リビングの不快なニオイが学習に影響、正答率を低下させるニオイと対処法

 プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G Japan)と杏林大学名誉教授の古賀良彦先生は12月13日、家庭のニオイが子どもの集中力に与える影響について検証した実験結果を発表した。

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杏林大学名誉教授の古賀良彦先生
  • 杏林大学名誉教授の古賀良彦先生
  • 臭気判定士の冨樫真生氏
  • 新ファブリーズが誕生
  • いまやリビングで勉強は常識だが、ニオイに気を使ったことはあるか
  • 3大不快ニオイを調査
  • 集中力アンケート/テスト
  • VASアンケートの概要
  • 集中力アンケート結果
 プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G Japan)と杏林大学名誉教授の古賀良彦先生は12月13日、家庭の不快なニオイが子どもの集中力に与える影響について検証した実験結果を発表した。

◆人気のリビング学習、家庭のニオイの影響は?

 自宅やリビングのニオイというのは、住んでいる人にはわからない。嗅覚はそもそも危険を瞬時に判断するための感覚で、リビングのような安心できる環境、普段生活している環境のニオイはニオイとして脳が認知しないからだ。しかし、ニオイ物質は存在し、嗅覚細胞が反応していれば脳には信号を送っているはずである。認識しないニオイでも、脳の活動に影響を与えている可能性はあるのではないか。

 両親の目の届く環境で学習することが学力アップにつながるとされ、進学塾などでも推奨されているリビング学習。現在は、およそ半数の家庭で、子どもはいつもリビングで勉強をしており、リビングですることが多い家庭を含めると75%以上、時々リビングという家庭を含めると実に99%の家庭で、リビングが子どもの勉強場所として使われている。

◆すべての家庭にあるニオイ

 そしてリビングには住んでいる人のニオイや食べ物、ペットなどさまざまなニオイが存在している。これらが気にならないからといって、本当に影響はないのか。古賀先生は、この点を脳科学的および心理学的に検証する実験を行った。

 実験方法は、次のように行われた。まず、臭気判定士が家庭の不快なニオイを収集・分析し代表的なニオイを選別する。そのニオイがある部屋と無臭の部屋を用意し、被験者(小学4年生から6年生までの児童96人)に集中力や気持ちに関するアンケート調査、簡単な計算問題による集中力テスト、そして脳波測定(被験者は6名)を実施する。ニオイありの部屋とニオイなしの部屋での結果を比較することで、ニオイの影響を調べる。

 不快なニオイは、臭気判定士、冨樫真生氏らが22世帯(都内築5年以上の一般家庭)について調査し、知覚されたニオイの強度によってポイントづけしたものから上位3つ、食べ物が酸化した油臭、汗・体臭、カビ臭を家庭の3大不快臭とした。ちなみに調査した家でニオイ強度2(なんのニオイかわかるレベル)の家庭は82%、強度1(ニオイがするレベル)の家庭は18%で、ニオイのしない家は存在しなかったという。

 ニオイの発生源は、ゴミ箱など1次的な発生源より、カーテン、カーペット、壁面といった布製品や壁紙のような2次的な発生源のほうが多く、その占める割合が89%とほぼ9割だった。

◆ニオイが低下させる「やる気」「集中力」

 アンケートは「気分」「やる気」「疲れ」など11項目について、VAS(Visual Analog Scale:視覚的評価スケール)という直線の任意の位置に今の気持ちをポイントしてもらう方式で行った。VASは5段階、7段階評価とは異なり、左端から印までの長さを測定して評価する、誤差が出にくく、バイアスがかかりにくいとされる調査方法だ。評価には「気持ちのおだやかさ」「やる気」「集中力」の回答を利用した。

 アンケートの結果は、多くの項目でニオイのある部屋のほうが数値の低下が見られたという。たとえば「やる気」の質問では、無臭の部屋での平均回答は60.1ミリ(100ミリの直線上のポイントされた位置)。ニオイのある部屋では51.1ミリだった。ニオイ別の集計では油臭で「やる気」「集中力」の10ミリ以上の低下が見られた。

 集中力テストは「内田クレペリン検査」をベースに集中力を測れるように計算時間などを調整したテストで、全体の平均正答数をニオイの有無で比較した。

 集中力テストは1分間の正答数で評価したが、カビ臭ではニオイの有無で正答数の顕著な差はなかったが、油臭、汗・体臭のニオイがある場合の正答数が下がっていた。特に汗・体臭の部屋では正答数平均が37点から34.6点まで下がった。学年別で見ると6年生への影響が大きかった。

◆ニオイが脳の認知活動にも影響

 脳波による影響測定では、集中力の指標となる脳波「P300」を測定。画面に表示される図形に指定の図形が現れたらボタンを押すという簡単な認知テストを行い、指定された図形が現れたときの、脳波パターンの振幅のピーク(平均)で、ニオイの影響を比較する。

 結果は、ニオイのある部屋(ニオイは集中力テストで大きな差が確認できた汗・体臭を利用)でのP300の脳波パターンのピークが3マイクロボルトほど(10%程度)減少した。ニオイが脳の認知活動にも影響を与えていることが確認された。

 実験に参加した子どもは「部屋に入るとすぐに変なニオイを感じたけど、すぐに気にならなくなった。なので、計算結果に差が出たことに驚いた」、その母親も「これからはもっとリビングのニオイに気をつけたいと思う」と語った。

◆ニオイケアで受験生を応援

 アンケートや脳波測定が示すように、本人が気にしていなくてもニオイの影響はあるということだろう。P&Gでは、これから迎える受験シーズンに、受験生のいる家庭では、リビングの不快なニオイの主な発生源である洗いにくいカーペット、カーテン、ソファなどの布製品にファブリーズのような消臭・除菌スプレーを使い、ニオイケアを行ってほしいとアドバイスする。そうした家族の応援も、受験生には大きなチカラになりそうだ。


《中尾真二》

中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。エレクトロニクス、コンピュータの専門知識を活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアで取材・執筆活動を展開。ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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