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【EDIX】電子黒板による実践的英語授業…暁星小学校

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暁星小学校 英語科主任 岡澤永一氏
  • 暁星小学校 英語科主任 岡澤永一氏
  • 電子黒板のプロジェクタ部。投影面はタッチパネルになっている
  • 電子黒板を使った授業の実際。黒板に書いた文字を並べ替えて正しいスペルにしていく
  • pはひっくり返してdにして、Saturdayが完成
  • 書いた文字を動かしながら「ハングマン」ゲーム。ハングマンゲームは、英語圏の国では古典的な単語のスペル当てゲーム
  • プレゼンも電子黒板の機能を使って行う
  • 電子黒板は、「電子」がキーワードではなく「双方向性(Interactive)」が重要
  • りんごを隠してたボードをずらすアクション。デジタルネイティブにはこのようなアナログ、もしくはリアルな動作のほうが訴求力が高い
 第2回 教育ITソリューションEXPO(EDIX エディックス)の専門セミナーにおいて7月9日、電子黒板を使った英語学習の、授業手法や導入ポイントを解説する実践セミナーが開催された。講演したのは、日本で3校しかないという男子小学校である暁星小学校の英語科主任 岡澤永一氏だ。電子黒板の授業というと、インターネット、動画など最新機能を使ったものが注目されがちだが、岡澤氏の授業は、電子黒板ならではの機能を使いながらも、児童といかに向き合うかにポイントを絞っている。

 岡澤氏によれば、電子黒板は20年前にカナダで開発されたという。電子黒板は英語ではInteractive Whiteboard(IWB)とよばれ、電子やPCといった要素が重要なのではなく、Interactive、つまり双方向な対話が可能な黒板という意味だと説明する。しかも、その双方向というのは、電子黒板と児童が対話できるということではなく、児童と教師の対話が成立しなければ意味がないと言う。

 教科書だけの授業では、児童も教師も教科書を見ることに終始することがあるが、児童と対話するような電子黒板の使い方をすれば、児童の視線は正面の黒板や教師の方を向くことになる。これは、電子黒板によるひとつの教育的効果といえるそうだ。

 そして、何より大事なのは、画面の見せ方や使い方によって、児童の「心」が動くことだという。心が動くというのは、画面や教師の動き、問いかけによって「おっ?」と思う瞬間のことだそうだ。このタイミングで教師が後押ししてやれば、児童は自律的に考え、行動できるようになる。児童に「おっ?」と思わせるテクニックとして、児童の意識が途切れないようなメリハリのある動きが有効だそうだが、電子黒板だからといって、クリックやボタン操作による画面や絵の切り替えではなく、少しずつ絵が現れる、覆いをずらしながら背後を見せていくような、アナログな動きが効果的だと述べる。

 現在の子供はデジタルネイティブなどと呼ばれるように、PCの動作や画面には見慣れており、PCやスマートフォンのような画面の動きにはむしろ意識を集中することは少ないそうだ。少なくとも「おっ?」とは思ってくれない。むしろ、紙をめくる、隙間からのぞくといったアクションが有効なのだそうだ。

 以上のような説明の後、オリジナルの電子黒板教材を使った授業のデモが行われた。

 参加者を児童に見立て、小学生向けの英語の授業が進められた。まず最初は、電子黒板に「aauprsty」というアルファベットを書いてから、今日は何の日か尋ねた(セミナー当日は土曜日)。土曜日(Saturday)と答えが出ると、「saturday」の綴りを、先ほど書いたアルファベットからs、a、tと文字をひとつずつ動かしながら並べ替えていく。ここで「r」まできたところで、「d」がないことに気付く。

 すると、岡澤氏は「p」の文字をタップし、表示されたハンドルを動かして上下をさかさまにした。こうすることで「p」は「d」になる。最後に「s」を拡大して「大文字」にして完成となる。

 以上は、電子黒板ならではの機能を使った、黒板上での表現力を示したものだ。

 次のデモは、参加者に3から10までの好きな数字をあげてもらう。その数だけ横棒を引く。そして他の参加者に任意のアルファベットを1文字ずつあげてもらう。そのアルファベットを子音節で発音しながら、横棒の適当な位置に動かしながら移動させる。まず「a」があげられ、3文字目(3番目の横棒の上)に入る。次は「t」が選ばれ1文字目に確定された。

 このあたりでなんのゲームか気が付いた人もいた。有名な「ハングマン」という単語のスペル当てゲームだ。これを、電子黒板を使って行ったわけだ。文部科学省の小学生の指導要綱では、英語の文字を書かせてはいけないことになっているが、この程度のアルファベットの学習なら許されるだろうとした。

 ほかにも、児童と教師に分かれ、りんごをとっていくゲーム(最後のりんごをとったほうが負け)や、歴史上の偉人のイラストと名前を当てるゲーム、カレンダーをつくるデモなどが行われた。ほとんどが英語で進められたが、このような授業は、単語や会話を繰り返すような授業より効果が高いという。たとえば、りんごのゲームでは、「How many apples do you want to take?」という問いかけを何度も聞くことで、その使い方、意味を自然に覚え、実際の会話でも即座に反応ができるようになる。また、「I want to take ~.」という答えを聞いたりしゃべることで、どうしたいときに使うフレーズなのかも身に付く。与えられた例文で、行きたくもない所や、したくもないことをしゃべらされるから、英語が身につかないと岡澤氏は指摘する。

 電子黒板では音声データも活用できるので、英語に自信のない教師は、すべてを自分の英語に頼らずとも、事前に録音した教材を使うことで、その弱点を補強できるという。また、電子黒板は、カラーの拡大コピーなど大がかりな教材も簡単に作成できるなどの特長もあるとした。しかし同時に、これらは厳密には電子黒板でなければできないということでもない。岡澤氏は、これらをふまえて、電子黒板やICTの導入だけでは児童の意識が変わることはないし、効果も上がることはないと断言する。

 注意点としては、電子黒板に利用する教材の著作権があるという。授業目的ならば問題ないこともあるが、イラスト、音源、その他について、必要なら権利者に許諾を得なければならない。その点、文部科学省の「英語ノート」の素材はデータの形で利用できるので使いやすいという。

 では、ICTは授業でどのように活用すべきなのか。そのまとめとして、まず授業のねらいをはっきりさせること。そのうえで、それにふさわしい手段を考えるべきだとする。その手段が、電子黒板だったりカメラだったり従来の黒板だったりする。ポイントは、子供のためを考え、その「心」を動かす工夫だという。電子黒板は、面白い動きを追及するだけ、新しい機能を使うだけでは、活用したとはいえないとして、参加者に、ぜひ効果的な教材を作ってほしいと述べ、講演を終えた。
《中尾真二》

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