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【NEE2011】デジタルネイティブに合わせた情報教育の必要性…東工大 清水名誉教授

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東京工業大学 名誉教授 清水康敬氏
  • 東京工業大学 名誉教授 清水康敬氏
  • テレビネイティブとデジタルネイティブ世代
  • デジタル教科書に対する教員と保護者の意識の違い(画面表示)
  • デジタル教科書に対する教員と保護者の意識の違い(情報の活用)
  • 相関関数による分析。マイナスは負の傾きを表し、高学年になるほど重要性が低い方向になる状態を表す
  • 情報活用能力
  • FILESの概念
  • 日本のIT普及率は高いが、学校教育における利用率は低い
 「NEW EDUCATION EXPO 2011」において6月4日、東京工業大学 名誉教授 清水康敬氏による基調講演が行われた。清水氏は、特に電磁波研究など工学系の分野で実績のある教授だが、教育政策への提言や関わりも多く、近年ではフューチャースクールの実証実験などに注力している。その清水氏は、「これからの教育の情報化の推進と課題」と題して、情報化の現状と学校教育の関係とあり方について講演を行った。

◆デジタルネイティブとテレビネイティブ

 携帯電話やパソコンの急激な普及によって、物心のついたころからメールやインターネットに親しんでいる世代を指して「デジタルネイティブ」という言葉があるが、清水氏は、この意味について振り返ることから講演を始めた。

 携帯電話やパソコンが急激に普及した1990年代後半に生まれた子どもは、生まれてすぐにそれらに接する機会が多く、「ネイティブ」と呼ぶことができるかもしれないが、それは年齢的に現在の小学生くらいまでだろう。現在、中学生や高校生の子どもたちが生まれたときの携帯電話やパソコンの普及率はそれほどではなかった。

 では、彼らはどのような世代かというと、テレビは当たり前のように存在し、言葉を認識しない状態でも、家の中でテレビがついていたはずで、その意味でテレビネイティブでもあるというのだ。

 つまり、現在の小中高生は、デジタルネイティブでありながらテレビネイティブとしての側面も持っている。そして、両者の違いは、テレビはPUSH型で一方通行だが、携帯電話やパソコンはテキストベースながら双方向であることにある。受け身のメディアで育っていながら、ツールを使ったコミュニケーション能力も持っているのが、現代の子どもたちだというわけだ。

 これは、テレビネイティブとして育った親の世代とも違うわけで、情報教育を考える上でも考慮する必要があると清水氏は言う。その理由として、協調性や自立心の阻害、健康被害などテレビやインターネットの功罪はあるが、現実としてそれらに接している子どもたちの生活スタイルや指向性を無視しては、教育はうまくいかないと指摘する。

 清水氏によれば、教育の情報化を考える上で、もうひとつ注意すべき点があるそうだ。それは、教師と保護者間の意識の違い、教育に対する求めるところの違いにも目を向ける必要があるという点だ。

◆教員と保護者がデジタル教科書に求めるもの

 清水氏は、デジタル教科書の要件について、教員と保護者各々が重視する点に関する調査を行ったそうだ。この調査では、教員や保護者がデジタル教科書に求める因子を次のように整理できたという。

 それは、安全に関するもの(外部接続時の安全性、健康への配慮)、内容に関するもの(印刷教科書の担保、印刷教科書の拡張)、機能に関するもの(情報の活用、画面への直接入力、画面表示との連携)と3つのカテゴリと7つの因子だ。

 続いて清水氏は、教員と保護者のこだわりポイントの違いを、7つの因子のグラフと相関係数の表を使って説明した。たとえば、画面表示との連携機能は、保護者は全学年を通じ、一定の重要度とみているが、教員側は低学年ほど画面表示を重視しているという結果。また、印刷物教科書とデジタル教科書の整合性(内容の担保)についても同様な傾向の結果が出た。逆に情報の活用については、保護者は高学年になるほどその能力を重視しており、教員はむしろ逆の考え方を示していたという。

◆時代の変化に柔軟に対応

 清水氏は、親、子ども、教員の間でそれぞれの考え方やスタイル、あるいは世代の違いがあるため、情報教育についても時代の変化に柔軟に対応すべきということを強調する。文部科学省では、情報教育の目標として、(1)情報活用の実践力、(2)情報の科学的な理解、(3)情報社会に参画する態度、という3つを提唱しているが、これらの具体的な内容は世代に応じて変えていく必要があるとも述べた。

 変化に柔軟に対応した情報教育についての提言のひとつとして、清水氏は「学習・啓育・支援の抜本改革(FILES)」というコンセプトを紹介した。FILESでは、基盤力、人間力、解決力の3つを高めることを目指している。そして、グローバル化や学習スタイルの変化に対応する革新性や持続可能性を持った教育のため、土台になるのがネットワークや電子化といった技術的なインフラである。さらに、インフラの整備や子どもたちの支援は、企業、行政、家庭の役目だとするものだ。

 このような考えのもと、清水氏らは、官民で進める情報教育のモデル校による実証実験事業として「フューチャースクール推進事業」に取り組んでいる。これは、モデル校にネットワーク環境を整備したり、タブレットPCや電子黒板を導入したりして、先進的な授業のあり方を検証しようというものだ。フューチャースクールでは、実験に参加した教員や生徒から、学習効果が上がった、新しい気付きがあった、といった成果も報告されているという。

 フューチャースクールの取組みの詳細、技術的な資料、成果については、「教育分野におけるICT利活用推進のための情報通信技術面に関するガイドライン(手引書)2011」(PDF)として総務省が公表している。

◆社会や企業が求める人材の育成

 清水氏は講演のまとめとして、これからの情報教育を考えるならば、第1に子どもたちはテレビネイティブかつデジタルネイティブな世代であることを意識しなければならないと説く。第2に、教員・保護者の意見の集約に加えて、社会や企業が求める人材を育てるという視点も大事だとした。

 最後に清水氏は、フューチャースクールなどの実証実験事業の成果を生かし、これらの課題克服を目指す実践的なアクションプランを提言し、実行していきたいと決意を語り、講演を終えた。
《中尾真二》

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