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個別化と学習者主導が主流…米国で急速に普及「ブレンディッドラーニング」

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 21世紀に入り、ネットの発達とデジタル機器の進化により社会の情報化、グローバル化が急速に進んでいます。これに合わせて欧米先進国では、工業化社会の発展にともない進化してきた教育制度を改革し始めています。

 私自身、米国留学、国際金融、中国駐在を経て、多様化した21世紀のグローバル社会で必要なスキルを子どもたちに教えるために5年前に横浜で学習塾を開校しました。本連載では、こうした経験をベースにプロの教育者とはやや異なる視点から、海外の教育制度をご紹介することにより、東京大学を頂点とする狭い学歴ピラミッド社会の中にいるだけでは見えてこない日本の教育の問題点について考えていきたいと思います。

◆アメリカでは「個別化」と「学習者主導」が浸透

 アメリカの教育界で今もっともホットな話題のひとつが「ブレンディッドラーニング(BL)」です。生徒ひとりひとりのニーズに合わせて学習カリキュラムを個別化し、生徒主導で計画から実践まで進められるように、授業の一部にオンライン学習をブレンド(融合)する教育法です。この10年ほどで急速に普及し、現在では全米50州の過半数の州でオンラインスクールが設立され、全米の高校の半分近く、小中学校でも相当数で、授業の一部にオンライン学習を取り入れたブレンディッドラーニングが実践されています。

 それに対して日本では、先生主導・生徒受動型の集団一斉教育がいまだに主流です。全体に効率よく教育を普及することを最優先に指導方法や進級方式を標準化し、全員一律で同じ教科書を使って同じ時間割に沿って同じ内容の授業を静かに座って聴き、毎年4月になれば理解度に関係なく全員が自動的に進級できる制度です。明治以来100年以上続いているため大多数の日本人が何の疑問ももたずに受け入れていますが、いわば学校側の都合に生徒が無理に合わせているために、枠に納まらない子どもたちは「落ちこぼれ」たり不登校になったりしています。

 ほぼ単一民族で周囲を海に囲まれた島国で生まれ育つ日本人は、本来であれば多様性をもっとも強く意識して教育の個別化を図らなければいけないはずです。ところが、1960~70年代の高度経済成長を経て80年代には「ジャパン・アズ・No.1」と国際経済におけるプレゼンスを認知されたという成功体験のために、90年代初頭にバブルがはじけ、21世紀に入ると人口が減少して国力が相対的に落ちているにもかかわらず、教育の枠組みを抜本的に変えようという危機感は強くありません。

◆BLを実現するにはテクノロジーの有効利用が不可欠

 アメリカでブレンディッドラーニングが急速に普及している背景には、21世紀に入ってデジタル機器が進化しネット環境が整備されたことによって、「誰もが・何時でも・何処でも・何でもマイペースで学習する」ことが技術的に可能になったことがあります。多民族国家でもともと個人主義的傾向の強いアメリカ人にとって、20世紀の工業化時代に大量生産・大量消費を前提に発展した集団一斉教育を、多様化した21世紀の情報化社会に見合う個別カリキュラムへ転換するという動きはごく自然なのです。

 ブレンディッドラーニングで生徒ひとりひとりが独自のカリキュラムを実践するには、オンライン学習やパソコン、タブレットなどICTを駆使することが不可欠です。従来の集団一斉型授業スタイルのまま授業の一部を映像化したものや、単に教室に電子黒板や電子教科書を導入して教材の一部をデジタル化した「テクノ教室」は一見進んだ印象を受けますが、見かけだけで構造的には何も進化していません。ICTはあくまで「個別カリキュラム+学習者主導+達成度基準進級」を実現するための手段なのです。
《小松健司》

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