実験は大成功、小学生が仮想PHVに挑戦…夏休み自由研究(走行篇)

 小学校4年生から6年生の男子3名と女子2名が、未来のスーパーハイブリッドカー作りに挑戦。工作後に行われた走行会では、5名揃って大成功。研究イベント後には、親子でプリウスPHVの試乗も行われた。

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走行会
  • 走行会
  • レスポンス三浦編集長が講演
  • ゴムを巻きつける優さん(4年生)
  • 「走るかな?」虎汰郎くん(5年生)
  • 「走った!」
  • 宝くん(6年生)の弟さんも見学
  • 太陽光パネルを取り付ける遼くん(5年生)
  • 太陽光パネルを取り付けたあと、配線する和佳奈さん(5年生)
 子どもたちが複数のエネルギー源を持った模型の自動車「スーパーハイブリッドカー」を組み立て、実際に走らせる夏休み自由研究企f画「未来のスーパーハイブリッドカーを作ろう ~夏休み自由研究、君はPHVエンジニア~」が、レスポンス×リセマム共催で8月22日、東京・お台場のMEGA WEB(メガウェブ)にて開催された。実験・工作篇につづき、走行篇をお届けする。

◆走行実験でハイブリッドの概念を実感

 小学校4年生から6年生の男子3名と女子2名の参加者が組み立てた未来のスーパーハイブリッドカーは、輪ゴム、太陽光パネル、充電(手回し発電)という3つのクリーンなエネルギー源で走行する。製作過程では、(1)輪ゴムのみ、(2)日陰ではゴム、日なたでは太陽光パネル、そして(3)自動車とともに製作した充電ステーションにあたる模型用ガレージでの充電と、走行実験を行いながら作業を進めた。

 複数の輪ゴムのみで走行するクルマは実際のガソリン車をイメージ。輪ゴム&太陽光パネルの状態は動力が2つになるところからエンジンとモーターを動力システムとして採用するHVをイメージしている。スーパーハイブリッドカーは仮想PHV。最終的にはプラグイン機能を模型に搭載することになる。

 最初の走行実験はオーソドックスなゴム動力。輪ゴムを後輪のギアに引っ掛け、車輪を回してゴムを巻き付け、戻る力で走らせるというもの。タイヤが4つ付くとクルマらしくなり、ゴム動力で初めて勢い良く走り出すと、会場中から歓声が上がった。この時ばかりは子どもだけでなく、付き添いの大人たちのテンションも上がる。シャフトに食い込んでしまったり、ゴムの巻付けに苦労する子もいたが、お父さんのサポートもあり、5台とも無事走行に成功した。

 つづいて、太陽光パネルを装着してハイブリッド(HV)化した模型を走らせてみる。晴天のMEGA WEB試乗コースへ移り、走行実験もいよいよ本格的に。日陰から輪ゴムでスタート、停止する直前に日なたに出て太陽エネルギーに切り替えられればゴム&太陽光のHV走行実験は大成功といえる。

 ゴム動力で日陰を突破できなかったり、日なたに出て太陽光で勢い良く走りすぎ、コースを外れそうになったりとハプニングの連続にも笑いが起きる。「ゴムは身近なところで手に入れられるけど、長い距離を走れない/巻くのに時間がかかる」、「太陽光パネルは高いけど、太陽があれば走り続けられる」など、意見を交わした。ゴム&太陽光を採用したHV模型の作成により、各々のエネルギーや動力の長所を活かし、短所を補い合うハイブリットの概念やメリットを子どもたちは体感できたのではないだろうか。

 この実験は子どもにも大人にも刺激的だったようで、このあと10分の休憩を挟むことになるが、その間も多くの参加者が走行実験を続けていた。

◆「製作~体験」を知識へ整理

 プラグイン化の前に、レスポンス三浦編集長による、実際の自動車の動力を中心とする説明が行われ、子どもたちは「製作~体験」で感じたことを、知識へと整理した。

 三浦編集長の「なぜハイブリッド車のように複数の動力源を持つ自動車が必要ですか」との問いに、子どもたちからはすぐに「石油資源の枯渇」や「CO2削減」などの声があがる。「プラグイン化によって充電できる自動車が増えてくると石油以外で発電された電力を使うことができます」「みんなが免許をとったり、自動車を購入するようになる10年後、どんな発電方法があると思いますか」の質問には、「水」「風」のほか、大人たちが感嘆の声を上げる「燃える氷(メタンハイドレート)」や「バイオ燃料」といった専門的な回答や、「原子力はいやだ」の声も上がった。

 また、説明を聞いたあと、試乗用として用意した『プリウスPHV』がイベント会場の外に充電されつつ停められていることに気づいた子どもたちからは「あれに乗りたい!」と積極的なようすを見せた。

◆瞬時に充電!スーパーハイブリッドカー走行会

 説明のあとは、いよいよゴム&太陽光のハイブリッドに加えて外部からの充電機能を搭載して、プラグインハイブリッド(PHV)化の工作に移る。

 模型のクルマ側に必要となるのは電池にあたる小さいコンデンサ(2.5V 5F)と充電ソケット。ゴム&太陽光のHV状態にある模型車両の配線を再構築。外部からの電力を車載コンデンサに充電することが可能になった。

 EVやPHVに、充電ステーションは欠かせない。子どもたちのスーパーハイブリッドカーにとって充電ステーションとなる専用のガレージには蓄電可能なコンデンサを取り付け、手回し発電機で充電できるようにした。コンデンサに電気が満たされると、装飾のLED電球が明るく灯る。ケーブルを介して模型車両に搭載した充電ソケットに接続すると、電力はガレージから模型車両側に一気に充電された。

 いよいよこの研究のゴールとなる最終走行テスト&走行会だ。クルマとガレージを外に持ち出し、再び試乗コースへ。充電すれば日陰からでもいきなりモーターでスタートさせることができる。ゴムよりも長い距離を走れるので、日陰から遠くの日なたまで走行させることが可能となっていた。

 最後はこの日、初めて出会った5名それぞれが一生懸命作ったスーパーハイブリッドカーを手に仲良くスタートラインに並ぶ。合図に合わせ、多くのカメラが待ち構えるゴールへ向けて一斉にクルマを走らせる。クルマが勢いよく走り出すと、家族やスタッフからも大きな歓声が上がった。

◆プリウスPHVを家族で試乗、10年後のクルマを一足先に体感

 先の説明で子どもたちに対して三浦編集長は「ハイブリッドカーが初めて市販されたのはいまから約15年前。君たちが生まれる前です。その間にハイブリッドカーの販売は3割近くにも増えました。君たちが大人になる10年後には、電力のグリーン化が進み、ガソリン以外のエネルギーを使うことができるPHVが当たり前のように使われる時代が来ると思います」と語った。

 すかさず子どもに「10年も待ちきれないっ」と突っ込まれて一同が笑う場面があったが、最後にサプライズのお楽しみがあった。トヨタ自動車とMEGA WEBの協力により、スーパーハイブリッドカーをみごと製作した子どもたちに、プリウスPHVの親子試乗会のプレゼントがあったのだ。

 順番待ちなどで行われたプリウスPHVの説明では、実際に充電プラグを差し込んでみる子どもたち、EVモードとHVモードの切り替えなど、実際のクルマの仕組みを質問するお父さんもいた。いずれの家族もPHVへの乗車は初めてで、プラグイン機能がついたスーパーハイブリッドカーの模型を親子で製作した直後だけに、ドライブは夏休みの良い思い出となった。

 約10年後の未来のクルマはどのような姿になっていくのかを知り、考えてもらうことをメインテーマに企画した今回のイベントでは、10年後のクルマを想像すると同時に、子どもたちが大人になったときに対峙することになるであろうエネルギー問題を、家族で話題にしてみるきっかけになったのではないだろうか。
《中尾真二》

中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。エレクトロニクス、コンピュータの専門知識を活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアで取材・執筆活動を展開。ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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