ボリュームゾーンの子の志望校選び、決め手は…(中学受験のバトン・前編)

 「#中学受験のバトン」主催者のレモンさんは19回にわたり、テーマに合わせたゲストを招いてTwitter上でスペースを開催。その中から1.5万人が聞いたという人気回をリセマムが記事化してお届けする。

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 中学受験を経験した親たちが、これから経験する親たちにさまざまな情報を受け継ぐコミュニティ「#中学受験のバトン」。主催者のレモンさんは、自身も2人の子供が中学受験で難関校に合格した経験をもつ。

 レモンさんはこれまで19回にわたり、テーマに合わせたゲストを招いてTwitter上でスペースを開催し、多くの保護者を集めてきたが、その中でも1.5万人が聞いたという人気回をリセマムが記事化してお届けする。テーマは「ボリュゾの子が持ち偏差値以上の学校に合格するまでの話」。
*ボリュゾとは…ボリュームゾーン、偏差値中央付近のこと

志望校選びの決め手とは

--初めに自己紹介を兼ねて、みなさんのお子さんが通っていた塾と成績の推移について簡単に教えてください。(聞き手:レモンさん)

えいてつさん:初めまして、えいてつと申します。2021年度受験の長男、2023年長女とともにボリュゾの成績で受験を終えました。娘の6年スタート時の成績は四谷偏差値(四谷大塚で実施の模試をベースとしたもの)48とボリュゾ下位にいました。その後夏休みにテコ入れをした結果、56前後まで伸びました。最終的に、進学先は60ぐらいの学校です。サピックスから早稲アカ(早稲田アカデミー)への転塾を経験しています。

こまちさん:わが家の娘は小3からグノーブルに通っていました。4年生の夏頃までは、親が側についてテキストを2周3周とまわしていたので、偏差値58前後は取れていたのですが、5年の中頃から反抗期と学校での対人トラブルでまったく勉強しなくなって。何度も受験やめる・やめないの話が出て成績も急降下。勉強に手がつかないような状態を打開すべく四谷準拠の小規模塾に移りました。

 6年スタート時の偏差値は47.5。転塾後も、勉強してはさぼってを繰り返しながら、得意な算数は50から65まで上がりましたが、国語と理科は乱高下していました。6年最後の合不合偏差値(四谷大塚実施の合不合判定テストをベースとしたもの)は51でしたが、過去問対策や得意な算数を生かす戦略で、最終的には60ちょっとの学校にご縁をいただきました。

りすちゃんパパさん:2022年受験組のうさちゃん、今回お話する2023年受験のりすちゃん、2026年にも控えている三姉妹です。りすちゃんは小3の夏からサピックスに入りました。成績でいうとサピックス偏差値20~30台、そのまま6年生の初めぐらいまで35~40あたりをウロウロしていました。最終的に、千葉埼玉の45~53の学校に合格しました。

--まず、ボリュゾの子の志望校の決め方についてお聞きしたいです。ボリュゾって「ひょっとしたら上がるかもしれない」という期待と「下がってしまうかも…」という不安があり、なかなか志望校選択が難しいという話を聞きます。みなさんはどうやって志望校を選んだのか教えていただいてもよろしいですか。

えいてつさん:6年初めまでの成績を加味して、上は持ち偏差値プラス7、8下はマイナス20まで、いろいろな学校に行きました。やはり子供も実際の学校を見ないとどんな感じかわからないので、なるべく一緒に行くようにして、その中で「ここは良いな」という子供の意見を聞きながら絞り込んでいきました。子供の希望と私が良いなと思う学校が違った時は話し合って、最終的には娘が行きたい方を尊重しました。

 6年当時の娘の偏差値は48前後でしたが、志望校はだいたい55前後の学校が多かったですね。1月校の結果次第で2月以降どこを受けるかというパターンもかなり考えていました。今の進学先については、実は塾からはそんなにお勧めされなかったのですが、親の目から過去問の傾向や出来を見て、もしかしたらいけるかもという期待をもっていた学校なんです。結果的に1月の千葉埼玉で通っても良いという学校に合格をいただいたことで、東京は強気に攻める受験となりました。

--こまちさんはいかがでしょうか。

こまちさん:わが家は、まず千葉埼玉でチャレンジ校を受験して、東京は実力相応な学校を押さえようという戦略をとりました。子供の性格的にガチガチ管理型の学校は合わないと思っていましたが、自由な学校やおおらかな校風を求めるとどうしても偏差値の高いところしか候補に上がってこなくて。なかなか娘に合いそうな学校、受け入れてくれる学校が見つからず、30校くらい見たなかで各偏差値帯に1つくらいずつ行きたい学校が出てきたという感じです。

 えいてつさんと同じく、早いうちに埼玉の学校がうまくいったので2月はさらに上を目指すことになりました。ですが、東京でのチャレンジ校を想定しておらず…。土壇場で2月の受験校を決めて、下準備ができていない状態で挑むことになりました。埼玉がうまくいったときのその先のパターンついて、もうちょっと考えておけば良かったなというのは反省点です。

 一方、安全校については、子供の持ち偏差値より低くても「ここだったら通っても良い」と思える学校をまず親が決め、子供に「とても良い学校なんだよ」と伝えていました。実際に見学してみたら子供も気に入ってくれて、そこがお守り校としてあることが、気持ち的な安心につながったというのはあります。

--りすちゃんパパさんはいかがでしょうか。

りすちゃんパパさん:ボリュームゾーンって、当てはまる学校の数も多いですよね。成績が良く、難関校に合格した姉のうさちゃんのときは数校見ればよかったのが、りすちゃんのときは通える範囲で絞ってもざっと20校ぐらい。しかもどの学校も特色があって、芝浦工大のようにITやプログラミング教育に特化した学校もあれば、三田国際みたいにインターナショナルな校風、大妻女子みたいに元気の良い学校もあります。そのなかからどう絞っていったかというと、後述しますが過去問の出来や相性といったところが大きかったですね。

合わないと思ったら、転塾は早い方が良い

--(リスナーからの事前質問で)転塾についての質問も多くありました。転塾を経験しているおふたりの経験を教えてください。

えいてつさん:息子も娘も最初はサピックスに通っていましたが、息子は5年の夏にサピから早稲アカに転塾しました。通ってみたらサピが合わなくて、成績も子供のモチベーションもただ下がり。親もプリント整理が大変でした。

 転塾先としては早稲アカと四谷大塚の両方を検討しましたが、結果として上の子には早稲アカがすごく合っていてそこから成績は上がっていきました。迷っているうちにどんどん単元は進んでいきます。とにかく、合わないと思ったら早く他を検討した方が良いと思います

--お子さんにとって早稲アカのどんなところが良かったのでしょうか。

えいてつさん:当時はまだコロナ前だったので、先生や友達と同じ教室でお弁当を食べながらいろいろ語り合うなど、先生と生徒の距離がとても近い塾でした。息子はそういうのが大好きで「早稲アカめっちゃ楽しい!」と言っていました。でも逆に賑やかな雰囲気が苦手な子もいると思います。塾選びについては、本当に子供によるとしか言えないですよね。

--もし、一番初めに3つの塾を全部見学していたら、最初から早稲アカを選んでいたと思いますか。

えいてつさん:うーんどうでしょう…。上の子のときは、「受験といえばサピックス」みたいな感じで、周りもサピに通い始めていて。サピックスのカリキュラムやプリントはとてもよくできていると思うんですが、毎月のテストごとに頻繁にクラスが変わるのがうちの子にはプレッシャーだったみたいですね。

--こまちさんは、中規模塾であるグノーブルから小規模塾への転塾を経験されています。

こまちさん:小3でグノーブルに入塾したときはかなり少ない生徒数で、授業の前後に先生が苦手なところを教えてくれ、人見知りしがちな娘にはとても合っていたんです。ですが、4年生になるころからクラスも生徒数も増えて、1学年50人規模の校舎になったことで、引っ込み思案な娘は質問に行けないうえ、コロナ禍で居残りがなくなったこともあって宿題もやらなくなってしまったんです。

 子供自身も宿題をやらないことに慣れ、親がいくら言ってもやらない。これはもう、ちゃんと宿題をチェックしてくれる塾じゃないとダメだなと思っての小規模塾への転塾でした。

--転塾し、最終的には家庭教師を選んだそうですが。

こまちさん:先生の目が行き届く小人数塾に移ったおかげで、勉強時間も増えて宿題もやるようになったのでそれは良かったと思います。ですがその塾も秋には辞めました。というのも「過去問題は一切やらなくて良い」という方針の先生で…。二学期になって、家で初めて過去問をやらせたら理科が20点、社会も全然取れなくて。何回か相談もしましたが「過去問は必要ない」という方針は変わらず。そこで、ここからは志望校に特化した対策に舵を切った方が良いと判断し、11月末から家庭教師に切り替えました。

 家庭教師の先生には苦手な理科社会を中心に、志望校の過去問の類題をたくさんピックアップしてもらいました。このときに、いろいろな学校の過去問に触れられたおかげで実践力がついたと思います。

 もちろん小規模塾からでも合格する子はたくさんいるので一概には言えませんが、小規模塾は塾長の方針がすべてなので、視野が狭くなってしまいがちなところはあると思います。大手塾と中・小規模塾、それぞれにメリット、デメリットがあるというのは実感しました。

発達凹凸タイプに必要なフォロー

--「発達に凸凹のある子の受験」についても質問が多数きています。これについてはどうでしょうか。

こまちさん:娘は5年生の2月に受診した病院で、ADHDとASDの混合型という診断を受けました。集中力が強い一方で、宿題をやろうと思っても途中でやめてしまうといったADHD特有の特徴は全部当てはまりましたね。

--どのようなフォローをされたのでしょうか。

こまちさん:居眠りをしたり学校生活にも支障が出始めていたのもあって、薬を飲み始めたところ、半年ほどで改善がみられました。ADHDが落ち着いてくると、ケアレスミスが減り集中力も出てくるようになって、受験にはプラスになったと思います。

 私も「宿題を終わらせるのはお母さんの仕事です」と塾の先生に言われるのがつらくて。「言ってるけどやらないんだよ!」と心の中でいつも思っていました。そういった意味でも、発達凹凸タイプには集団塾よりも個別や家庭教師の方が良いと思います。主張できるタイプの発達障害のお子さんだったら、集団塾でも個人をケアしてくれたり注意してくれたりすると思いますが、うちみたいに主張できないタイプは、ちゃんとやっていなくても流されてしまう感じで。そこを「やらなきゃいけないんだよ」と習慣づけてくれる役割の先生が娘には必要だったのだと思います。

夏休みがボリュゾを抜け出す転機に

--その後、お子さんはどのようにしてスイッチが入りましたか。また、ボリュゾを抜け出す転機になった時期についてもお聞きしたいです。

えいてつさん:長男に関しては、最後まで「受験をしたいけど勉強はしたくない」みたいな感じで今ひとつピッチが上がらずに終わったパターンです。よく受かったなと思いますが、1月、2月のギリギリまで「やる気ないならやめれば良いじゃん」という不毛な争いをしていました。そういう男子もいると塾で言われていたので、この子はスイッチが入らない子なんだと思ってお尻を叩くことに徹していました

 一方、長女は過去問に取り組み始めたころから自走し始めました。夏に死ぬほど勉強して成績が上がったという話を冒頭の自己紹介でしましたが、夏まではやってるようでやってない、机に向かっているけど半分ぐらいは宇宙と交信してる、みたいな感じだったので(苦笑)。そこは親が、行きたい学校があるならちゃんと勉強しなきゃダメだよ、夏だけで良いから頑張ろうと諭しました。夏期講習については、通常は4教科を受けると思いますが、娘は理科が苦手だったため、理科の弱点補強は個別指導に丸投げしました。講習は算国だけを受けて、社会はテキスト「四科のまとめ」の基礎編を家で取り組みました。

 夏休み、午前中は個別で理科、お昼ご飯を食べてすぐ早稲アカで算国、帰ってきて復習をして、空いた時間で社会という感じで、睡眠と食事、トイレ以外ずっと勉強していました。やっと本人にスイッチが入ったなと感じました。

りすちゃんパパさん:うちの転機となったのも6年生の夏休みです。ボリュゾの子って、目に見えて弱いところがいろいろあるじゃないですか。うちの子の場合は、朝が弱いのでサピックスの基礎トレも毎日できない、1問解いたら5分休憩といった感じに集中して勉強することができず、算数を1題解くだけで1時間経ってしまうこともありました。

 でもその弱いところこそがこの子の特徴なんだと意識を切り替え、そこはもう目をつぶろうと判断しました。具体的には、朝勉強ができない代わりに塾の帰宅後に夕食を食べながら復習する、淡々と勉強ができないので、テスト形式の演習を取り入れるといったやり方です。強みを探そうと試行錯誤するなかで、やっと夏に見つかったのが「過去問を解くのが好き」ということ。過去問なら集中して50分できるという、その強みを強化していく形で最後まで乗り切りました

過去問との相性を見極めることが最重要

--夏休みの成果はどう表れたのでしょうか。

えいてつさん:夏に頑張った結果、9月の合不合では偏差値50台後半まで上がり、そこからは過去問も意欲的に取り組むようになりました。自走モードというか、私がガミガミ言わなくても良いスタイルに入ったなと思います。

りすちゃんパパさん:夏はうちもかなり頑張ったと思ったんですけど、休み明けの成績は下がる一方で40を切るようになってしまって。親から見てもできるようになっている手ごたえはあるのに、成績に出ないというところで本人も親もけっこう悩みました。志望校選びにも関わってくるところなのですが、過去問との相性については、みなさんどうだったのでしょうか。

えいてつさん:うちは国語の偏差値が40台でしたが、いざ過去問をやってみると60半ばの学校の国語で7~8割取れることもありました。娘は選択肢問題が苦手でしたが、逆に記述問題は結構得点出来ていました。志望校を選べばそんなに国語も足を引っ張ることはないのかなと思い直し、「選択肢問題が少なく記述多めの学校」を選んでいきました。

りすちゃんパパさん:過去問の出来って、本当に問題との相性によるところが大きいと思うんですよね。りすちゃんの場合は、算数の合格者平均が60点前後とそこそこ難しく、理科社会が選択問題メインで差が付きづらいタイプの学校だと比較的点が取れていたんです。そういう学校は千葉埼玉に多くて、おかげで入試で動きやすかったというのは正直ありました。ボリュゾの子の得意不得意って本当に人それぞれなので、親が学校の過去問を見て、合う・合わないを選択することはすごく大事かなと思いますね。

えいてつさん:ボリュゾ(の子)って何かしら穴があるから、みんなができるような問題が多いと点数が取れないんですよね。うちも持ち偏差値より下でも全然得点できない学校もありました。過去問を2、3年分やって取れなかったら、気に入っている学校だったとしてもそこは潔く諦めました。

 逆に、届かないからやめておこうかと思っていた学校の過去問を試しにやってみたら、意外とできたりもして。それが今の進学先です。とにかく過去問はいろいろやってみたほうが良いと思います。

 偏差値があてにならないというのは模試に関しても同じだと思います。模試というのは志望校に関わらず上から下まで、幅広い偏差値帯の子に向けた問題になっていますよね。実際の入試問題は、思考系の問題が多いなど学校ごとに傾向があるので、良くも悪くも模試の結果を重く受け止める必要はないと思います。模試が低かろうと、過去問で点数が取れていれば大丈夫だと思います。


 ボリュゾの子をもつ家庭の志望校選びや過去問との相性、塾との付き合い方や転塾のタイミング、そして子供のやる気スイッチが入ったきっかけなど、悩みながら受験を経験し、突破してきた親たちだからこそのリアルなエピソードが満載の前編。後編は、教科別の勉強法やお勧めの問題集、ゲームとの付き合い方や親の声がけについて。ボリュゾもそうでない子も、全受験生必読の内容お届けする。

レモンさん主催「#中学受験のバトン」スペースまとめ

後編はこちら


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《吉野清美》

吉野清美

出版社、編集プロダクション勤務を経て、子育てとの両立を目指しフリーに。リセマムほかペット雑誌、不動産会報誌など幅広いジャンルで執筆中。受験や育児を通じて得る経験を記事に還元している。

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