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広尾学園にみるICT教育の真髄、デジタルネィテイブにふさわしい学習環境とは

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公開授業の様子、事前に与えられた課題をグループごとに発表
  • 公開授業の様子、事前に与えられた課題をグループごとに発表
  • 広尾学園の全景
  • 「広尾学園×iPad×ICT教育」第2回カンファレンス2013、関係者が270名詰め掛けた
  • インターナショナルクラス 中学1年生のIT授業
  • 帰国子女を主としたグループと、英語を初めて学ぶ生徒のグループ(SG)を混成しているところがポイントだろう
  • あらかじめ用意されたマイクロソフトのパワーポイントの資料を使用して、「分岐冒険」の物語を作成していく
  • AGの生徒のみで進められた中2サイエンスの授業
  • 教材として使われてフリーのインタラクティブ・シミュレーションソフト「PhET」、イオン化される様子をルーペツールで観察
 さらに応用課題として、生徒がオリジナルの階層的なプレゼンテーションを作成。短編小説、映画、コンピュータゲーム、アニメ、マンガ、ポップスターなど、興味のある分野をベースに分岐条件と物語をつくり、ほかの生徒に対してプレゼンテーションを行なった。また、プレゼンテーションを向上させるために、生徒同士で意見交換も行っていた。この学習はパワーポイントの基本やハイパーリンクのつくり方などを学べることはもちろんのこと、条件分岐したシチュエーション別の表現方法を階層的なプレゼンテーションによって学べるように工夫されていた点が大きなポイントだろう。

◆シミュレーションソフト「PhET」でイオン性化合物の観察と特性を学ぶ

 一方、中2サイエンスでは、英語が得意なAGの生徒のみで授業が進められ、専任教師のロブ・ブライト教諭が酸や塩基に関連する化学の授業を実施した。学習目標は「酸と塩基の違いを説明できるようになること」「溶液のpHレベルを予測できるようになること」の2つ。そのために教材として使われていたのが、フリーのインタラクティブ・シミュレーションソフト「PhET」だ。これは、物理教育研究用に開発されたソフトで、JavaとFlashで作成されており、標準のWebブラウザーで誰でも実行が可能だという。

 PhETは、視覚的に概念を理解できるように工夫されている点が大きな特徴。たとえばクリックやドラッグ操作、スライダー、ラジオボタンなどのコントロール機能を採用し、さまざまな現象をグラフィックで直感的に表現できる。また定量的な判断が行なえるよう定規、ストップウォッチ、電圧計、温度計などのインタラクティブツールも用意されている。これらを使うことで、シミュレーション結果との因果関係を分かりやすく図解。さらにグラフを関連付けて表現することも可能だ。

 生徒たちは、このPhETを用いてイオン性化合物の様子を観察した。MacBook上からPhETを起動し、電子の移動によってイオン化される様子をルーペツールで観察したり、リトマス試験紙ツールで酸と塩基を判別したり、pHメータツールでイオン濃度の計測したりした。中学2年の内容としては少し高度な印象を受けたが、パソコンによって直感的かつリアルタイムに結果が出るため、授業は大変面白く、飽きもこないようだった。実際に生徒たちは積極的に自ら学習を進めていた。

◆問題解決能力をつける「調べ学習」と「プレゼン技法」を身に着ける

 中学2年生本科の理科の授業でも生徒がiPadを利用して、さまざまな学習を行なっていた。授業のタイトルは「調べ学習発表と学術論文検索方法の紹介」というもの。生徒には「科学に関するテーマで、できるだけ信頼性の高い最先端の情報を調べ、発表する」という課題が事前に与えられていた。それを調べて班ごとにグループとなって発表。さらに3人の生徒が代表して、クラス全体でもプレゼンテーションが行なわれた。3人の生徒のテーマは、それぞれ「プロジェクション・マッピング」「最新技術を使用した農法(植物工場)」「蜘蛛の糸」というもの。

 プロジェクションマッピングは、プロジェクターなどの映写機器を用いて、建物や物体、空間などに映像を映し出す技法だ。単純な映写ではなく、投影対象に映像を張り合わせるマッピング技術も含まれており、立体的な3D映像が得られる。この発表では、プロジェクションマッピングに興味を持った経緯、原理、具体例などが紹介された。

 植物工場の発表では、土を使わない水耕栽培だけでなく、赤色・青色LEDを利用した最先端の植物工場や、植物育成に望ましい光(赤・青)の配分までを詳しく解説していた。一方、蜘蛛の糸の発表では、強度に優れたクモ糸の活用について触れていた。あるベンチャーが開発した人工合成のクモ糸繊維の量産技術によって新たな産業化が可能になるとのこと。これも先ごろ発表された最先端技術だ。

 担当教員の小島雄紀教諭は「本当の研究とは、まだ誰も知らないことを発見すること。そのためには、信頼性が高くて、最先端の情報に接することが重要。また、英語の文献を読み説き、発表できる語学力も必要だ」と説く。そこで学術出版社、専門学会、大学、そのほかの学術団体の専門誌や論文、書籍、サマリー、記事などを検索する手法として「Google scholar」による検索方法を紹介した。この調べ学習発表と学術論文検索方法は、高校になってからのステップで大いに役立つものだろう。

 実際に医進・サイエンスコースの高校の公開授業では、さらに高度な内容を学んでおり、教育関係の見学者も驚いていたようだった。もちろん本コースでも、生徒が1台ずつ専用iPadを活用。グループ研究の情報共有や課題提出、スケジュール管理、リサーチなどで日常的に利用しているそうだ。当日は、これまで生徒たちが進めてきた研究成果の進捗報告会を開催していた。未知の問題へアプローチする手法を学ぶために、先端の論文を読み解いて学習を進めているそうだ。1人10分間のプレゼンテーションを行なっていたが、そのレベルは高校生と思えないほど高く、大学のゼミと同じぐらいの内容。代数学や微分方程式などを駆使しながら発表を行なっていた。

 医進・サイエンスコースだけあって、内容的には「iPS」といった先端の生命科学分野などが多かった。たとえば、ある生徒が参照した論文タイトルの一例を挙げてみると「High-resolution analysis with novel cell-surface markers identifies routes to iPS cells.」(O'Malley J, Skylaki S, Iwabuchi KA, et al. Nature. 2013)というもの。 これだけ見ても、その高度な内容がうかがい知れるだろう。プレゼンテーションも単に発表するだけでなく、いかに相手に分かりやすく伝えられるかという点も問われた。発表の途中で専任教師が突っ込んだ質問をして、生徒も大いに鍛えられていたようだった。

 広尾学園のICT教育を垣間見て強く感じたことは、やはりデジタル機器はあくまでツールでしかないということ。冒頭で述べたように「どうやって活用するか」、そちらのほうが遥かに重要という印象を受けた。それは同校の金子暁教諭(ICT教育責任者)による言葉に表れている。「ICT教育を進めれば進めるほど別のものが見えてきた。それはアナログ的なものの大切さ。行き着く先は「感性」の世界。生徒が自分自身の「感じる力」を第一に信じることができるような教育が必要だ」。まさに、これが今後のICT教育に欠かせぬ根源的な要素の1つになるのではないだろうか。
《井上猛雄》

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