「ロボットとAI」は教育現場をどう変える? ソフトバンク中山五輪男氏

 「eラーニングアワード2016フォーラム」が10月26日より28日まで開催されている。「日本e-Learning大賞」の表彰式では、あわせてソフトバンク首席エヴァンジェリストの中山五輪男氏による基調講演が行われた。

教育ICT 先生
ソフトバンク首席エヴァンジェリストの中山五輪男(なかやまいわお)氏
  • ソフトバンク首席エヴァンジェリストの中山五輪男(なかやまいわお)氏
  • 基調講演テーマは「Pepperを活用したプログラミング教育と人工知能を活用した学校システム」
  • 吉田小学校の事例
  • 戸隠小学校の事例
  • 鹿児島県の事例
  • ロボネットによるカリキュラム
  • ロボネットによるカリキュラム
  • ロボネットの概要
 eラーニング専門イベント「eラーニングアワード2016フォーラム」が10月26日より28日まで開催されている。「日本e-Learning大賞」の表彰式では、あわせてソフトバンク首席エヴァンジェリストの中山五輪男(なかやまいわお)氏による基調講演が行われた。

 中山五輪男氏は、日本DEC、日本SGI、EMCジャパンを経て2001年にソフトバンクに入社。同社の首席エヴァンジェリストとしてiPhone、各種クラウド、Pepper、IBM Watsonなどのサービスの伝道師として活動している。「Pepperを活用したプログラミング教育と人工知能を活用した学校システム」と題した今回の基調講演では、“ロボット”と“人工知能”の2項目を軸に、その活用の現状が紹介された。

◆Pepperを活用したプログラミング教育

 まず前半は「Pepperを活用したプログラミング教育」の紹介。具体的な事例として、電算が長野県の吉田小学校・戸隠小学校にPepperの出前授業を行った事例、ロボネットコミュニケーションズが鹿児島県の女子校・工業高校で年50コマのPepperプログラミング授業を行っている事例が紹介された。小学校では、Pepperの自己紹介、クイズ、ダンス、九九、年齢当てなどをテーマにプログラミングを行い、ロボアプリ開発の基本に触れる授業が展開された。

 一方、鹿児島県の鹿屋工業高校では、ロボネットが年間のカリキュラムを構築し、講師を含め提供しているとのこと。Pepperは1教室に1台だが、全生徒が1人1台PCを使いプログラミングを行う。また、講師に加え、遠隔地のスタッフがSkypeで参加し、授業のガイドを行うという仕組みを採用していることなどが明らかにされた。ロボネットのカリキュラムだが、Pepperのプログラミングは23コマまでで、残り27コマは、HTMLやJavaScriptなどの取得に費やされ、トータルでのプログラミング教育になっているという。

 さらに、京都府の立命館小学校の事例も紹介。ソフトバンクロボティクスが全面協力し、社員が直接出向き、45分4コマの授業を行ったという。これは異例なことで、通常は社員派遣は行っていないという。この授業では、条件分岐を含んだ高度なプログラミングに挑戦。Pepperのアプリ開発を行うビジュアルプログラミングツール「コレグラフ」(Choregraphe)により、論理思考を育てるとともに、グループ単位の作業で、問題解決能力の向上が計られた。

◆人工知能を活用した学校システム…IBM Watson活用事例

 続く後半では、「人工知能を活用した学校システム」をテーマにしつつ、教育領域に留まらない「IBM Watson」の活用事例を紹介。「IBM Watson」は、自己学習により知識を自動的に蓄積していく人工知能だ。「膨大なデータをすべて把握し、一瞬でそれを見つけられる人物」にも例えられている。教育領域での活用としては、すでに米国の大学などで、学生サポートなどに活用されている。大学に対し学生が問合せを行った際に、約4割をWatsonが回答していたが、それに気づいた学生はほとんどいなかったという。

◆1万8千人の社員をWatsonがサポート

 ここで、教育領域を離れたWatsonの活用事例として、ソフトバンク社内の事例が紹介された。ソフトバンクでは、コンタクトセンター業務、社員サポート、法人営業、ショップなどで、全社共通のプラットフォーム「SoftBank BRAIN」を構築中で、これにWatsonの技術が使われているという。これらは各業務ごとにアプリとして提供され、アプリでは、テキスト入力/音声入力により問いかけを行うことで、さまざまな回答が得られる仕組みだ。一般的にはSiriを想像してもらえればよい。中山氏によるデモでは、約1万8千人のソフトバンク社員に対し、Watsonがサポートを行うようすが紹介された。

 社員サポート用の業務アプリ「SoftBank BRAIN」に「iPadの電源が入らなくなった」「iPhoneの電源ケーブルを切断してしまった」「孫社長の電話番号を教えてください」「急病人が発生しました」「AEDの設置場所を教えてください」「会社を辞めたい」などの質問を音声で問いかけると、適切な回答を返してくれる。たとえば、ハードウェアの修理では、社内の担当部署を案内するし、AED設置場所では、その一覧リストが表示されるといった具合いだ。「会社を辞めたい」という質問には、ハラスメントの相談部署が案内される。こういった活用方法は、教育現場でもできそうだ。同様に、営業活動用の「SoftBank BRAIN」では、「中小企業にお勧めの製品は」「明治乳業には何を提案したらいい?」といった質問に対し、企業の分析チャートや過去の人気提案書、コンテンツ動画などが例示されるようすが紹介された。「SoftBank BRAIN」のデータベースには、8千種以上の動画やPDF、1万7千社の企業データ、トップセールスマン100人のノウハウなどのコンテンツが登録されており、それらが提示されるという。

◆iPadの教育現場活用

 最後に番外編として、iPadの教育現場活用として、「IBM Watson Element for Educators」および「Classi」が紹介された。「IBM Watson Element for Educators」は教育機関向けのiOSアプリで、Watsonと連携することで、教師が生徒の学習状況や取り組み姿勢を把握し、個別指導を可能にするという。「Classi」はソフトバンクとベネッセの協業サービスで、すでに1,400校が導入済みだ。

 ソフトバンク社内の活用事例も興味深いが、こうした人工知能の活用は、今後地道に教育領域でも普及していくことは間違いない。当初、中山氏の基調講演は40分前後の予定だったが、タイムテーブルの変更により時間が大幅に増え、1時間を超えるものとなった。それにともない、当初予定になかった動画や情報が公開されるなど、非常に充実した内容だった。
《冨岡晶》

冨岡晶

フリーの編集者/ライター/リサーチャー。芸能からセキュリティまで幅広く担当。

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