲み取ってくれ、講演会を楽しんでくれたようで講演できて良かった」と語る。同氏によると、医学を含む理系分野は専門知識や技術といった「テクニカル」な要素が多いが、現場では技量以上にチームプレーや対人スキルが必要であるという。だからこそ、「医療はまず、人間性が問われる。その人間性は、今の高校時代のすべての経験が繋がる」とし、生徒らにも「今の生活を大事に、勉強以外でも行事や学外の活動を通じたくさんの人と関わって、人間性を豊かに育んでほしい」と応援メッセージを送った。

 講演を受ける生徒たちの視線は真剣そのもので、熱心にメモを取るようすやチーム一丸となってワークショップに取り組む姿が見られた。これまでにも数々開催されてきた特別講座や講演会だが、その盛況ぶりは小倉氏も感心するほど。

 広尾学園医進・サイエンスコースマネージャー木村氏は、「実際の現場のリアルな声を聞くことは、生徒たちの心にダイレクトに響き大きな刺激となる。それが、彼らの視野を広げ、将来の進路選択の糧となってほしい」と語っている。
《佐藤亜希》

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