子供が持ち偏差値以上の学校に合格するまで(中学受験のバトン・後編)

 「#中学受験のバトン」主催者のレモンさんは19回にわたり、テーマに合わせたゲストを招いてTwitter上でスペースを開催。その中から1.5万人が聞いたという人気回をリセマムが記事化してお届けする。今回は後編。

教育・受験 小学生
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 中学受験を経験した親たちが、これから経験する親たちにさまざまな情報を受け継ぐコミュニティ「#中学受験のバトン」。前編に続き、えいてつさん、こまちさん、りすちゃんパパさんによるリアルなエピソードをお届けする。

 テーマは「ボリュゾの子が持ち偏差値以上の学校に合格するまでの話」。
*ボリュゾとは…ボリュームゾーン、偏差値中央付近のこと

ボリュゾ脱却の切り札となった問題集は

--教科別の勉強方法について教えてください。塾以外でお勧めの問題集はありますか。(聞き手:レモンさん)

えいてつさん:うちは理科が苦手だったため、理科に関しては首都模試受験者の正答率50%以上の問題を集めた『首都圏模試受験生の2人に1人が解ける基本問題 理科』(学研教育出版)という市販の問題集を使って、夏休みに基礎を徹底的に固めたのが後々につながりました。

こまちさん:夏休み前の段階で、算数は結構解ける方なのにどうして結果に表れないんだろうと悩んでいました。娘の解答を見ると、大問1、2で失点している一方で、最後のほうの正答率が低い問題が合っていることも多くありました。これはおそらく基礎ができていないのが原因ではないかと思い、市販の『下克上算数 難関校受験編』(産経新聞出版)に7月から取り組みました。

 私が全部コピーしたものをノートに貼り、ごまかせないようにしてハイスピードでとにかく解くというのをやったら、50前半でくすぶっていた偏差値が65までいきました。演習量をこなすという意味で、応用に入る前段階の問題集としてはすごく良いものだったと思います。

りすちゃんパパさん:10月、11月あたりで過去問と並行して『算数プラスワン問題集』(東京出版)に取り組みました。普通に考えると遅いのですが、5年生のときにやろうとしたらまったくできなくて心折れてしまって。6年生の夏前ぐらいにやったら意外とできたので、ちょこちょこやっていました。

 ほかには『塾技理科100』(文英堂)です。サピ(サピックス)の教材はプリントが中心なので、いざ過去問を始めて「この単元が弱いから復習しよう」となると、過去のプリントを引っ張り出してくるという手間が発生するんです。しかも、単元ごとにまとまっていない。その点『塾技理科』は単元ごとに細かく分かれているので、苦手な単元をピンポイントで学習したいときにお勧めです。

 『特進クラスシリーズ』(文英堂)という問題集もありますが、これも同じように分野別に過去の入試問題がまとまっています。理科社会のわからないところだけを取り出してやる、といった辞書的な使い方ができたのが良かったと思います。

--よく、通っている塾でやっている教材以外の問題集にはあまり手を出さない方が良いということも聞きますよね。

えいてつさん:基本的には塾でもらってくるテキストなり、プリントなりをやり込むのが第一だと思います。私も長男のときはいろいろ買ってしまったんですが、買ったところでやりきれないんですよね。あれこれ手を出すより、四谷大塚の基本教材の『予習シリーズ』をやり込む方が効果的だったというのは、上の子の受験で学んだ教訓です。

ボリュゾとトップ層の違いとは

--ボリュゾの親ならではの悩みもありますか。

えいてつさん:いろいろあると思うのですが…。やはりボリュゾの子は圧倒的に勉強量が足りていないと思うんです。私も「うちの子めっちゃやってるのに、なんで伸びないの」と一時期思っていましたが、1時間机に向かっていても集中して解いている時間は15分、20分しかないことに気づいて。1題やったらすぐ休憩したりしていました。

りすちゃんパパさん:本当にそれです。あとは、4、5年生のときもそうでしたが、まず授業の始めの小テストができない。授業で扱った問題も理解できていないところもあるので、塾から帰ってきたらその小テストを直し、授業でわからなかったところを理解して、そこから宿題に取り掛かる。しかも効率も悪いので全然終わらない。すると翌週の小テストができない、できないところにまた次の宿題がくるので、常に終わらないという悪循環になっていました。

 上の子はそれがうまくできていたんです。基本的に小テストは満点なので直しはないし、授業の内容は授業中に理解できているので、帰ってきたら宿題だけをやれば良かったんです。その圧倒的な違いがあるので、姉妹で同じ塾に通っているからといって同じように比較してはいけないなっていうのはすごく感じたところです。

えいてつさん:優秀な子って、1時間ガッツリ集中して、濃くて良い勉強ができるんですよね。言われたこともスポンジみたいにどんどん吸収していけるし。褒めれば良いだけだから親も楽なんですよね。

こまちさん:集中力、あとは応用力も違うと思います。うちは妹のほうが成績が良く、学んだことに対して違う角度から聞かれてもある程度応用が利くのですが、姉の場合は「別の問題」と認識してしまい、「いやいやさっきやったじゃん」と思ったことが結構ありましたね。

成績が悪いときの親の声がけ

--成績が良くなかったり、下がってしまったときはお子さんとどういう会話をされていたのでしょう。

えいてつさん:親もへこみますよね、やっぱり。ただ、前編でも話しましたが模試はしょせん模試なので、気にしなくて良いと今は思えます。12月の合不合判定模試のとき、娘が「やばいかも」と言いながら会場から出てきたんですけど、私はその時点で悟りを開いていたので(笑)、全然気にしなくて良いよと子供に伝えました。偏差値は今ひとつでしたが、過去問で点数を取れていたことが心のよりどころになっていました。

りすちゃんパパさん:模試は問題ごとの正答率が出ますよね。だから、何かひとつでも良いところを見つけることを意識していました。「(正答率80%の問題を落としていることには目をつぶって)20%の問題ができてるじゃん!」みたいな。前を向ける何かがないと、親子ともに辛くなってしまうので、いつも希望を探していました。

えいてつさん:できないときって本当にできないので(笑)。

--ゲームとの付き合い方に悩んでいる方も多いと思います、ゲームは禁止派でしたか。容認派でしたか。

えいてつさん:長男に関しては、ゲームは禁止しない方が良いと思っていました。休憩時間にゲームをしたり、ある程度ガス抜きをさせてあげるのも大切だと思います。ゲームでなくても、ちょっと体を動かす、ピアノを弾くなど、たとえ直前期でも許して良いんじゃないかなと私は思います。ただし、私が不在のときは鍵のある場所にゲームを封印していました。

こまちさん:うちも言ってもやめられないタイプでした。4、5年生のときに「もう終わりにしよう」と言っても隠れてやるなど、親子バトルの原因でもあったので、6年以降はゲームは私の職場に持っていっていましたね。

父親と母親の分担は

--ご夫婦の役割分担はどのようにされていたのでしょうか。

えいてつさん:うちは受験に関してはほぼワンオペです。時間があるときは、主人も塾の送迎をしてくれましたが、過去問や宿題の進捗を見るのは私でした。

こまちさん:うちも私主導でしたが、過去問演習に入ったころから、主人も丸付け係をやっていました。最後の方は、私か主人のどちらかが勉強している息子の横について、主人が理科、私は国語と社会というように丸付けも役割分担をしていました。

 分担して、失敗したのが、志望順位の高い学校の説明会に父親と娘だけで行かせたことです。ふたりとも「良い学校だったよ」と気に入って帰ってきたのですが、結局ハード面しか見てなくて。いざ受かってその学校に行くとなったときに、「けっこう勉強を厳しくやる学校だと思うけどそのへんは説明会で聞いてるよね」とたずねたら、何もわかっていなくて。とたんに娘は「この学校いやだ」となってしまい、私がちゃんとチェックしておけばと後悔しました。

えいてつさん:学校説明会って基本は良いところしか言わないですもんね。夏休みに補習がいっぱいあるとか、夏休みが3週間しかないとか、在校生でないとわからないことはたくさんあると思います。在校生が書いた書き込みサイトなどもあるので、ちゃんとチェックすることをお勧めします。

2024年受験組へのメッセージ

--最後になりますが、今年受験を控えた受験生と親にエールをお願いします。

こまちさん:ボリュゾの子って、とにかく山がたくさんあると思うんです。それは最難関を目指す子のようなとてつもなく高い山ではなく、乗り越えられる小さい山が目の前にたくさんあるイメージです。6年生になると周りもやっているぶん、成績がうなぎ登りになる子はなかなかいないとは思いますが、ひとつひとつ山を越えていくことで必ず前進していけると思います。

 今の時期(スペース開催は5月)、1月2月を想像して「絶対届かない」と落ち込んだり、親の方がメンタルをやられてしまったりもあると思います。ですが、その子その子のやり方を模索していくことで、きっと「できること」は増えていくので、くじけずに頑張ってほしいと思います。

--今回のみなさんは、行動したからこそ改善したことが多いと思います。逆に行動していなかったらどうなっていたと思いますか。

こまちさん:かなり悲惨な結果だったと思います。転塾もそうだし、最後は完全に個別に振り切って過去問対策をしたのも、「親しか責任取れないのではないか」という気持ちがあったから。塾の先生は、うまくいかなくても「お力になれず申し訳ありませんでした」で終わりですからね。

 私は小規模塾なら安心と思い込んでいましたが、主人の「この時期に入って、全然成績上がってないじゃん」という一言がきっかけで目が覚めました。市販の問題集といい過去問といい、結局、成績アップにつながったのはすべて親が考えてやったことだったんですよね。先走ってもいけませんが、最終的に親が責任を取るつもりで舵切りをするのもありだと思います

りすちゃんパパさん:今回「ボリュゾの親」を初めて経験したわけなんですが、とても難易度の高いことをしているという思いは常にありました。家庭というのは、たとえ外で嫌なことがあっても、ここなら大丈夫だよと受け止めてあげるセーフティネットのような役割をもっていると思うのです。そこに「点数を上げなきゃいけない」「勉強させなきゃいけない」という、突き放す役割を同時に担わなければいけない。

 難関校に合格した姉のうさちゃんのときは、親はセーフティネットの役割だけ果たしていれば良くて、テストの点が悪くて落ち込んでいても「次があるから大丈夫だよ」「頑張ってるね」と言ってあげれば良い。子供を受け止める役割を果たすだけで良いというのはすごく楽で、親としてもやりがいがあります。それが正しい親の姿勢だと思っていたんですよ。

 それがボリュゾの子となると、「受け止めつつ突き放す」という相反する2つのことを親がやらなければならない。そのジレンマを抱えながら、どういうふうにしたら良いかということをすごく考えるんですよね。子供に向き合って、その中で「その子だけ」の強みを探して見つけてあげること、強いところで勝負させてあげるというプロセスが、親としての成長につながったと思っています。

 今、6年生の親御さんがやろうとしているのは、そういったとても大変なことなのです。決して、「うちの子がいまいちだから」「親のサポートがいまいちだから」ということではありません。中学受験生の親というのは、本当に難しいのです。そしてそれは、親にしかできないすごいことなんです。そのことを最後お伝えしたいと思います。

えいてつさん:私からは、塾の指示に従わない勇気も必要ということを伝えたいです。先ほどこまちさんがおっしゃったんですけど、ボリュゾの子はそこら中に穴があって、やることもテンコ盛り、潰さなきゃいけないことも山ほどあって圧倒的に時間が足りない。秋から過去問演習が始まりますが、うちは穴だらけのこの状況でやったところで本人のモチベーションが下がるだけだとわかっていました。みんなと同じタイミングで過去問をやるよりも、苦手つぶしに徹して、過去問をやっても良いタイミングを見極めたことが、結果につながったと思っています。

 私も長男のときは塾に言われるままオプション講座もひととおり受けていましたが、下の子のときは、日曜特訓、NN、冬期講習といったオプションは一切取らず、土日は全部、家で苦手やできないところを埋めることを優先しました。もちろん、親の責任においてのことですが、必ずしも塾の指示に従うのではなく、目の前の子の穴を埋めることの方が大事なこともあります。塾に行っている安心感はもちろんあると思いますが、思い切って今できないことを潰していくという判断、その子に合ったやり方を親が見極めることが大事だと思います。

--ありがとうございました。


 ボリュゾ脱出の助けとなった問題集、ゲームは封印、塾の指示に従わない勇気の必要性…。受験生の親の心に響く金言が散りばめられた3人のエピソード。さまざま思いや葛藤を抱えながら子供の中学受験に伴走する姿に、自身を重ねずにはいられない保護者も多いはずだ。

 今回のテーマの他「志望校特訓」「家庭教師のススメスペース」「埼玉千葉、1月の中学受験スペース」など、受験生の親必聴のテーマが揃うレモンさん主催のスペースは下記ボタンからの遷移先にアーカイブされている。

レモンさん主催「#中学受験のバトン」スペースまとめ

前編はこちら


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《吉野清美》

吉野清美

出版社、編集プロダクション勤務を経て、子育てとの両立を目指しフリーに。リセマムほかペット雑誌、不動産会報誌など幅広いジャンルで執筆中。受験や育児を通じて得る経験を記事に還元している。

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