子供の発達と養育スタイルの関係とは…ベネッセ調査

 ベネッセ教育総合研究所は2023年8月3日、東京大学CEDEPとの共同研究「乳幼児の生活と育ち」調査の結果を公表。両親が子供に温かく関わる土台のうえに、程よいしつけのような関わりを一方の親が担うことが、社会情動的発達によい影響をもつ可能性がみえてきたという。

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幼児期における養育スタイル
  • 幼児期における養育スタイル
  • 養育スタイルの組み合わせ
  • 母親の就業状況
  • 世帯年収
  • 起床時間・就寝時間
  • 昼寝時間
  • 外遊び
  • 紙の絵本や本

 ベネッセ教育総合研究所は2023年8月3日、東京大学CEDEPとの共同研究「乳幼児の生活と育ちに関する調査」の結果を公表。両親が子供に温かく関わる土台のうえに、程よいしつけのような関わりを一方の親が担うことが、社会情動的発達によい影響をもつ可能性がみえてきたという。

 同調査は、東京大学大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センター(CEDEP)とベネッセ教育総合研究所の共同研究プロジェクト。子供の生活や発達と保護者の子育ての変化を知り、よりよい子育て支援を考える目的で、全国の2016年4月2日~2017年4月1日生まれの子供をもつ家庭3,205世帯を対象に、2017年~2021年の5年間、年1回9月~10月に郵送法(自記式質問紙調査)の調査を実施した。

 4歳児期調査時の保護者の平均年齢は母親37.1歳、父親39.0歳。子供が成長するにつれて就業する母親が増え、4歳児期では70.1%に達した。世帯年収も子供の成長とともに増え、4歳児期では800万円以上の世帯が半数を超える59.9%だった。

 1~4歳児期まで起床時刻と就寝時刻はほぼ変化せず、4歳児期の7割以上が午前7時までに起床、午後9時ごろまでに就寝。一方、昼寝時間は減り、4歳児期で「しない」が50.0%となった。外遊びの時間、絵本の読み聞かせは1~4歳児期にかけて減少していく。幼児期にスマートフォン、タブレット端末、ゲーム機を利用する子供は全体的に少なく、4歳児期でもっとも利用するアプリやソフトは、「動画(子供向け娯楽用)」で74.8%。利用させる理由は「子供が使いたがるから」が73.0%となった。

 全体的に、2~4歳児期にかけて認知的な発達の変化が大きく、言葉遊びができるようになり、語彙や表現を豊かに育んでいるようすがみられた。「文字」をみると、4歳児期以降にひらがなやカタカナを読み書き。「数」では日常生活の中で自分の体や身の回リの物を使って数を数え、長さや重さの順や物事の対比を少しずつ判断しているようすがわかる。

 社会情動的な発達は、 2~4歳児期にかけて少しずつ育っていく。「自己主張」は4歳児期まてし一貫して 「とてもあてはまる」または 「まああてはまる」と回答した人の割合が高かった。

 「自己抑制」と「協調性」は年齢が上がるにつれて高くなり、他者の状況を意識した行動が少しずつとれるようになるといえる。「がんばる力」では、 こだわりや自信に変化はみられないが、「最後までやり通す」といったねばり強く取り組む力は、4歳児期まてに少しずつ身につけていくようすがうかがえる。

 家事・子育ての時間は、0~4歳児期にかけて母親の子育て時間は減少していくが、父親は変化せず、どの時期においても2時間未満が多かった。父親の平日の家事をみると、子供の年齢が上がるにつれて家事をする時間が増加。子育てに対しては、父母共に9割以上が「充実している」「楽しい」 と肯定的に捉えている。「幼児期は自由にのびのびと遊ばせたい」父母は9割以上、4歳児期に母親の92.5%、父親の85.0%が 「家事・育児を夫婦分で分担するのは当然だ」としている。

 子育ての相談先は、「配偶者」を頼る場合が80%以上。また母親の親族が頼りにされる傾向にあった。週あたりの労働時間は、4歳児の母親で「15~30時間未満」、父親で「40~50時間未満」がもっとも多い。帰宅時間は、母親は夕方までに、 父親は18時以降に帰宅する場合が多い。母親と父親でもっとも差が大きいのは「定時で帰りやすい雰囲気がある」で、4歳児期に母親87.9%、父親56.2%だった。

 調査結果から0~2歳児の養育行動では、父母の行動が相互に影響を与えあっているが、3~4歳児になると、母親の養育スタイルが部分的に父親に影響を及ぼすだけで、父母の相互影響は小さくなったことがわかる。また、養育スタイルを「温かい応答性」「攻撃性」「許容的で甘い療育」「厳しい統制」の4項目に分類し調査したところ、父母共に子供に対して温かく関わるという土台があったうえで、ほどよいしつけのような関わりをどちらかの親が担うことが子供の社会情動的な発達によい影響をもつ可能性があることがみえてきたとしている。

《川端珠紀》

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