【発達障害3】子どもはどんな世界にいるの?生きづらさと大人の対処例

教育・受験 未就学児

著者:SHUHARI 代表取締役 中村敏也氏 
  • 著者:SHUHARI 代表取締役 中村敏也氏 
  • 元気キッズ 保育園のようす 画像提供:SHUHARI
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 このコラムでは全6回にわたり、未就学期における子育てや育ちの環境について、おもに発達の遅れや偏り、「発達障害」の側面から、その特徴や具体的な関わり方について紹介していきます。

 第3回では、発達障害を抱えた子ども側の視点から、お母さんやお父さん、周囲にいる大人が取るべき対処法を紐解いていきます。

◆発達障害を抱えた子どもたちはどのような世界にいるか

 広汎性発達障害を抱える子どもたちは、どのような世界で過ごしているのでしょうか?

 もしあなたが中学、高校と英語を習ってきた一般的な日本人だとします。そこで、初めてアメリカへ行くことになりました。現地で喉が渇いたので水を買おうとお店に入りました。しかし、どこにあるか見つからず、どうしても店員に聞かなければならなくなりました。

 「あいうぉんとうぉーたーぷりーず」と店員に言いますが、なかなか伝わりません。ある程度、学校ではリスニングもできたし、大丈夫だろうと考えていたものの、「What do you want?(ぅわっじゅぅわん?)」と早口に言われてまったくわかりません。

 店員も困って、ほかの店員もつれてきて、一斉に英語で何か言われてパニックに。そこで、ある店員がゆっくりと、「Snacks? Water?」などと、はっきり単語で言ってくれたら、きっとあなたは理解でき、「うおーたー」と言えるでしょう。

 このように、いわゆる一般的な日本人が初めて外国に行った感覚と、実は、広汎性発達障害を抱える子どもたちの感覚は似ているのです。

 私たちは、毎日大量の情報に触れていて、無意識のうちにその中から必要な情報を選択し、見て、聞いて、知覚します。しかし、発達障害を抱える人は、その無意識の選択が苦手で、大量の情報が一気に頭の中に流れ込んでいる状況です。

 そのため、集団生活の場で、先生が「次は体育なので、体操着に着替えて外で待っていてください」とクラス全体へ伝えたとしても、自分に言われているとは認識できずに、何をしていいかわからず困ってしまいます。しかし、担任の先生がその子に対して個別にゆっくりと指示をしてくれれば子どもは理解でき、安心できるのです。

 発達障害を抱える子どもたちは、ちょっと言語が伝わりづらい世界にいるのかもしれません。ただし、物事はしっかりとわかっていることが多いので、ゆっくりとその子がわかるように伝えてあげれば理解できるのです。

◆大事なのは“診断結果”じゃない

 発達障害にはいくつか区分があるのは、前回のコラムでご紹介した通りです。しかしながら、個人ごとに複数の傾向が見られることの方が多く、一つの症状だけということはあまり見受けられません。また、幼少期には一般的に明確な診断が下されることが少なく、「自閉傾向がある」とだけ診断されることが多いです。

 親の目線からすると「よく泣いて自己表現が苦手」「人前で親にくっついて離れない」など、人間関係の形成を心配してしまうタイプや、「食事や睡眠のリズムが不安定」「ひどく泣きわめき、なかなかおさまらない」「少しの間もじっとしていない」といった保護者をヘトヘトにさせるタイプなど、発達障害は子どもによってさまざまな形で表れます。

 ここで大事なのは、何の発達障害なのかという診断結果ではなく、発達障害を抱えていることでどのような気持ちや行動が見られるタイプなのかに気づくことであり、その子を理解することで子育ての仕方を工夫することです。

 発達障害を抱える子どもは、大人が困ってしまうような行動(パニック)を度々起こします。しかし、その行動の背景には、発達障害を抱えているがゆえの理由や意味があります。ただ叱ったり、言い聞かせるだけでは、問題の解決にはなりません。環境を改善するか、やり方がわからなかったら教え、次につなげるなど、前向きな指導が大切です。

◆発達障害を抱えた子どものおもな行動例

 では、発達障害を抱える子どもにおもに見られる行動や特徴をタイプ別に紹介します。

1、過敏性・多動性があるタイプ:音や光などいろいろな刺激を苦痛に感じてしまう。味覚が過敏なため、ひどい偏食がある
【おもな特徴、見られる行動例】
・授業中に席を立って歩き回る
・お遊戯の時間、大きな音が苦手なので、耳塞いで座り込んでしまたり外に飛び出す
・偏食が激しい
【関わり方の工夫】
 席に座っていられなかったり、体をゆらゆらさせてしまう子には、着席前に、その場をくるくる回る回転運動や、トランポリンや手をとってその場でジャンプするなどして、自分の体の感覚を刺激させましょう。すると、すっと椅子に座って落ち着くことができます。偏食が激しいのは、もしかしたら舌触りが嫌なのかもしれません。音などでパニックが起きると、周りのことが見えなくなるため、まずはクールダウンできる場所を確保しておくとよいでしょう。もし、きゅうりなどのシャキシャキ感が不快に感じるのであれば、すりおろしてからあげてみて、味が美味しいと感じることができれば、食べられるようになります。

2、睡眠リズムがアンバランスなタイプ:できることとできないことの差が大きく、気分も高揚しやすい
【おもな特徴、見られる行動例】
・楽しいことに熱中すると興奮がなかなかおさまらない
・できることとできないことの差が激しい
・遊びをなかなか切り上げることができない
・眠いときやお腹が空いいたときに何かをやらせようとしても難しい
【関わり方の工夫】
 毎日おおよその寝る時間と起きる時間を決めて、生活のリズムを規則的にしていくとよいでしょう。あまり厳密に時間を決めてしまうと、こだわりの強い子どもはそれがストレスになることもあるので、あくまで「これくらいまでには寝よう、起きよう」という感じがよいでしょう。休日なども平日と同じようにしたいので、たとえば朝の子ども向けテレビ番組を活用して早起きのモチベーションにするのも良い方法です。何かに取り組むときは、子どもの機嫌が良いとき、気分が乗っているときに行えるようにサポートしましょう。

3、なんでもゆっくりな不器用タイプ:ぼーっとしていて大人のはたらきかけにも反応が少ない。やる気がないとみなされてしまいがち
【おもな特徴、見られる行動例】
・集団で遊ぶよりも一人遊びが多い
・ルールが守ることが苦手
・お絵かきや工作が苦手なので、みんなについていけない
【関わり方の工夫】
 家で家事などに取り組み、苦手なことを練習をさせてあげましょう。このとき、できることは積極的に取り組ませて、苦手なことは失敗させないように助けてあげることが大事です。一つの習慣が身に付くと、ほかの習慣にも興味がわき、習慣を獲得できます。たとえば、畳んである洗濯物をしまうことができたら、今度は畳んでみることに挑戦させるなどがよいでしょう。食卓に箸を用意できたら、次はお皿のセット。食事に興味がわけば、今度は食材の準備をさせてみるなどもあげられます。

4、変化に対応できないタイプ:家ではまったく問題なく過ごせるが、何か変化があったときに混乱してしまう
【おもな特徴、見られる行動例】
・新しいことが不安なためやりたがらない
・こだわりが強く、急な変更が受け入れられない
【関わり方の工夫】
 予定をあらかじめ伝えておいたり、初めての場所には家族や大人と楽しみながら行ってみてください。子どもが興味を持てそうな場所に親子で行き、新しい興味があるものが発見できると、自分の興味を満たす活動を覚えます。そうすると、自分で楽しみをみつけることができるようになります。また、外へ出るモチベーションにもなり、新しいことに挑戦できるきっかけが作りやすくなります。

 以上にあげた例のほかにも、親などの特定の人にしか受け入れないタイプ、とてもお友達に興味があってどんどん関わっていくけど、意思疎通で問題を起こしてしまうタイプなど、発達の凸凹は人それぞれです。

 障害の内容に合わせてどのように対応するべきかという知識はとても重要ですが、まずはその子自身が何に困っていて、何が苦手なのかをわかってあげることがもっとも重要なことです。そのうえで、得た知識を活用して、その子に合った関わり方を考えた「療育」ができるとよいですね。

 次回は、我が子の発達に違和感を持ったとき、どこに相談したらよいか、どのように進めたらよいかをご紹介します。

第1回:発達障害とは? 4つの分類や定義を解説
第2回:あれ?周りの子と違う…自閉症や広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)の兆候
>第4回:子どもの発達に違和感を感じたらどこに相談すればよい?
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 耳にすることも多くなった、子どもの「発達障害」。コラム「発達障害」では、全6回にわたり、未就学期における子育てや育ちの環境について、おもに発達の遅れや偏り、「発達障害」の側面から、その特徴や具体的な関わり方について紹介する。

著:株式会社SHUHARI 代表取締役 中村敏也
 1977年7月埼玉県生まれ。明治大学経営学部卒業後、企業勤務の傍ら待機児童問題に興味を持ち、保育学や法制度を学ぶ。2004年9月、埼玉県志木市にて「保育園 元気キッズ 志木園」を開園。以降、地域のニーズに対応しながら小規模保育事業、認可保育所、児童発達支援事業へと展開を拡げる。2017年1月現在、志木市・新座市・朝霞市内に7施設を運営。2018年度には埼玉県内初の小規模保育事業と児童発達支援の複合施設を開園予定(埼玉県・朝霞市)。新座市子ども子育て会議委員。
《中村敏也》

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